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∥四百四病の事典∥


膀胱がん

■膀胱の表面を覆う上皮ががん化することで起こる疾患

 膀胱(ぼうこう)がんとは、膀胱の内部表面を覆う移行上皮ががん化することで引き起こされる疾患。組織学的には、移行上皮がんが全体の90パーセントを占めています。

 膀胱は骨盤内にある臓器で、腎臓(じんぞう)で作られた尿が腎盂(じんう)、尿管を経由して運ばれた後に、一時的に貯留する一種の袋の役割を持っています。膀胱がたまった尿で伸展されると、それを尿意として感じ、筋肉が収縮することによって排尿して、膀胱より尿を出し切るといった働きがあります。その膀胱の表面を覆う移行上皮は、伸縮性に富むことが特徴的です。

 泌尿系のがんの中では、膀胱がんが最も死亡者数が多く、7割以上を占めます。罹患(りかん)数も最多で、泌尿系のがん全体の約半数を占めます。

 年齢別にみた罹患率は、40歳以上に多く、男女とも60歳以降で急増します。男性のほうが女性より罹患率が高く、女性の約4倍です。罹患率の国際比較では、欧米白人で高く、日本人を含む東アジア系民族では低い傾向があります。日本では、年間10万人中約10人の罹患率。

 膀胱がんのはっきりとした原因は、不明です。確立されたリスク要因としては、喫煙が挙げられています。喫煙する人では喫煙しない人と比較して、2〜3倍多くなります。古くはアニリン系色素やゴム工場従事者に多く発生し、職業がんとして有名でした。現在では、ベンチジンなど、がんと因果関係のはっきりしているものの使用は禁止されています。

 長期間、膀胱結石があったり、膀胱周囲の血管系に寄生するビルハルツ住血吸虫症に感染していたりすると、その慢性的な刺激により発がんすることがあります。医薬品では、フェナセチン含有鎮痛剤やシクロホスファミドに発がん作用が認められています。

 初発症状として最も多いのは血尿で、赤色や褐色の尿で気付いたり、尿検査などで発見されます。この血尿は膀胱炎とは異なり、痛みなどを伴わないのが特徴で、無症候性血尿と呼ばれます。血尿は数日経過すると止まることもありますが、また出たり止まったりを繰り返しながら、疾患は進行します。

 病変の部位が膀胱の出口に近い尿道口や膀胱頸部(けいぶ)にあると、頻尿、排尿時の疼痛(とうつう)、尿の混濁、残尿感など膀胱炎と非常に類似した症状や、排尿障害などが現れます。さらに尿管が閉塞(へいそく)してしまうと、尿が流れないために腎臓がはれたり、尿管が拡張する水腎症の症状が現れたり、それによって腎臓機能が低下することがあります。進行すると痛み、排便の異常、直腸や子宮からの出血などが現れることもあります。

■膀胱がんの検査と診断と治療

 膀胱がんは血尿で始まることが多い疾患ながら、血尿があればすべて膀胱がんというわけではありません。しかし、肉眼的な血尿を自覚したり、尿検査などで指摘されたりした場合には、いろいろな疾患も考えられるため、泌尿器科や腎臓内科の専門医を受診します。

 通常、膀胱がんは隆起しているので、膀胱鏡検査でその一部分を採取して顕微鏡検査をすることで、医師の診断は確定します。この膀胱鏡検査では、病変の性状や大きさ、数、発生部位なども観察することができます。膀胱がんは多発することがあり、膀胱鏡検査で見ただけではわかりにくい場合は、肉眼的に正常と思われる部位からも生検します。

 尿中に混じっている異常細胞を調べる尿細胞診も行われますが、小さな乳頭状のがんでははっきりがん細胞と断定できないことがあります。

 進行度を調べるためには、腹部のCT検査やMRI検査、腹部および経尿道超音波検査、排泄(はいせつ)性尿路造影などが行われます。転移がないかどうかを調べるためには、胸部X線検査、腹部CT検査、骨シンチグラフィなども行われます。膀胱と同様に移行上皮がある腎盂や尿管に異常がないかどうかも、排泄性尿路造影などで検査します。

