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∥四百四病の事典∥


非定型抗酸菌症

■慢性的に経過しながら、確実に肺をむしばんでいく疾患

 非定型抗酸菌症とは、結核菌と、らい菌以外の抗酸菌で、通常、非定型抗酸菌と呼ばれるものが起こす疾患。非結核性抗酸菌症とも呼ばれます。

 抗酸菌は酸に対して強い抵抗力を示す菌であり、非定型抗酸菌にはたくさんの種類があって、水や土など広く自然界に存在しています。人間に病原性があるとされているものだけでも10種類以上。日本で最も多いのは、MAC菌(マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ)で、約75パーセントを占めます。次いで、マイコバクテリウム・キャンサシーが約15パーセント、その他が約10パーセントを占めています。

 人間への感染経路は明らかではありませんが、同じ抗酸菌である結核菌よりもかなり病原性の低い菌であり、健康な人ではほとんど発症しません。発症した場合も、人間から人間へは感染しません。

 全身どこにでも病変を作る可能性はあるものの、結核と同様、ほとんどは肺の疾患です。発症様式には、もともと健康であった肺に感染する一次型と、結核後遺症や気管支拡張症などによって傷んだ肺に感染する二次型とがあります。高齢者は、特に二次型に注意が必要。

 症状に際立った特徴はなく、せき、たん、軽い発熱、倦怠(けんたい)感などがあります。自覚症状が全くなく、胸部検診や結核の経過観察中などに偶然見付かる場合もあります。

 発症するとその多くは治療が容易ではなく、慢性的に経過しながら少しずつ肺をむしばんでいくのが特徴です。進行した場合は、呼吸困難、喀血(かっけつ)、食欲不振、やせ、発熱などが現れます。肺結核と症状が似ているため、間違えられることもあります。

 肺結核の減少とは逆に発症者が増えてきており、確実に有効な薬がないため、患者数は蓄積され、重症者も多くなってきています。また、HIV感染者への感染するエイズ合併症が問題になっています。

■非定型抗酸菌症の検査と診断と治療

 非定型(非結核性)抗酸菌症に気付いたら、結核に理解のある呼吸器科、あるいは結核療養所を受診します。

 医師による診断では、喀たんなどの検体から非定型抗酸菌を見付けることにより確定されます。ただし、非定型抗酸菌は水や土など広く自然界に存在しており、たまたま喀たんから排出されることもあるので、ある程度以上の菌数と回数が認められることと、臨床症状、レントゲン写真の陰影の変化と一致することが必要です。

 非定型抗酸菌症と鑑別すべき疾患には、結核のほか、肺の真菌症、肺炎、肺がんなどがあります。

 非定型抗酸菌の多くは抗結核剤に対して耐性を示しますが、治療に際しては、菌によって効果があるため、まずは抗結核剤をいくつか併用します。最も一般的なのはクラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトール、ストレプトマイシンの4剤を同時に使用する方法。

 確実に有効な薬がないため、薬は結核の時よりはるかに長期間服用する必要があります。 場合によっては、肺切除などの外科療法が行われます。

 

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