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∥四百四病の事典∥


視神経炎

■視神経に生じた炎症による視機能障害

 視神経炎とは、眼球後方の視神経に生じた炎症による視機能障害。視力低下、眼痛のほか、視野障害として、中心部が見えなくなったり、周辺部が見えなくなったりします。

 視神経は眼底から大脳へと伸びて、目から入った視覚情報を大脳の後頭葉にある視覚中枢へと伝える役割を果たしています。視神経に炎症が生じると、網膜に映った像は正常でも、そこから大脳へ伝達される間に異常があるので、結果的に視力障害を来します。

 視神経炎の頻度は、10万人に1人と見なされています。女性に多くみられ、発症年齢は20~30歳代に多いのですが、小児や60歳代での発症もあります。

 視神経炎になった場合、視力が急激に低下し、眼球運動に伴う目の奥のずきずきする痛みが半数以上に出ます。この目の奥の痛みは、視力障害に先立って自覚されることもよくあります。

 視力障害の程度は軽度から重度までさまざまで、中には1~2日で視力が低下し、明るさを失って白っぽく感じられ、中心部が見えなくなる中心暗点を呈することがあります。片目だけに症状が現れた場合は、もう一方の目でほとんどの物が見えるので、視力低下に気付かないこともあります。

 視神経炎の多くは、視力が低下してから1~4週間で回復し始め、ゆっくりと正常または正常近くまで戻ります。原因によっては、視力がいったん回復しても再発を繰り返し、徐々に視力が悪化することもあります。

 視神経の眼球壁内に起こる乳頭炎と、これより後方に起こる球後視神経炎の2種類に分けられます。乳頭炎は、眼底の視神経の先端部分に当たる乳頭や、これに近い部分の視神経に腫(は)れを示します。 球後視神経炎は、眼球の後方に炎症があって腫れが見えず、乳頭が正常に見えます。

 視神経炎の原因としては、多発性硬化症など特定の自己免疫疾患、視神経脱髄(だつずい)性変化、視神経脊髄炎、ビタミンB1欠乏症、ウイルス感染、ワクチン接種、梅毒、結核、眼球内の炎症、鼻や歯や扁桃腺(へんとうせん)からの病巣感染などがあります。ほかに、事故による頭の強打、薬物の影響などでも、視神経に炎症や委縮が起きることがあり、視神経乳頭炎タイプに多くみられます。

 全身の神経の再発性の炎症である多発性硬化症は、球後視神経炎タイプの原因となる代表疾患です。急激に視神経炎を発症することが多く、その後、視神経炎症状は軽快と悪化を繰り返します。

 20~40歳代の成人に多くみられ、自己免疫異常やウイルス感染の関与が考えられていますが、いまだに詳細は不明です。多発性硬化症では、目の障害だけでなく、手足のまひなどの運動失調、感覚障害、認知症などが出現することがあります。

 視神経脱髄性変化は、視神経炎の原因として若年者から中年に多いものです。視神経の炎症によって、視神経の周りを取り囲む髄鞘(ずいしょう)が脱落し、視神経機能に障害が起こります。

 髄鞘の構成蛋白(たんぱく)に対する自己免疫の関与が考えられていて、何らかのウイルス感染の関与も考えられています。視神経脱髄性変化による視神経炎の特徴として、入浴や運動など体温が上昇した際に見えにくくなることも知られています。

 小児では、ウイルス感染に対するアレルギー反応や髄膜炎の波及で視神経炎になりやすく、高齢者では、視神経栄養血管の循環障害によって視神経炎になるケースが多く見受けられます。

■視神経炎の検査と診断と治療

 医師による診断では、瞳孔(どうこう)の反応検査と、検眼鏡による眼底検査、及び視野検査を行って診断を確定した後、MRI検査が行われます。

 片眼性の視神経炎の場合は、瞳孔の対光反応に左右差があることが特徴的で、瞳孔の反応検査は診断上重要です。急性期視神経炎には、眼底検査で視神経乳頭の腫れが認められることが多いのですが、炎症が眼球より後方の視神経に限られている場合には、眼底は全く正常の所見を示しますが、慢性期視神経炎では視神経委縮を示します。

 また、周辺視野検査により、周辺部の視野欠損が発見されることがあります。

 視神経の病変を直接見ることができる眼窩(がんか)部や頭部のMRI検査では、視神経炎の原因になっていることがしばしばある多発性硬化症や、まれに視神経を圧迫している腫瘍(しゅよう)が見付かることがあります。多発硬化症の場合には、側脳室周囲の白質に、白色に見える脱髄性病変が散在しています。

 ほとんどの視神経炎は、特に治療しなくても数カ月のうちに改善されます。病状によっては、副じん皮質ステロイド剤の点滴治療と、その後の内服により治癒が早まり、再発が防止できることがあります。副腎皮質ステロイド剤以外では、神経保護のビタミンB12製剤の内服を行います。

 多発性硬化症による視神経炎、高度の視力障害を起こす難治性再発性の視神経炎の場合には、副じん皮質ステロイド剤の反応も悪く、長期間の投与により副作用も懸念されることがありますので、インターフェロンβ(ベータ)―1b治療が悪化の抑制、再発防止に有効です。

 視神経を圧迫している腫瘍がある場合は、通常、腫瘍による圧力が取り除かれると視力が回復します。

 治療により視力がいったん回復しても、原因によっては再発を繰り返し、徐々に視力が悪化することもありますし、片目だけに現れた症状が両目に現れることもありますので、定期的な経過観察は必要です。予後の比較的よい視神経炎では、10年後にも視力が1.0以上を維持します。

 

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