 膀胱がんの治療は、検査によって得られたがんの状態や転移の有無、発症者の年齢や体力などを考慮して決定されます。膀胱壁の比較的浅い部分までに限局している表在性腫瘍では、経尿道的膀胱腫瘍切除術が行われます。これは腰椎(ようつい)麻酔をした上で尿道から膀胱鏡を入れ、電気メスで腫瘍を切除する治療です。再発防止のために、抗がん薬の膀胱内注入が行われることもあります。

 がんが膀胱壁の最も浅い層である粘膜内に限局している上皮内がんには、BCG(結核のワクチン)の膀胱内注入が行われることがあります。これは外来で行うことができ、週に一度の注入を数回行います。

 膀胱壁のより深い部分に及んでいる浸潤性腫瘍では通常、膀胱全摘除術、および膀胱を切除した後に尿を出すための経路を作る尿路変更(変向)術が行われます。膀胱全摘除術は全身麻酔下で行われる手術で、膀胱と周囲のリンパ節のほかに、男性であれば前立腺(せん)、精嚢(せいのう)などを、女性であれば尿道、腟(ちつ)前壁などを同時に摘出します。

 続いて行う尿路変更術には、尿管皮膚瘻(ろう)、回腸導管造設術、自然排尿型代用膀胱などがあります。尿管皮膚瘻は、左右の尿管を皮膚につなぎ、腎臓までカテーテルを入れて、そこから排尿するものです。手術としては簡単ですが、常に尿が出てくるので袋をつけておかなければなりませんし、感染の危険もあります。

 回腸導管造設術は、小腸の一部を切り取って、そこに左右の尿管をつなぎ、その小腸の一端を皮膚につないで排尿するものです。感染などの合併症が少ない方法ですが、やはり常に袋をつけておく必要があります。

 自然排尿型代用膀胱は、小腸を用いて作成した代用膀胱を元の膀胱と置き換えて、元と同じ尿道口より排尿する方法です。最も生理的な方法ですが、尿道を温存できる場合しか適応となりません。腹圧によって排尿することができますが、うまくできない場合には自己導尿が必要になることもあります。

 転移があるような進行がんや、全身状態に問題があったり、手術を希望しない場合には、抗がん剤による化学療法が行われ、通常2種類以上の薬剤が組み合わせて投与されます。メトトレキサート(メソトレキセート)、ビンブラスチン(エクザール、ビンブラスチン)、ドキソルビシン(アドリアシン)、シスプラチン(ランダ、ブリプラチン)の4剤を組み合わせたM—VAC療法が、膀胱がんに対して最もよく行われる化学療法です。近年、タキソールやジェムシタビンといった新しい抗がん剤を用いる治療も注目されています。

 また、手術の前に抗がん剤による治療を行うこともあり、これは術前補助療法と呼ばれます。一方、手術の後に抗がん剤による治療を行うこともあり、こちらは術後補助療法と呼ばれています。

 放射線併用治療も行われています。放射線にはがん細胞を死滅させる効果があるので、がんを治すため、またはがんにより引き起こされる症状をコントロールするために使われます。放射線治療の適応となるものは、基本的に浸潤性腫瘍です。膀胱の摘出手術では尿路変更が必要となるデメリットがあるため、あえて放射線治療や、放射線治療に化学療法を合わせて治療し、膀胱を温存することもあります。

 膀胱がんは膀胱が存在する限り、膀胱内に再発する可能性は常にあります。経尿道的膀胱腫瘍切除術の後は、定期的に外来に通院し、膀胱鏡や尿の細胞診でチェックする必要があります。膀胱を摘出した場合には、転移が出現していないかなど定期的なチェックももちろんのこと、回腸導管や、腸管で作られた新しい膀胱が機能しているか、腎障害が出てきていないかなどのチェックも必要になってきます。

 

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