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∥四百四病の事典∥
無気肺とは、肺に空気が入っていない状態。これまで十分に拡張していた肺の組織の一部の空気、または全部の空気が何らかの原因で失われ、肺がつぶれている状態を指します。
この無気肺には種類がいくつもあり、原因もさまざまです。例えば、胸膜腔(くう)に液体がたまれば、液体の圧迫でその下の肺には無気肺が生じます。また、肺がんや、気管支への異物の流入で、気道が閉塞(へいそく)されれば、それより末梢(まっしょう)の肺組織中の空気は吸収され、無気肺が起こります。
そのほか、病巣、リンパ節の腫瘍(しゅよう)や、気胸、胸膜炎、膿胸(のうきょう)、横隔膜ヘルニアなどの病巣によって、気管が外部から圧迫されたり、粘膜の塊が気管支につかえると、そこから末梢部に無気肺ができます。結核、肺がんなどによって、気管支が狭窄(きょうさく)、閉塞して起こることもあります。さらに、外科手術後、痛みなどで深呼吸が行えず、粘液が気管支をふさいで、無気肺が生じることもあります。
無気肺は、ほかの疾患があったり、程度が小さかったりすると、しばしば見落とされます。しかし、ある程度の大きさになると、せき、喀(かく)たん、胸部圧迫感、胸部不快感、発熱、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難、頻呼吸などの症状を示します。重症の場合は、ショックで生命が危険になることもあります。
無気肺になった直後は単に肺に空気がないだけですが、充血を伴う場合には肺組織の破壊と瘢痕(はんこん)化によって、慢性無気肺が起こることもあります。慢性無気肺では、肺炎などを起こしやすくなります。
無症状のこともありますが、症状が出て呼吸困難や胸痛が現れた場合は、放置しておくと無気肺が慢性化して肺炎なども引き起こすため、早期に内科、呼吸器内科、呼吸器科の専門医を受診します。
胸部X線検査、胸部CT検査によって、無気肺となった部位の診断が可能です。気管支内視鏡検査によって、気道内の病変の様子を評価します。
治療では、原因となっている疾患がある場合は、その治療を行ない、気管支をふさいでいる異物やたんなどの分泌物があれば、それを取り除きます。たんなどの分泌物を取り除くためには、体位変換、手のひらと指でおわん型を作って軽くたたくタッピング、ネブライザー吸入、去たん剤の投与が行われます。気管支鏡を用いて摘出する場合もあります。
無気肺が慢性化している場合は、肺炎などを起こしやすいため、抗菌剤の投与が行われます。
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