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∥四百四病の事典∥


オウム病(クラミジア肺炎)


■微生物のクラミジアを吸入して、肺に起こる感染症

 オウム病とは、ウイルスに近いクラミジア・シッタシという微生物が原因となって生じる肺炎。クラミジア肺炎とも呼ばれます。

 オウム病は本来、動物の疾患であり、人はクラミジア・シッタシに感染したオウムやインコなどの鳥類から感染する人畜共通の感染症の一つです。病原体がオウムから初めて分離されたことからオウム病と名付けられましたが、インコ、ハト、ニワトリ、ガチョウ、シチメンチョウ、アヒルなどオウム以外のペット鳥、家禽(かきん)類、野鳥でもクラミジアに感染した鳥が確認されています。

 クラミジアに感染している鳥は、糞便(ふんべん)中にクラミジアを排出します。乾燥した糞便が、ほこりや羽毛などとともに舞い上がり、人はそれを吸入することで感染します。感染している鳥に口移しで餌(えさ)を与えたり、鳥の羽根や排出物や鼻汁に直接触れたりなど、鳥との濃厚な接触で感染することもあります。

 オウム病は小児よりは成人に、男性よりは女性に多くみられ、発症は5〜6月に多い傾向がみられます。地域的に流行することもあれば、散発的に発生することもあります。肺炎に占めるオウム病の頻度は、1〜2パーセント程度。

 症状は軽度のインフルエンザ様から、多臓器障害を伴う劇症型まで極めて多彩です。 一般的には、感染後1〜2週間の潜伏期間を経て急激に発症します。頭痛や筋肉痛、関節痛を伴って、発熱、せき、胸痛、全身倦怠(けんたい)感、食欲不振、血たんなどの症状が現れます。重症になると、肺臓を主体に、全身の臓器に病変が認められるようになります。特に、肝臓、脾臓(ひぞう)、心臓が炎症を起こし、さらに、脳神経に異常を来して意識障害が現れ、死亡するケースもあります。

■オウム病の検査と診断と治療

 鳥との接触歴があったり、鳥の飼育をしている人に発熱、せきが現れた場合はオウム病が疑われるので、内科、呼吸器内科、呼吸器科の専門医を受診します。ペット鳥、家禽類が死んでいる場合は、特に疑いが濃くなるので、そのことを受診先の医師に伝えます。

 医師による診断では、原因菌に対する抗体の検出のほか、原因菌の分離、原因菌の遺伝子の検出が行われることもあります。

 治療には、テトラサイクリン系の抗生物質、またはマクロライド系の抗生物質が用いられます。ニューキノロン系の抗生物質も有効ですが、セファム系の抗生物質は無効です。早期診断と早期治療で完治できます。

 オウム病予防のためのワクチンは、開発されていないので、感染している鳥への接触には注意が必要です。鳥ではクラミジア菌を保有していても、外見上ほとんど健常にみえます。弱った時や、ヒナを育てる時期などでストレスが加わった時、他の感染症を合併した時などに、糞便中に菌を排出し、人への感染源になります。

 鳥への過度の接触を避けること、鳥にストレスを与えないように飼育すること、鳥に触れたらよく手を洗うこと、かごや飼育舎の掃除をこまめに行うこと、素手で糞便に触れないことなどが、予防のために大切となります。

 

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