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∥全身の出物が発する健康情報(5)∥

∥唾液の分泌をチェックする∥

 

●全身を養う唾液は万能ホルモンである

 人間の口から分泌される出物の一種に、唾液(だえき)というものがある。この唾液は、肉体全身を養うためにきわめて重要な役割を持っている。効用を挙げれば、その多彩さ、万能さに驚く人も多いだろう。

 唾液について本当に知る人は少ないが、これが実は生命の源泉である。肉体の第一関門に存在して、万能力を発揮している。その働きによって、健康が保障され、老化も防げる。唾液こそは、すべてに作用する万能ホルモンなのである。

 気化も、消化も、殺菌もすべて行う。味も、においも何もかも取捨選択する。犬の嗅覚の鋭さも、牛が粗食しながら、あれほど大量の乳を出すのも、みな唾液の効である。

 消化作用というものも、胃や腸だけで行われるものではない。口の中でよく噛んで食べ、固形物を液化すれば、その大半は霊妙な唾液の働きで気化され、気化熱というエネルギーになり、体の細胞が直接に栄養を吸収してしまうものである。

 胃腸で消化された後のカスは宿便となって体内に残るが、気化されてしまうとわずかなガスが残るだけだし、そのガスも朝の目覚めの放屁一発で消え去り、肉体はいつでもすがすがしく新陳代謝されている。

 だから、よく噛むことは、それだけ唾液が豊富に分泌され、神秘的な効用を引き出すということで、それは消化を助けるばかりでなく、唾液中に含まれるさまざまなホルモンが全身の健康維持に大いに役立つ。

 その上、よく噛んで食べれば、唾液の作用で物の本当の味わいがわかるものである。

 味覚を起こす物質は水に溶けて、はじめて舌にある味細胞を刺激するものであり、唾液が重要な役割を果たしているわけだ。緊張したり、不愉快なことがあって唾液が出ない時は、「砂を噛むような」と形容される通り、食べた物に味が感じられない。

 また、唾液には食物を消化、気化するための酵素のほかに、パロチンというホルモンが含まれている。唾液腺ホルモンが耳下腺から唾液とともに導管内に分泌され、再び導管中から吸収されて自由に移行することが発見され、後にその有効成分がパロチンと命名されたのである。

 このパロチンは、骨や歯の石灰化を促進させ、血中カルシウム量を低下させるなどの作用で知られている。これが欠乏すると、変形性関節症などをうながすことにもなるのである。加えて、パロチンには老化を防ぐだけでなく、若返りにも大きな効果があることが、カルシウム代謝による実験データからも証明されている。

 次に、おなじみのウナギを始め、強精食品には特有のネバネバがあるが、そのムチンという蛋白質は、唾液にも含まれている。

 驚くのは、口の中に入ってくる物の種類に応じて、唾液はたちどころに、その有機成分の組成が変わってしまうということ。例えば、酸性食品の場合、唾液の分泌量は四倍になり、アルカリ性の有機成分がうんと増えて、うまく中和作用が働くといった具合である。

 腹を立てると胃に悪いといわれるのも、唾液の有機成分がアチドージスに傾き、食べ物の消化が悪くなるからである。自己意識や心の状態によって唾液を変化させることは、好ましくない。五官の自然作用によって、自然のうちに変化に対応させれば、その機能を十分に生かすことができる。

 そして、日本人の成人は牛乳不耐症、乳糖不耐症といって、ヨーロッパ人などに比べると、腸内の乳糖を分解するラクターゼという酵素が非常に少ないといわれるが、牛乳を飲む時には、あわてて飲み込んだりせず、じっくり噛むようなつもりで唾液の分泌をうながせば、下痢をしないですむものである。でんぷん質を消化するのも、唾液の働きなのだ。

 夜の眠りの中では、口の中の唾液も乾きがちのものだが、それは分泌作用を止めているからではなく、内分泌腺ホルモンとして肉体組織に働きかけているからである。

●唾液の分泌が減った時は生命の危機

 ここで忘れてならぬのは、虫歯を防ぐ唾液の効果である。砂糖の取りすぎなどから、小学校の低学年で虫歯罹患(りかん)率が九十とも九十五パーセントともいわれる通りで、現代人は不幸なことに、肉体の門戸で行われる歯と唾液との絶妙な交響楽が耳に入らない。それをすっかり忘れてしまっている。

