自らの体と心と病を知り/自らの健康を創る/健康創造塾//人体 人体 人体 人体 人体
∥全身の出物が発する健康情報(2)∥
∥皮膚の垢をチェックする(1)∥
●皮膚の垢は角質化した細胞のカス
汗とともに、人間の全身の皮膚から出るものに、垢という出物がある。皮膚から垢が出る仕組みから説明していこう。
まず、人間の体の表面をおおう厚さ約二ミリの皮膚は、表皮と真皮の二つの層に分かれている。二層中の内層の真皮は、弾性繊維に富む結合組織からなる。表皮のほうは、外層にある厚さ〇・二ミリくらいの薄い膜で、この表皮はさらに四つの層に分けられる。
その一番底、基底層では、新しい細胞が絶えず作られている。この細胞は次々と上の層に向かって押し出される。その過程で、細胞は次第に角質化しながら圧縮され、平たくなっていく。そして、完全に角質化するとともに、細胞核を失って死ぬ。表面の角質層は、角質化した細胞が約十四層積み重なってできたもので、厚さ〇・〇二ミリくらいだ。
この角質層の最も大きな役割は、体内の水分の蒸発を防ぎ、その量を一定に保つということ。体内の組織には、七十パーセントの水分が含まれているのに対し、角質層には二十パーセントしか含まれていない。乾いた皮膚の表面を持つことで、水分の蒸散や浸入に対する防御としているのである。
一方、表皮の基底細胞は、休みなく細胞を分裂させて、新しく角質化した細胞をどんどん送り込む。下から押されて、古い角質は体表に近い部分からどんどんはがれていく。
最も古い角質のカスが、体の皮膚の垢というわけなのである。この人間の皮膚というものは、呼吸運動を行って体温も調節している。
だから、人間は脳で温度を感ずるだけではなく、体の表面にも温度を感ずるところがあるのだ。暖かさを感ずる点を温点、冷たさを感ずる点を冷点といい、それぞれの点に温度を感ずる細胞があるのである。
この温点の細胞たる温細胞は、摂氏四十度くらいの温度で最もよく興奮して、暑さを脳に伝達する。これより低い温度では反応が弱くなり、二十五度くらいでは全く反応しなくなる。反対に、温度をもっと上げてゆくと、今度は細胞が傷害されてしまい、この反応が現れない。
これに対し、冷点の細胞たる冷細胞のほうは、二十度くらいで一番興奮するが、これ以上温度を高くすると興奮が弱くなり、三十五度くらいでは全く反応しなくなる。ところが、四十五度以上になると冷細胞が突然興奮する。つまり、私たちは熱いものに触れると一瞬、熱いのか冷たいのかわからないということがよくあるが、これは冷細胞も興奮するからである。
こうしたシステムによる体温調節ばかりではなく、皮膚は水分を始めとして熱、ごみ、病原菌、乾燥、紫外線など有害なものを遮断する最前線の防衛網でもあるし、さらに大気中から酸素や窒素も吸収している。
皮膚から大自然の「気」を吸収したりして、栄養を蓄えることもできる。栄養というよりも、空気の中にあるものを蓄えておくことはできるわけである。
こうして、人間は細胞組織の中に蓄えをしておけば、食べる物が少なくても結構丈夫に、元気よく生きることができる。
食べ物のみが栄養、あるいはエネルギーの元ではない。この大自然の中から、空気の中から、細胞が吸収するような力を作ればいいのである。
●皮膚感覚が有するさまざまな能力
細胞が吸収して皮膚から発散する「気」は、体温の調整をするとともに、感覚の元になる。心以上のもの、意識以上の感覚がこれである。肉体の内部だけが働きをなしているのではなく、皮膚は皮膚なりに、直接、感覚を感ずる資格を与えられている。
皮膚の感覚は、どういうことにいい影響をおよぼすかというと、まず、血液の循環が挙げられる。また、先に述べたように、皮膚の表面から直接、空気の中にあるものの栄養を吸収しているわけである。
皮膚の下には、目に見えない神経というものが充満し、漂っている。これは一つの薄い層となって、体全体のありとあらゆるところに存在しているのである。人間の皮膚の下には、そうした「気」神経という、目に見えない層があるのだ。
そこで、皮膚が傷を受けたりしても、すぐにその「気」が働いて、回復、再生してくれる。だから、ほうっておきさえすれば、すぐに元通りになる動きが始まる。動きが始まって働きになって、だいたい痛さ、つらさをなくする働きを作る。
こうした感覚を持つ皮膚の大きな役割は、肉体的生命を内と外に隔離すると同時に、内と外を交流させることにある。つまり、皮膚は自己と非自己を分けて、排除したり、受け入れたりする器官なのである。
皮膚には、頭部に七つ、下半身に二つないし三つの穴がある。この穴も皮膚の一部として、外界との交流を行う大切な役割を果たしている。一般に五感といわれる皮膚感覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚は、皮膚が有する特殊な能力である。私は、この五感を外部の感覚を感じる器官という意味で、五官と表現することにしている。
皮膚はもともと、脳と同じ外胚葉と呼ばれる部分から分化したもので、さまざまな能力を持ち合わせている。特に皮膚表面に開かれた穴の周辺は、外部と内部との交流をつかさどる感覚受容器官がびっしり集まっている。人間が感じることのできる外部からのすべての刺激は、この五官を通じて伝わるのである。
私たちは、感覚というものは自己の内部から発生するものだ、と考えがちである。だが、感覚というのは、皮膚を越え、伝わってくる外部からの刺激であり、皮膚を通して感じる外の世界なのである。外界とは自己を映す鏡であり、言い換えれば自分自身ということになる。人間は内と外をつなぐ感覚器官によって、自己を認識するのである。
人間の感覚は磨けば磨くほど光るものである。それは、自分を鍛え、知ることにもつながる。現代に生きる人は、もっと感覚を重視しなければならない。
ちなみに、皮膚が外界との交流を行う大切な役割を果たしていることは、体に触れられないで育った子供が情緒障害になることでもわかる。
触覚に関する実験で、赤ちゃんの猿に決して他の猿が触れないようにすると、赤ちゃん猿は感情的にも、行動的にも異常になる。成長しても、自閉症のように他の猿と付き合うことを好まず、一匹でじっとしているようになる。
人間の場合も、母親や他の人が抱いたり、触ったりのスキンシップをしないで育てた子は、情緒障害を起こすといわれているのである。
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