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∥ボケの様々な症状∥

 

◆◆正常な人とボケた人の違いは、前者は経験した事柄を断片的に忘れることがあるだけなのに対して、後者は病状の進行につれて、経験したことのすべてを忘れてしまうのである。◆◆

 ボケの症状は、実にさまざま。医学者によれば、普通は、中核となっている症状と、その周辺の症状との二つに分けられるという。

 要約して説明すると、中核となっている症状とは、すべてのボケに共通に見られるもので、その症状があるとボケと見なされる。

 ボケの中核症状は、狭い意味の知的機能障害であり、記銘力・記憶力障害、見当識(けんとうしき)障害、計算力の障害という三つの障害がない場合は、ボケとは診断されない。

 一、記銘力・記憶力障害

 記銘力とは物を覚える能力のこと、記憶力とは覚えた物をずっと保持しておく能力のことを意味している。

 痴呆例では、この双方が著しく障害される。ボケの初期の症状として共通なものであり、家族や周囲の人が最初に気付く症状でもある。電灯のつけっ放し、ガス栓の閉め忘れなどに始まり、進んでくると、食事を終えた直後に食事をしたことを忘れてしまって、再び要求したりするようになる。また、今話したことをすぐ忘れてしまうなど、日常生活や社会生活に重大な影響を与えることになる。

 これらの状態は注意力散漫、自発性低下などによって、さらに増強される。

 ボケで特徴的なのは、最近の事柄に対する記憶の障害が顕著なことである。反対に、比較的昔の事柄、つまり遠い昔に記憶したことは覚えており、対照的である。

 言葉も忘れるが、固有名詞、抽象名詞が特に忘れやすい。これは生理的な老化でも普通にみられるもので、健常人でも加齢とともに記銘力、記憶力は低下し、人の名前などの固有名詞が最初に忘れやすくなる。

 ボケの人の場合は、症状の進行とともに、自分の名前、年齢さえも忘れてしまう。とりわけ、年齢のほうは忘れやすい。

 意外によく覚えているのは、彼や彼女が生まれた場所である。年齢のように毎年変わるものではなく、幼児から頭にたたき込まれており、先の遠い昔の記憶に相当するためと考えられる。

 結局、正常な人とボケた人の違いは、前者は経験した事柄を断片的に忘れることがあるだけなのに対して、後者は病状の進行につれて、経験したことのすべてを忘れてしまうのである。

◆◆家族、あるいは同居している人を認識できなくなると、高度のボケとしてよい。◆◆

 二、見当識障害

 見当識とは、時、所、人などについて見当がついていることを意味する。だから、見当識障害は、今日は何日で、今どこにいる、目の前の相手は誰か、などがわからなくなるものである。

 この障害は、ボケの初期の診断において、最も重要なチェックポイントとなっている。ボケのごく初期においては、記銘力、記憶力の軽度の低下を生理的、病的と明確に区別することはむずかしいが、生理的な老化の範囲では見当識障害はない。つまり、見当識障害の有無が、生理的な脳の老化と、病的なボケを区別する、信頼できる症状なのである。

 また、入院や寝たきり状態の場合はともかくとして、その他の場合、日時を知らないこと、自分のいる場所を知らないことは、社会生活に重大な支障をきたすことからも、痴呆の症状として特に重要視される。

 見当識障害が高度になれば、朝夕昼夜の区別もわからなくなる。場所についての見当識が障害されるために、入院患者では自分の部屋を忘れることがしばしばである。

 徘徊(はいかい)癖のある例では、想像もできないほど遠方に出掛けて、帰ることができなくなり、交番などから問い合わせのある場合が多い。

 人に対する見当識障害も、はっきりしてくる。家族、あるいは同居している人を認識できなくなると、高度のボケとしてよい。

◆◆ボケでは、いろいろな面が鈍感と考えがちだが、神経質、敏感なところもある。◆◆

 三、計算力障害

 ボケの症状として、簡単な計算ができなくなるが、足し算より引き算のほうが障害されやすい。計算力障害が高度になると、1+1もわからなくなる。

 ボケの中核となっているもので、ボケの人すべてに共通に見られる症状に続いては、その周辺の症状について要約して説明する。

 一、感情障害

 ボケの初期では、感情が不安定になり、容易に興奮しやすい。うつ的になり、発語がなく、すべてに懐疑的なこともある。天気がよいのに雨戸を閉めて日中寝たり、外出を極度に嫌ったり、風呂(ふろ)に入りたがらないなど、症状はさまざまである。

 懐疑的なことから、被害妄想や嫉妬(しっと)妄想などが出現することがあり、特に「他人が悪口をいっている」、「財布をなくした」、「貯金通帳を盗まれた」などと訴える被害妄想が少なからずある。

