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∥四百四病の事典∥


大動脈瘤

■胸部あるいは腹部の大動脈の血管が拡張

 大動脈瘤(りゅう)とは、胸部大動脈あるいは腹部大動脈の壁の一部分が弾力性を失って、こぶ状に拡張した状態。この疾患は、女性よりも男性に多く、また、50歳以上の人に多く発生しています。

 大動脈瘤は、大動脈壁の弱くなっている部分が血流によって圧力を加えられると、外側に向けてふくらんで発生します。治療しないで放置すると、破裂して内出血を起こす危険性があります。同時に、大動脈瘤の内部では血流が滞りやすくなるため、しばしば血液の塊である血栓が形成され、壁全体に広がることもあります。このような血栓がはがれ落ちて塞栓(そくせん)になって流れ、他の部位で動脈に詰まることもあります。

 大動脈瘤の主な原因は、大動脈壁をもろくするアテローム(粥状(じゅくじょう)動脈硬化です。高齢者の大動脈瘤はほとんどがアテローム動脈硬化によるもので、高血圧と喫煙は発症のリスクを増大させます。まれな原因には、外傷、大動脈炎、マルファン症候群のような遺伝性結合組織障害、梅毒などの感染症があります。マルファン症候群による大動脈瘤は、心臓に最も近い上行大動脈に最も多く発生します。

 大動脈瘤は大動脈に沿ってどこにでも発生する可能性がありますが、4分の3と最も多いのは腹部を通過する部分である腹部大動脈。残りは胸部を通過する部分である胸部大動脈に起こり、その中では上行大動脈に最も多く発生します。大動脈瘤は丸い嚢状(のうじょう)の場合も、チューブのような紡錘状の場合もあります。紡錘状が多くみられ、嚢状のものは破裂しやすいと見なされています。

 多くの大動脈瘤は、こぶ状の拡大が徐々に進行するために、初めはほとんど症状がありません。特に、胸部大動脈は胸の中にあるため胸部大動脈瘤の自覚症状は乏しく、健診での胸部X線写真で異常な影を指摘されて、初めて気付くことがまれではありません。

 胸部大動脈瘤が大きくなると周囲の組織を圧迫して、さまざまな症状を引き起こすことがあります。大動脈瘤の発生した場所によって、症状は異なります。典型的な症状は、痛み、せき、喘鳴(ぜんめい)です。痛みは普通、背中の上部に感じます。

 まれに、気管支やその付近の気道が圧迫されたり、ただれたりすると、喀血(かっけつ)がみられます。大動脈瘤によって食道が圧迫されると、食べ物を飲み込めなくなります。声帯を支配している神経が圧迫されると、左側の声帯の働きが悪くなって、しわがれ声(嗄声(させい))が出てきます。胸部の特定の神経が圧迫されると、瞳孔(どうこう)が収縮し、まぶたが垂れ下がり、顔の片側に汗をかくなどのホルネル症候群と呼ばれる一群の症状がみられます。時には、胸部に異常な拍動を感じたりします。

 こうした症状が出てきた場合は、胸部大動脈瘤がかなり大きくなっていると考えられ、破裂した場合は、背中の上の方に激痛が起こります。この痛みは破裂が進むに従って背中の下の方へ、さらに腹部へと広がります。また、心臓発作の際のように胸や腕に痛みを感じることもあります。すぐに手術ができる病院に搬送することが必要です。

 腹部大動脈瘤の場合は、ヘソのあたりにドキドキと拍動するこぶを触れることが典型的な症状ですが、こぶが小さかったり、肥満でおなかに脂肪がたまっていたりする場合は、触ってもわからないことがあります。腹部の超音波検査や、CT検査で初めて発見されることがまれではありません。
また、腹部大動脈瘤では、突き刺すような痛みを体の深部や背中に感じることもあります。大動脈瘤から血液が漏れ出している場合は、ひどい痛みが続きます。
腹部大動脈瘤が破裂した場合は、激烈な腹痛や腰痛が出てきます。腹部大動脈からの出血は、腹部から後方の腰の部分に広がることが多いためです。出血が一時的に止まって、腹痛や腰痛の症状が初めは軽いことがあります。しかし、その後に大出血して意識不明になることも多く、腹部大動脈瘤の破裂が疑われた場合には、ただちに手術が可能な病院に搬送する必要があります。

 大動脈瘤が怖いのは、破裂による内出血が重い場合には急速にショック状態に陥り、死に至ることが多いためです。破裂のしやすさは、大動脈瘤の直径の大きさによります。直径が大きければ大きいほど、破裂しやすくなります。正常な胸部大動脈の直径は2・5センチほどなので、拡大して正常の2倍を超えた5〜6センチになると、破裂の危険性が出てきます。胸部大動脈瘤の直径が6センチを超える場合は、破裂防止のために手術治療が考えられます。
一方、腹部大動脈瘤の場合は、正常な腹部大動脈の直径が1・5〜2センチほどなので、その2倍の4センチを超えると破裂の危険性が出てきます。腹部大動脈瘤の場合は、直径が5センチになれば手術が必要です。

■大動脈瘤の検査と診断と治療

 胸部大動脈瘤あるいは腹部大動脈瘤があることが疑われた場合には、経験のある心臓血管外科専門医と相談することが勧められます。

 胸部大動脈瘤の有無は、胸部X線検査で調べることができます。ただし、心臓の影の裏に動脈瘤がある時には見逃されることがあるので、正面と側面から胸部X線写真を撮ることによって、胸部大動脈瘤の拡大の有無をチェックします。しかし、正確な胸部大動脈の直径を知ることは胸部X線写真からでは困難です。胸部大動脈瘤を診断するには胸部のCT検査が最適で、胸部大動脈の正確な直径を知ることができます。手術が必要かどうかも知ることができます。

 腹部大動脈瘤の有無は、腹部エコーや腹部CT検査によって知ることができます。よく健診で腹部エコー検査を行いますが、胆嚢(たんのう)や肝臓は調べても腹部大動脈を調べないことがあり、腹部大動脈瘤が見逃されることがあります。腹部エコー検査の時には、腹部大動脈も診てもらう必要があります。腹部大動脈瘤の正確な直径は、CT検査によってわかります。手術が必要かどうかもわかります。

 大動脈瘤の拡大が軽度であれば手術は行わず、血圧を調べて高血圧があれば、血圧を上げないように薬による治療を行います。しかし、大動脈瘤を治す薬はありません。大動脈瘤が大きくなれば、手術が必要になります。

 CT検査で大動脈の直径の拡大が認められ、本来の直径の2倍を超えるようであれば、破裂の危険性が出てきます。その際には、心臓血管外科専門医との慎重な検討が必要です。手術は、あくまで破裂予防のための手術なので、手術の危険性と破裂の危険性を十分に検討し、納得の上でその後の方針を決めることになります。

 一般に、よく準備された腹部大動脈瘤の手術の危険性は低いと考えられています。従って、直径が5センチに及ぶ腹部大動脈瘤では手術が勧められています。胸部大動脈瘤の手術の危険性は、腹部大動脈瘤よりは高いとされています。

 大動脈瘤に対する手術の基本は、人工血管による大動脈の置換術。大動脈瘤が大きい場合は、全身麻酔による胸部の開胸術、あるいは腹部の開腹術が必要になります。最近では、膨張性のワイヤーでできたステントに人工血管を縫着したステントグラフトを、開胸したり、開腹したりせずに、太ももの動脈などから挿入して、大動脈瘤の部位に留置、固定する手術も行われてきています。

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