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∥四百四病の事典∥


若年性認知症

■18~64歳で発症する認知症の総称

 若年性認知症とは、働き盛りの年代の18歳以上、65歳未満で発症する認知症の総称。40歳代、50歳代を中心とした比較的若い世代の認知症であり、初老期認知症とも呼ばれます。

 老年性認知症と総称される65歳以上の高齢者で発症する認知症と同じく、脳の障害によって起きる脳の疾患ですが、原因がつかめているものと、原因がつかめていないものに分かれます。

 厚生労働省では、旧厚生省時代の1996年の研究で、患者数は2万5000人~3万7000人と推計しています。現実には、その3倍以上に及ぶともいわれています。

 初期症状は一時的な物忘れから始まりますが、やがて進行していくと新しいことが覚えられなかったり、物忘れがひどくなったり、判断力の低下などが起こります。会議の予定を忘れたり、同僚の名前や取引先の場所がわからなくなったりするため、仕事を続けることもできなくなります。また、徘徊(はいかい)などの行動障害も出てきます。

 若年性認知症の主な種類として、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、ピック病が挙げられます。

 アルツハイマー型認知症

 アルツハイマー型認知症というと、高齢者の疾患のように思われがちですが、もともとは若年性の疾患で、1907年にドイツの精神医学者アロイス・アルツハイマーが最初の症例報告を行った患者は50歳代だった、という記録が残っています。

 アルツハイマー型認知症は、脳の変性委縮によって発症します。その原因としては、脳の中の記憶に関係する部位である海馬や側頭葉、頭頂葉に、アミロイドという蛋白(たんぱく)の一種が蓄積していくことが始まりと考えられていて、さらにタウという蛋白も神経細胞の中に蓄積するようになり、神経細胞を壊していくことがわかっています。

 なぜこのような現象が起こるのか、アミロイドの産生高進や蓄積が発症の直接原因なのか、それとも結果であるのかについては、まだ結論は得られていません。

 いまだに原因がよくわかっていないアルツハイマー型認知症ですが、最近になって、遺伝的要因があると考えられるようになりました。親族にアルツハイマー型認知症の患者がいる人は、発症する割合が高くなりますし、発症する年齢は30~50歳くらいといわれています。

 若い人にみられるアルツハイマー型認知症では、脳の委縮スピードも若いぶん、高齢者に比べると速くなります。40歳代の場合、高齢者に比べ2倍以上のスピードで病気が進行します。

 アルツハイマー型認知症では大脳皮質という知能活動の中核が第一義的に侵されることから、記憶力などすべての認知機能が一様に低下し、その程度も大きくなります。加えて、自分が病気であるという病識が早くからなくなり、多幸性、多弁であることが多くみられます。

 もう一つ重要なことは、アルツハイマー型認知症では、人格の崩壊といって、全く人柄が変わってしまうことが多い点です。いつかわからないほど発症はゆっくりで、進み方も徐々であり、かつ絶えず進行性であるのが、特徴といってよいでしょう。幻覚や幻視、被害妄想が現れ、暴言、暴力などの問題行動が見られることもあります。

 脳血管性認知症

 脳血管性認知症は、脳の血管に血栓という血の固まりが詰まった脳梗塞(こうそく)や、脳の血管が破れて出血した脳出血など、脳の血管に異常が起きた結果、脳細胞の働きが低下するために起こります。男性に多く、50~60歳で発病しやすくなります。

 主な症状は、日常生活に支障を来すような記憶障害と、その他の認知機能障害である言葉、動作、注意、物事を計画的に行う能力などの障害です。末期を除けば、すべての認知機能が一様に、顕著に低下するわけではありません。

 脳の一部の機能が低下してしまうため、記憶力の低下ははっきりしていても、計算力はある程度残っているとか、時間や場所はわかるとか、対応は全く正常であるという場合が少なくありません。

 脳血管障害を発症した経験があったり、高血圧、糖尿病、心疾患、動脈硬化症、高脂血症など脳血管障害を起こしやすい危険因子を持っている人に、よく起こります。危険因子のほとんどは、生活習慣病といわれるものに相当します。

 ピック病

 ピック病は、人格の変化や理解不能な行動を特徴とする認知症の一種。働き盛りの40歳~60歳に多く発症し、大脳皮質のうち前頭葉から側頭葉にかけての部位が委縮します。

 1898年にチェコのアーノルド・ピックにより報告された疾患で、100年以上経過してもまだ世界共通の明確な診断基準すらなく、正確な発生頻度も不明。疾患を正しく診断できる医師が少ないために、アルツハイマー型認知症と誤診されたり、うつ病や統合失調症と間違えられて、不適切な治療やケアを受けるケースも少なくありません。

 若年性認知症の代表疾患で、40歳代~50歳代にピークがあり、平均発症年齢は49歳、早ければ20歳で発病することも。女性の発症率が多いアルツハイマー型認知症に対して、そういった性差はありません。

 初期では、記憶力などの認知機能は保たれています。目立つのは人格障害で、認知症の中では人格の変化が一番激しくなります。その人格障害には、易怒、不機嫌、爽快なども認められ、人を無視した態度、人に非協力な態度、不まじめな態度、ひねくれた態度、人をばかにした態度などが目立つようになります。しかし、本人に病識はありません。

 ピック病特有の症状といえる滞続言語も、認められます。滞続言語とは特有な反復言語で、会話や質問の内容とは無関係に、同じ内容の話を繰り返したり、おうむ返しを続けたりします。これらは持続的で、制止不能です。