 性格にも変化が現れ、発病前の性格がとりわけ明らかとなりやすい。一般に、自己中心的で、頑固で、我がままであり、行動その他がズボラ。

 反面では、気が小さく、きちょうめんなところもあり、受診などの前日はよく眠れなかったり、朝早くからソワソワしたりするなどのように、態度、行動に平常と反対の面も認められる。

 ボケでは、いろいろな面が鈍感と考えられがちだが、神経質、敏感なところもあるわけだ。

 細やかな感情が鈍くなっているにもかかわらず、一面では人をよく見ており、周りの見下げるような態度、ばかにした態度、冷たい対応、心ない発言などには極めて敏感である。例えば、家族がちょっと冷たい態度をとっただけで、すぐ興奮したり、怒ることもしばしばある。

 道徳的な面の感情障害も、病状の進むにつれて出現し、反社会的行動や、羞恥心(しゅうちしん)が薄れて性的な異常行動を示すことがある。

◆◆ボケ老人には、中核となる知的機能の際立った低下のほかに、いろいろな精神症状も出現する。◆◆

 二、思考力障害

 中核症状の記憶力障害に加えて、系統的に物を考えることができなくなる。判断力も低下する。連想も不十分となり、思考の内容が貧弱で、質問に対して同じ答えを繰り返すことが多い。頑固で、自分の考えに固執するようになることもしばしばある。一方、自分の周りの状態を正確に把握していないため、質問に対して思いも寄らない答えを繰り返すこともある。

 持久力の低下、注意力の散漫なども見られ、自分が病気であるという自覚が次第に失われてゆく。

 三、行動異常

 ボケの初期は記銘力、記憶力障害が中心で、ガス栓の閉め忘れのような物忘れがほとんどであり、まだ異常行動の範囲ではないが、無意味な、理解のできない行動というものが出現するので、周囲の人は注意しなければならない。

 タンスの物を全部出す、ご飯にお汁などの副食物を入れてかき混ぜる、便所でない場所に排便する、おしめの便をこね回す、無断で家や病室を抜け出して遠方で見付けられる、必要でもない物を買いあさる、毎日同じ料理だけを作るなど、行動の異常は実に多彩だ。

 病状が進行すると、活動性は次第に鈍り、始終、独り言を繰り返したり、発語せず黙ったまま過ごすようになり、一日中、ボンヤリしているようになる。失禁も現れ出る。

 四、各種の精神症状

 ボケ老人には、中核となる知的機能の際立った低下のほかに、いろいろな精神症状も出現する。入院しているボケ老人では、夜中に眠らずウロウロ動き回る、騒ぐという夜間せん妄、うつ状態などが多い。在宅のボケ老人でも、同じ夜間せん妄、うつ状態などが多く、その他、人物の誤認、幻覚、妄想などの多いことが認められている。

◆◆脳血管性痴呆は男性により多く、アルツハイマー型老年痴呆は女性に多いことは、先にも述べた通りである。◆◆

 ボケ全体の症状を説明してきたが、詳しくいえば、同じ老年期痴呆でも、脳血管性痴呆とアルツハイマー型老年痴呆とでは、その成り立ちの違いから症状も異なるところが認められている。

 脳血管性痴呆は、脳血管障害があれば、年齢には関係なく出現し得る。一方、アルツハイマー型老年痴呆は、加齢、老化と深い関係があり、通常は七十歳以降に出現する。

 また、脳血管性痴呆は男性により多く、アルツハイマー型老年痴呆は女性に多いことは、先にも述べた通りである。この原因として、女性ホルモンの役割を指摘する専門家もいる。

 男性には、女性におけるような、動脈硬化予防作用のある女性ホルモンが少ないため、五十歳、六十歳代で脳動脈硬化が相当進む。このため、この年代で脳血管障害が起こりやすく、脳血管性痴呆が多くなる。つまり、老境に入りかけた頃、脳の血管の弱い素質を持った人が脱落した形となる、とも考えられよう。

 しかし、七十歳代、八十歳代では、男性で脳動脈硬化の顕著な例は少ない。これは、いわば脳の血管の強い人が生き残ったため、と考えればよいだろう。

 次に、脳血管性痴呆では、末期を除けば、すべての知的機能が一様に、顕著に低下するわけではない。記銘力、記憶力障害がはっきりしているが、計算力はある程度残っているとか、対応は全く正常であるという場合が少なくない。

 反対に、アルツハイマー型老年痴呆では、大脳皮質という中心、中核が第一義的に侵されることから、すべての知的機能が一様に低下し、その程度も大きい。加えて、自分が病気であるという病識が早くからなくなり、多幸性のことが多い。

