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すべての人間の相貌が繊妍窈窕(せんけんようちょう)たる美人とか、たくましい男性美などという、最高の美を持っているわけではないというのは、どういうわけであろうか。
人間誰もが、生まれたばかりの赤ん坊の時はみなかわいい。この禅宗でいう「本来清明」なる生命の本質そのものを一生涯持ち続けていけば、植物が苗木の成長も愛らしく、開花も美しく、素晴らしい結実によって利益を上げ、枯れるまでその価値をたたえ続けるのと同じように、人間も死ぬまで美しく、健康で、幸福であり得る。
ところが、俗に「鬼も十八」というように、十七、八の年頃は器量にかかわりなく誰でも、その人なりに美しく見えるというのに、なぜ娘盛りが鬼婆(おにばば)になるかというところに、逆の不思議がある。
鬼とか、魔物とか、亡霊とかいうものは、人間世界にだけあって、大自然世界にはないものである。偽りも、悪も、醜も、苦も、憎しみも自然界にはない。人間のみにある。
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