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∥四百四病の事典∥


尿毒症

■尿中に排出されるべき物質が血液中に蓄積

 尿毒症とは、腎(じん)臓の機能が極端に低下し、本来なら尿の中に排出される老廃物や毒素が血液中にたまって現れる、さまざまな中毒症状の総称です。慢性腎不全の末期の状態を指します。

 食べ物の多くは、体内で代謝され、大部分は水と炭酸ガスになります。蛋白(たんぱく)質などは尿素窒素、尿酸、クレアチニンなどの窒素代謝産物となり、正常では尿中より排出されますが、尿毒症では十分排出できずに体内にたまります。そのために、高血圧、むくみ、倦怠(けんたい)感、貧血、出血傾向などのほか、骨や筋肉、神経、循環器、消化器、皮膚など、全身にさまざまな症状が現れます。重症になると幻覚や昏睡(こんすい)を引き起こす危険性があり、放置すると死に至ります。

 また、腎臓には老廃物や毒素を排出する以外に、水や、ナトリウム、クロール、カリウム、カルシウム、リンなどの電解質のバランスと酸塩基平衡の維持、ホルモンの産生および不活性化の機能などがあります。これらの腎臓の機能すべても、尿毒症では阻害されます。

 水、電解質の異常に関しては、ナトリウムやクロールの蓄積は体内の水分の増加をもたらし、高血圧、むくみ、心不全などを起こします。カリウムの増加は不整脈を起こし、カルシウムやリンの異常は腎性骨異栄養症といわれる骨の代謝異常を起こします。腎不全によるリン酸と有機酸の蓄積、アンモニアの生成と排出障害、水素イオンの排出障害などは、代謝性アシドーシス、骨代謝異常、アルブミンの合成低下、筋力低下などを来します。

 血液の異常に関しては、尿毒症に伴う貧血である腎性貧血を起こします。腎性貧血の主な原因は、造血ホルモンであるエリスロポエチンの腎臓での産生低下であり、さらに造血抑制因子や赤血球寿命の短縮、低栄養による鉄と葉酸不足、出血傾向などが関わってきます。

 骨代謝異常に関しては、リンの排出障害により高リン血症、また腎臓のビタミンDの活性障害により、腸からのカルシウム吸収や骨吸収、腎臓でのカルシウム再吸収が低下し、低カルシウム血症となります。その結果、二次性副甲状腺(せん)機能高進症となり、さらには代謝性アシドーシスも加わって腎性骨異栄養症が発生します。そのため骨折、骨格の変形、骨や関節の痛み、石灰沈着などが起こります。

 免疫の異常に関しては、尿毒症では免疫不全の状態となっているため、ウイルスや細菌に感染しやすく、またワクチンなどによる免疫獲得率も弱くなります。

 代謝系の異常に関しては、インシュリン抵抗性や膵(すい)臓の細胞の糖に対する感受性の低下のため、耐糖能異常やインシュリン分解能低下が起こって高インシュリン血症となります。脂質代謝異常として、中性脂肪分解酵素の低下のため中性脂肪が高値となります。また、アミノ酸代謝異常、代謝性アシドーシス、尿毒性物質の蓄積などで体内の蛋白質の分解が高進している状態であり、さらに食欲不振などによるカロリー不足となり、栄養障害やビタミン不足の状態になりやすいと見なされています。

 神経と内分泌の異常に関しては、尿毒性物質の貯留によると思われる神経精神異常が認められます。眠気から意識障害や精神症状まで、程度も症状もさまざま。内分泌系の障害として、性ホルモンの低下、成長ホルモンの異常、甲状腺ホルモンの異常も指摘されています。

■尿毒症の検査と診断と治療

 尿毒症の診断、検査では、血圧、脈拍、呼吸状態、体温、胸腹部聴打診、尿検査、尿生科学検査、血液検査、心電図検査、腎部超音波検査などが行われ、原因究明とともに治療が開始されます。血液検査で調べる項目は、血清クレアチニン、クレアチニン・クリアランス、出血時間、尿酸。

 尿毒症の治療には入院が必要になる場合多く、障害の度合いを考え食事療法と透析治療を併用して治療を行います。重篤の場合は、生体腎移植も考えます。

 食事療法では、蛋白質を厳重に制限し、糖質と脂肪で十分なエネルギーを摂取します。蛋白質を制限するのは、蛋白質の代謝産物である尿素窒素やクレアチニンなどが体内に蓄積されないようにするためです。具体的には、体重1キログラム当たり1日0・5グラムの蛋白質の量とします。1日の総エネルギーは、2000キロカロリーを目安とします。

 食塩は1日8グラムぐらいとし、高血圧やむくみの程度が強ければ、3グラム以下とします。また、カリウムを多く含んだ果物、野菜、生ジュースなどは、控えるようにします。

 しかし、尿素窒素の量が増え、食事療法や薬物療法でも尿毒症の症状が解消されない時には、早めに人工透析療法を行うほうが安全です。透析を嫌がってタイミングを逃がすと、まれに死亡することもあります。

 人工透析療法で主流を占めるのは血液透析で、人工腎臓といわれる透析装置を用いて、血液を浄化する方法です。まず発症者の動脈から血液を体の外に導き出し、透析装置の中に送って、ここできれいにされた血液を静脈に戻します。

 透析装置の原理は、小さな穴の開いている薄いセロハン膜を境として、一方から血液、他方から透析液が流されて、血液からは尿素窒素やクレアチニンなどの代謝物質やそのほかの有害物質が透析液に入り、逆に透析液からはブドウ糖や栄養物が血液に入って、発症者の血液が浄化されます。

 血液透析を行うには、安定した体外循環を確保する必要があります。動脈と静脈を吻合(ふんごう)して、内シャントと呼ばれる処置を行う必要があります。普通は左手前腕にこれを作り、この部位に2本の穿刺(せんし)針を刺して透析を行います。人工血管を体外に留置する外シャントと呼ばれる処置を行う方法もあります。

 血液透析は一般的に、1回3~5時間、週2~3回の透析時間を必要とします。透析を始めて間もなくは、吐き気、嘔吐(おうと)、頭痛、血圧変動などの不均衡症候群で悩まされることもあります。食事や水分の摂取の制限など、厳しい自己管理も要求されます。

 通常は中心的なセンター病院と、入院設備を持たない地域透析施設のサテライトとで協力し合って、治療を行っています。安定した状態の時は、日常生活に便利なサテライトで治療が行えるシステムになっています。

 近年は、連続携行式腹膜透析法(CAPD)も行われています。あらかじめ腹腔(ふくくう)内に腹膜透析用の管を入れて固定し、プラスチックバッグに入った透析液を、この管で腹腔内に注入して血液を浄化します。体外の装置ではなく、自身の腹膜を透析膜として利用する手法のため自宅でできますが、一般的には、1日3〜4回、透析液の注入、交換が必要です。

 頻繁な通院から解放されるという利点がありますが、腹腔に異物を留置することから腹膜炎の原因になることがあります。このため、若年者が長期に渡って腹膜透析を用いることは、奨励されていません。

 腎臓移植は、肉親などから2つある腎臓の1つをもらったり、死亡した人の腎臓をもらって、これを発症者に移植し、血管や尿管をつないで腎臓の代用にするものです。移植には、死後間もない腎臓ほど移植成績がよいことから、脳死を巡る論争や、脳死と臓器提供を巡る訴訟問題などが起こり、近年は移植例が減少してきています。

 

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