 もう一つ重要なことは、アルツハイマー型老年痴呆では、人格の崩壊といって、全く人柄が変わってしまうことが多い点である。

 対して、脳血管性痴呆では、人格の変化は少なく、よいおじいさん、よいおばあさんといった感じがある。

 発症と進行の状態について述べると、脳血管性痴呆は比較的急速に発症し、脳血管性障害をきっかけに、段階的にボケが進行していく。

 逆に、アルツハイマー型老年痴呆では、発症がいつかわからないほどゆっくりである。進み方も徐々であり、かつ絶えず進行性であるのが、特徴といってよい。

 そして、この老年痴呆は、ストレス、あるいは他の疾患がきっかけとなって、発症することが多いようだ。例えば、配偶者の死亡、大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)を始めとする骨折、頭部外傷、比較的大きい手術などである。

◆◆狭い意味の知的機能低下、つまり記銘力、記憶力の際立った低下、見当識障害は、薬によって進行を遅らせることはできても、完全には治らない。◆◆

 「ボケが、ドネペジルなどの薬によって治るか」ということについては、疑問を持つ専門家が多いようだ。確かに、中核となっている狭い意味の知的機能低下、つまり記銘力、記憶力の際立った低下、見当識障害は、薬によって進行を遅らせることはできても、完全には治らない。

 が、ボケの周辺には、自発性低下、意欲減退、不安、焦燥、うつ状態、発語減少、情緒障害、幻覚、妄想、異常行動など、いわば副次的な症状があり、人によって、中核症状のほかに二、三、あるいはいくつかを示す。これら周辺の症状は、いろいろな薬に、ある程度反応を示すことがあるようだ。

 すなわち、うつ状態は抗うつ剤に反応しやすい。不安や焦燥は、精神安定剤に反応して落ち着くことがある。自発性低下、意欲減退、発語減少などは、脳の新陳代謝を盛んにする脳代謝賦活剤に、ある程度反応を示すことがあり、とりわけ脳血管性痴呆で反応が見られやすい。

 幻覚、妄想、徘徊などの異常行動については、対応がむずかしく、特に徘徊には適切、有効な薬はない。しかし、幻覚、妄想、あるいは夜間せん妄などは、抗精神薬という、いろいろな精神病に使われる薬に反応を示すことがある。

 だから、専門医師が手を替え品を替えて、これらの薬を適当に使うと、症状の落ち着く場合があり、脳血管性痴呆で、より反応しやすいという。

◆◆ボケ老人に対しては、寝たきりを防止することと、いろいろな合併症を防ぐ努力が必要となる。◆◆

 ボケの中核の症状は頑固で治らないが、それ以外の周辺症状に対しては、一部有効な薬があり、人によっては反応を示すわけだが、症状が少しでも改善した場合はどうなるだろう。

 うつ状態でニコリともしなかった人が、笑顔を作るようになる。自発性低下や意欲減退の顕著だった人が、自分から進んで食事をするようになる。発語減少に陥っていた人が、いろいろ話に乗ってくる。幻覚、妄想のあった人では、これらがなくなり、落ち着く。

 以上のような改善が見られれば、よりまともな人間像に近付いたことになる。また、介護、介助などがより少なくてよい状態にもなる。

 従って、ボケに対して、特に脳血管性痴呆に対しては、いろいろの薬を使ってみる価値はある、と考えてもいいだろう。ただし、これも中等度までのボケについてであり、高度のボケは、脳血管性痴呆でも反応は認められなくなる。

 一方、精神安定剤や降圧剤、抗うつ剤は、しばしばボケの症状を悪化させるという意見も、医療関係者の中にあるようだ。

 さて、ボケの人と、ボケのない人の予後を調査した成績によると、ボケの人の病気後の経過は悪く、早く死亡する。原因は、ボケ以外のいろいろな病気、あるいは病的状態が合併するためである。

 最も予防したいものは、寝たきり状態である。寝たきりの原因としては、脳卒中による片マヒ、不全片マヒが最も多く、次いで痴呆である。

 ボケた場合、家族や医師、看護師の指示などに従うことが少なくなり、安易なことを求める結果、寝たきりになりやすい。寝たきりになると、床擦れ、尿道炎、膀胱(ぼうこう)炎、敗血症などを併発しやすくなるため、寿命が短くなるわけである。

 よって、ボケ老人に対しては、寝たきりを防止することと、いろいろな合併症を防ぐ努力が必要となる。例えば、高血圧のある場合や、高脂血症のある場合は、これらのコントロールが必要である。

 

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