 自制力の低下により、周囲には理解不能な行動、状況に合わない行動もみられます。例えば場所や状況に不適切と思われる悪ふざけや、配慮を欠いた行動をしたり、周囲の人に対して無遠慮な行為や身勝手な行為を示します。

 また、自発性が低下し、考え不精がみられる一方で、多動、外出、徘徊(はいかい)、落ち着きのなさ、多弁、衝動行為、粗暴行為が増加することもあります。窃盗や万引きなどの犯罪を犯す場合もありますが、反省したり説明したりできず、同じ違法行為を繰り返すこともあります。

 症状が進行すると、意欲減退が生じ、仕事を放棄して引きこもったり、何もしないなどの状態が持続し、自発性行動の少なさは改善しません。身だしなみにも無関心になり、不潔になります。周囲の出来事にも無関心になります。

 やがて、記憶障害や言葉が出ないなどの神経症状が現れます。最終的には、重度の認知症に陥ります。

 その他の若年性認知症 

 その他、交通事故や転倒で脳障害を起こしたのが原因で、若年性認知症になる場合もあります。 また、脳腫瘍(しゅよう)、薬物・アルコール依存症、クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、エイズなども、若年性認知症を発症する原因となる疾患として挙げられます。

■若年性認知症の治療と予防

 若年性認知症には、高齢者の発症する老年性認知症とは異なる問題や課題が存在しています。その一つは、年齢が若いので、家族や仕事仲間、医療関係者さえも、まさか認知症が始まっているとは考えられず、早期受診、早期治療に結び付かないケースが多いという点です。

 うつ病と誤診されたり、職場では怠けていると誤解されたりすることも多いようです。何年もかかってやっと専門医を受診し、正確な診断に至ったケースも見受けられます。また、正確に診断できたとしても、職場での対応の調整や、介護環境の調整も重要です。

 日常生活は保たれているものの、記憶力の障害があるとか、集中力が欠けているとか、言語能力が低下しているなど、認知症の症状が現れたら少しでも早く、医師の診断を受けるようにしましょう。

 一口に若年性認知症といっても、医師による治療や対応法はさまざまです。実際、若年性認知症の種類は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、ピック病だけではなく、頭部外傷や脳腫瘍の後遺症などとても多彩で、診断が難しいものもあります。

 残念ながら、まだアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、ピック病などほとんどの認知症では、完治に至る根本的な治療法はありません。ピック病の場合は、錯乱して暴れるなど、介護は危険を伴うので、在宅でのケアは難しくなります。感染症にかかりやすく、数年で死に至るケースもあります。

 しかし、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症では、早期に発見し適切な治療を受けてリハビリに努めれば、症状を軽くして進行を遅らせることはできますし、回復の可能性もあります。

 薬物療法と心理社会的療法による早期治療によって、脳の代償機能と呼ばれるメカニズムが働くようにすることができれば、残された認知機能は維持され、社会生活機能を保つことは可能です。

 脳にはもともと、ある部位の機能が失われても、他の障害されていない部位の神経細胞がその機能を補うように働く代償機能が備わっており、たとえ脳の病変があったとしても、代償機能が働くことで発症を抑えたり、症状の進行を抑制することが可能なのです。 

 散歩などによる昼夜リズムの改善、なじみのある写真や記念品をそばに置いて安心感を与える回想法、昔のテレビ番組を見るテレビ回想法などが、不眠や不安などに有効な場合もあります。 

 若年性認知症の予防には、生活改善がカギとなります。きちんとした食事や睡眠、適度な運動を心掛けるなど生活習慣を見直せば、発病の確率は減らせるはず。また、趣味や職場以外の社交場を持つなど、毎日を生き生きと暮らす工夫も大切。

 とりわけ、以下の食習慣、運動習慣、知的生活習慣が、認知症の予防に効果があることがわかっています。

 食習慣では、EPA・DHAなどの脂肪酸を多く含むサバ、サンマ、イワシ、アジなどの青魚の摂取、ビタミンE・ビタミンC・βカロテンなどを多く含む野菜や果物の摂取、さらにポリフェノールを多く含む赤ワイン、緑茶、ゴマの摂取が、発症を抑えます。これらの食品を3度の食事で、バランスよく食べるようにします。

 運動習慣では、ウォーキングなどの有酸素運動を行えば、脳血管障害の危険因子である高血圧やコレステロールのレベルが下がり、脳血流量も増し、発症の危険性を下げます。ある研究では、普通の歩行速度を超える運動強度で週3回以上運動している人は、全く運動しない人と比べて、発症の危険が半分になっていました。

 知的生活習慣も、発症の危険性を下げます。テレビ・ラジオを視聴し、トランプ・チェスなどのゲームをし、文章を読み、楽器の演奏をし、ダンスなどをよく行う人は、発症の危険性が減少するという研究があります。

 また、旅行、パソコン、園芸、料理など、計画を立てたり、考えたりすることが必要な趣味の活動が、脳を活性化し、軽い認知機能の衰えがある認知症予備軍の高齢者でも、記憶力や注意力、計画力を改善するという研究もあります。

 もしも、経済的な一家の大黒柱や子育て中の人が若年性認知症になってしまったら、経済的な問題や心理的ストレスは、とても大きいものになります。高齢者と違い、若いだけに体力もあるので、介護する側もエネルギーを消耗してしまいます。

 現在のところ、専門施設や情報の不足も深刻です。とはいえ少しずつではありますが、助け合いの輪は生まれつつあります。自分たちだけで抱え込まず、いざという時は専門医やケアマネージャー、精神科病院のソーシャルワーカーなどに相談してみることをお勧めします。また、介護する側も息抜きを忘れずに。

 

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