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∥老年期痴呆の二大別∥

 

◆◆八十歳、九十歳、百歳以上になっても、知的機能低下が軽い人も少なくなく、すべての人がボケるわけではない。◆◆

 年を取るとともに、記憶力などが低下してくるのは、致し方のないことである。これがどんどん進んで、高齢になって病的な症状とつながるのか、すなわち、生理的な老化が病的な老化に連続して移行するのかといえば、連続しないといえる。

 その理由は、八十歳、九十歳、百歳以上になっても、知的機能低下が軽い人も少なくなく、すべての人がボケるわけではないからである。

 高齢者がすべてボケるわけではないが、「痴呆」、「ボケ」という言葉は、老年者に主として使用される病名である。老年者では、いろいろな病気にかかった時に痴呆症状を示すこともあるが、ここでは、うつ病など他の病気の症状として出現する痴呆症状ではなく、痴呆そのものが主な病気であるものを取り扱うことにしよう。

 これを普通、「老年期痴呆」という言葉で表現している。

 老年期痴呆の原因は老化と深い関係があり、二つの型のあることが世に知られている。

 その一つの型は、変性性、あるいは原発性の痴呆である。変性性とは、脳の組織の性質が変化するという意味である。原発性とは、他の原因により二次的に起こったのではなく、それ自体が最初に発生したという意味である。

 この変性性の痴呆、原発性の痴呆は、狭い意味の老年期痴呆で、単に「老年痴呆」と呼ばれることもある。

 そして、この型の痴呆は近年、「アルツハイマー型老年痴呆」、あるいは「アルツハイマー型痴呆」と呼ばれている。アルツハイマー病の脳の変化と同じ変化を示すということから、名付けられたのである。

◆◆老年期痴呆は、アルツハイマー型老年痴呆と、脳血管性痴呆に大別される。◆◆

 アルツハイマー病とは、ドイツの医学者アルツハイマーが一九〇六年にはじめて記載した病気である。「初老期痴呆」ともいわれ、四十歳代から、五十歳代中心の初老期に脳の変性委縮によって発症し、数年の経過で死亡するものである。珍しい病気であったが、近年増加して話題を集めている。

 老年期痴呆のもう一つの型は、「脳血管性痴呆」であり、脳の血管障害が原因で起きる病気である。脳卒中の発作後に痴呆が出現してくることがあるが、これが典型的な脳血管性痴呆である。

 脳血管性痴呆は、また「多発梗塞性痴呆」と呼ばれることがある。この命名は、脳梗塞、特に小さい脳梗塞が多くできると痴呆が出現することに由来している。

 より正確にいうと、脳梗塞は血管の詰まり方で、脳血栓と脳塞栓の二つに分けられる。まず、脳血栓は脳の血管が動脈硬化によって詰まって、血流が途絶えてしまうもので、動脈硬化の進む中高年以降に多くなる。一方、脳塞栓は体のほかの場所から流れてきた血栓によって、脳の血管が突然詰まってしまうもので、脳血管の動脈硬化の有無にかかわらず、かなり広い年齢層で起こり得る。

 このように、老年期痴呆はアルツハイマー型老年痴呆と、脳血管性痴呆に大別されるが、脳の老化による因子と、脳血管障害の因子との両方を兼ね備えた型のものがあり、「混合型痴呆」と呼ばれる。この型の痴呆は、必ずしも重視されず、いずれかに入れる考えもある。

 調査報告によって多少のずれはあるものの、欧米人ではアルツハイマー型老年痴呆が多数派であり、五十パーセント以上を占める。日本人では脳血管性痴呆のほうが多数派で、ほぼ五十パーセント以上と、欧米とは逆になっていたが、最近はアルツハイマー型老年痴呆のほうが多いとの報告も増え、両方を合併している混合型痴呆の例も、かなりあることがわかってきている。

