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∥四百四病の事典∥
■人格の著しい偏りで社会生活に支障
パーソナリティー障害(人格障害)とは、精神医学の領域において、生来持っている人格傾向が思春期、青年期に顕著に出てきて、その人格の著しい偏りのために、社会生活を営むことに支障を伴う状態を指します。
物事の認識の仕方や行動が逸脱していて、対人関係の機能が障害され、自分自身や他人、または両方を苦める傾向が目立ちます。パーソナリティー障害は精神疾患の一つに含まれますが、その他の精神疾患と比べて慢性的であり、全体としての症状が長期に渡って変化しないことに特徴があります。
従来は人格異常、精神病質と呼ばれていた病気の概念で、新たに人格障害と一般的に呼ばれてきましたが、この人格障害は否定的なニュアンスが強いことから、近年はパーソナリティー障害と呼ばれることが多くなっています。日本精神神経学会では2008年5月に、人格障害をパーソナリティー障害に用語改定をすることを発表しました。性格障害と呼ばれることもあります。
パーソナリティー障害(人格障害)にはさまざまなパターンがあり、時代や国によって分類方法も変わってきます。現在、アメリカの精神医学会によって作られた診断基準では、パーソナリティー障害は3つのグループに分けられています。
A群は、妄想性パーソナリティー障害、統合失調症質パーソナリティー障害、統合失調症型パーソナリティー障害。統合失調症(精神分裂病)に近いパーソナリティー障害です。
これらのパーソナリティー障害の特徴は、思考、感情、行動などの統一性を失う統合失調症のようなはっきりとした精神症状はありませんが、それとよく似た傾向を持っています。自閉的で、しばしば妄想を持ちやすく、奇妙で風変わりな傾向を示します。
B群は、反社会性パーソナリティー障害、境界性パーソナリティー障害、演技性(ヒステリー性)パーソナリティー障害、自己愛性パーソナリティー障害。感情が不安定、かつ激しいのが特徴的なパーソナリティー障害です。ストレスに対して弱く、他人を巻き込むことが多い傾向を示します。
C群は、回避性(不安性)パーソナリティー障害、依存性パーソナリティー障害、強迫性パーソナリティー障害。不安やおびえ、引きこもりなどを特徴とするパーソナリティー障害です。周りの評価が気になり、それがストレスとなる傾向を示します。
その他、 抑うつ性パーソナリティー障害 、受動攻撃性パーソナリティー障害も、診断基準の付録に挙げられています。
これらパーソナリティー障害の人には、融通が利かず、問題に対して適切に対処できない傾向があるため、しばしば家族、友人、職場の同僚との関係の悪化を招きます。問題への不適応や、物事の認識の仕方や行動の逸脱は多くの場合、思春期、青年期から成人期初期にかけて始まり、時を経ても変わることはありません。
ただし、一部のパーソナリティー障害の人では、30~40歳代までに状態が改善していく傾向があるとされ、晩熟現象と呼ばれています。加齢による生理的なものの影響だけではなく、仕事等の社会生活を通じて多くの人々に触れ、世の中には多様な生き方、考え方があるということを知り、それを受容することに基づく現象と考えられています。
■パーソナリティー障害者の診断と治療
パーソナリティー障害(人格障害)の人は、自らの思考や行動のパターンに問題があることに気付いていません。このため、自分から医師に治療や助力を求めることは、あまりありません。当人の行動がほかの人に迷惑をかけているなどの理由で、友人や家族、社会的機関によって、医療機関に連れてこられることは、より多くあります。自主的に受診するのは、不安、抑うつ、薬物乱用など、つらい症状がある場合が主です。
医師の側では、既往歴、特に繰り返し現れる不適応的な思考や行動のパターンに基づいて、パーソナリティー障害を診断します。統合失調症や気分障害など他の精神疾患でも、パーソナリティー障害の症状を示すことがあるため、区別に注意しなくてはなりません。また、受診者の年齢が幼いほど、パーソナリティー障害の診断に慎重になる必要があります。人格発達が不完全な未成年者では、いずれかのパーソナリティー障害の傾向を示すことが珍しくないためです。
パーソナリティー障害がある人では、行動の結果が思わしくない場合にもそのパターンを頑固に変えようとしないため、他人の目にも明らかになりがちです。問題への心理的な対処のメカニズムの不適切も、よく目に付きます。この対処メカニズムは誰(だれ)もが無意識に用いるものですが、パーソナリティー障害がある人の場合はその使い方が未熟で不適応的であるために、日常生活にまで支障を来します。
パーソナリティー障害の治療には、長い時間がかかります。パーソナリティー障害は一時的な心の病ではなく、問題が人格といえるほどに当人の心の奥底まで浸透し、長期に渡って変化せずに安定していますので、社会適応の妨げとなる特性が短期間で改善されることはあまり望めません。
パーソナリティー障害の人は何よりも他人を信頼しないので、医師との治療関係に持っていくまでが大変ですし、治療関係自体を良好なまま維持していくのにも工夫が必要とされます。
何らかの精神症状が出ている場合、妄想などの内容が過激で生活にかなりの支障が出ている場合には、薬物を投与しながら治療していくほうが好ましいとされます。薬物療法や環境ストレスの低減により、不安や抑うつなどの症状はすぐに軽快します。ただし、薬には症状を緩和させるだけの限られた効果しかなく、パーソナリティー障害から起こる不安や悲しみなどの感情は、薬で十分に軽減されることはまずありません。
薬物療法や環境ストレスの低減により、不安や抑うつなどの症状を軽減した後、心理・対話療法が行われ、その人独自の思い込みを少しずつ解いていくことが試みられます。
パーソナリティー障害のタイプにより治療法は異なりますが、思い込みを解くことはすべての治療法に共通する原則の1つ。当人は自らの行動に問題があるとは思っていないため、状況に適応していない思考や行動が引き起こす有害な結果に、直面させる必要があります。それにはまず、当人の思考や行動パターンから生じる望ましくない結果を、心理療法士が繰り返し指摘する必要があります。時には、怒って声を張り上げるのを禁じて、普通の声で話させるなど、行動に制限を加えることも必要とされます。
家族の行動は、本人の問題行動や思考に良くも悪くも影響するため、家族の関与は治療に役立ち、多くの場合不可欠でもあります。グループ療法や家族療法、専用施設での共同生活、治療を兼ねた社交サークルや自助グループなどが、社会的に望ましくない行動を変えていく上で役立ちます。
心理・対話療法は通常、不適応行動や対人関係のパターンに何らかの変化がみられるまで、1年以上は続けなければなりません。医師とパーソナリティー障害の人との間に、親密で協力的な信頼関係ができると、当人はそこから自らの悩みの根源を理解し、不信、ごう慢、人に付け込むといった対人問題の原因となる態度や行動を、より明確に認識するのに役立ちます。一般的に、不適応行動の変化は1年以内に生じますが、対人関係の変化にはなお時間がかかります。
パーソナリティー障害の中でも、特に適応の妨げとなる態度や期待、信念などがある自己愛性パーソナリティー障害、強迫性パーソナリティー障害などの場合には、精神分析的精神療法を受けることが勧められ、通常は少なくとも3年間続けられます。
境界性パーソナリティー障害、反社会性パーソナリティー障害、回避性パーソナリティー障害の場合には、当人の行動の変化が最も重要と見なされ、落ち着きがない、社会的に孤立している、自己主張が欠如している、怒りやすいなどの行動を変えるのに、認知行動療法が役立ちます。ただし、反社会性パーソナリティー障害または妄想性パーソナリティー障害の場合は、どの治療法でも成功することはまれです。
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