 虫歯の原因となる砂糖は甘くても酸性食品であるから、体液を酸性にするといわれているが、もう一つ、大切な唾液の根を枯らしてしまうことに、気づいている人は少ない。

 砂糖を取りすぎると、早く老化してしまうのも、そのためである。扁桃腺が乾くと唾液の分泌が鈍るし、砂糖の摂取量に比例して、唾液の量は低下するのだ。

 食べ物をよく噛むということは、唾液の効果で虫歯を防ぐばかりか、肉体の五官作用を盛んにし、生理のみならず、精神衛生に資するところきわめて大である。

 ところで、食物を味わうために、唾液が重要であることは誰もが知っているだろうが、この唾液は食べ物を味わう時ばかりに出るものではない。

 においを嗅ぐ時も、唾液の作用によって、においの味を味わうことができる。犬や牛を見ても、唾液は消化作用として機能しているばかりでなく、においを嗅ぐ、何かを探す、ということにも役立っていることがわかる。

 つまり、唾液は生命をよりよく維持していくためにも、重大な役割を果たしているわけだ。人間も唾液が出なくなったり、少なくなったりした場合は、「生命力が乏しくなった、注意せよ」、と危険信号が出されている時なのだ。口中に随時分泌されている適量の唾液に負うところは、実に大きいのである

 逆上る平成二年には、農水省の食品総合研究所が、人間の唾液に、動脈硬化や老人性痴ほう症の原因物質として注目されている過酸化脂質や、細胞や遺伝子を傷つける活性酸素の発生を防ぐ効果があることを突き止めた。

 唾液は、消化や殺菌の働きのほかに、生命保存の著しい効果を持っていることが、生理学的にも証明されたわけである。

 ネズミの唾液には、酸化を防ぐ主役の尿酸がない。ネズミが二~三年、人間が八十年という寿命の差には、唾液の成分が関係しているかもしれないという。

 人間の場合も、唾液の分泌量は老人になると低下する。だから、老化防止には過食を避け、よく噛んで唾液を多く出し、唾液ホルモンという若返りの妙薬を活用すべきなのである。唾液の中にも、長命の秘密が潜んでいるからこそ、よく噛むことを勧めるのである。

 その他、唾液の成分として、各種のビタミンや制ガン作用のあるペルオキシダーゼもかなり含まれているから、よく噛むことにより、ガンの予防にもなる。

 加えて、年を取るに従い血圧が高くなりがちなものだが、唾液の中には血圧を下げる物質が、自然に増えてくるようになる。無論、低血圧の場合には、その逆の作用が働く。

 このように、神秘的な働きを持つ唾液には、一般に考えられている以外に、多くの効用が明らかになっている。これも自然の巧妙な摂理といえよう。

 肉体のホルモンの中で、唾液ほど重要なものはない。実際に、唾液は万病薬、老衰の予防薬なのである。

 食事の時に百回ずつ噛んで食べたら、神経痛やリウマチまで治ってしまったという、アメリカの臨床例もある。これなども、唾液の働きが単なる消化作用だけにとどまらぬことを、生化学的に証明している話であるといえよう。

 次に、「寝る子は育つ」といわれるように、眠っている間は唾液が成長ホルモンとして働くことも、生化学的に証明されている。

 新生児というものは、唾液がありあまっているから、ヨダレを流している。生命力にあふれる幼児の時代も、唾液の分泌は盛んである。生命の核ともいうべき細胞を、日々新たに製造しなければならない時期には、唾液はおのずから濃厚に、豊富になってくるのである。これも、肉体自然の摂理なのである。

 成人するにつれて、次第に唾液の出方が少なくなるのは、肉体的な成長が止まったためというよりも、むしろ、自然作用の発生を自己意識が邪魔をして、唾液腺を枯らすなどしている場合が多いものである。

 

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