◆◆ボケ全体の発現を男女別に見てみると、明らかな性差があり、国内外の調査で、女性では男性の約一・五倍から二・五倍とされている。◆◆

 かつて日本人と欧米人で、老年期痴呆の二つの型の割合がちょうど逆になっていた理由としては、脳動脈硬化のパターンが両者で異なっていることを、専門家は指摘していた。

 すなわち、日本人と欧米人の脳動脈硬化のパターンを比較した際、日本人では頭蓋(とうがい)外脳動脈といわれる頸(けい)動脈の硬化は、頻度、程度とも欧米人に比べて小であるのに対し、脳内の動脈の硬化はより顕著なのである。反対に、欧米人では脳内の動脈の硬化は日本人に比較して軽いが、頸動脈の硬化がより顕著なのである。

 だから、脳の中の動脈硬化がよりはっきりしている日本人では、脳内の動脈閉塞(へいそく)から脳梗塞が起こりやすいわけで、脳血管性痴呆の割合が多かったことが容易に理解できよう。

 次に、ボケ全体の発現を男女別に見てみると、明らかな性差があり、国内外の医学的調査で、女性では男性の約一・五倍から二・五倍とされている。

 男性にも、女性にもボケは起こるが、実は女性に圧倒的に多いわけである。ボケは、一般に七十歳ぐらいから増え始め、八十歳を超えると六~七人に一人、八十五歳を超えると四人に一人がボケてしまうといわれていた。

◆◆ボケた高齢女性の半分以上は、中年の頃から化粧っ気もなく、衣服にも関心が薄く、家に閉じこもりがちな生活をしていた人たちである。◆◆

 日本は世界一、二の長寿国とはいっても、女性の平均寿命が約八十五歳なのに対し、男性は約七十八歳。七歳ほどの開きがある。これにはいろいろな原因があるが、ボケが多発する七十五歳以上になる前に、男性のほうが先に亡くなってしまい、女性だけがボケの多発する年代に突入する。そのため、どうしても女性のボケる人口が増えることになるのは、まず間違いない。

 そのほか、夫に先立たれて、別離という孤独の環境についてゆけずにボケてしまったり、嫁とうまくいかずに孤立してボケてしまうとか、最悪の環境の激変についていけずにボケてしまうといったことも多いようである。

 また、ボケた高齢女性の半分以上は、中年の頃から化粧っ気もなく、衣服にも関心が薄く、家に閉じこもりがちな生活をしていた人たちである。

 このように、日本で女性に痴呆の多い理由として、平均寿命が男性より長いことなどが挙げられるのであるが、それだけでは説明ができない点もある。従って、他の原因の存在が考えられるが、まだ不明である。

 他の原因の一つとして推察されるのは、老化による脳の変化に、男性と女性の違いが認められること。

 人間誰もが老年になると、脳がいろいろ変化する中で最も目立つのは、脳委縮といって、脳が小さくなることで、脳の神経細胞が減少してくるために起こるものだ。

 脳には約百四十億から約百五十億個の神経細胞があり、十八歳から二十歳を成長のピークとして、一日に約十万個ほど減少していく。神経細胞は新しく作られることがないため、一方通行的にその数が少なくなる。これを反映して、脳の重さが加齢とともに減じていくわけである。

◆◆脳は体の中心、中核であることから、人間を創った宇宙天地大自然の知恵によって、年を取っても重さの軽減を可能な限り少なくしている。◆◆

 特に女性では、脳の委縮が男性より明らかである。この脳委縮の顕著なことが、女性に痴呆が多いことと関係している可能性もあるだろう。

 ここで明白に指摘できることは、加齢による脳の重さの減少が、他の臓器のそれに比べれば相当軽度ということ。肝臓の重さは、三十パーセント以上も減少するのである。

 脳は体の中心、中核であることから、人間を創った宇宙天地大自然の知恵によって、年を取っても重さの軽減を可能な限り少なくしているといえよう。

 一方、男性では六十歳代で、女性よりボケが多くなっている。この年代の男性に、脳血管性痴呆が多いためと考えられている。

 痴呆の型別では、脳血管性痴呆は男性に多く、アルツハイマー型老年痴呆は女性に多いといえよう。

 

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