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∥四百四病の事典∥
縦隔炎とは、胸腔(きょうくう)を左右に区切る縦隔に炎症が起こる疾患。
縦隔は、左右の肺の真ん中にあり、縦に広がる円筒状の空間。前方を胸骨、後方を脊椎(せきつい)、下方を横隔膜に囲まれています。その中には、前部に心臓、大動脈、大静脈、胸腺(きょうせん)、横隔膜神経、後部には気管、食道、迷走神経が収まっています。
この縦隔炎には、急性型と慢性型があります。急性縦隔炎の多くは、間違って異物を飲み込んだり、内視鏡検査などで誤って損傷を受けたりして、食道の穿孔(せんこう)、破裂に続いて起こります。食道がんや食道憩室の穿孔に続いて起こることもあります。食道に穿孔、破裂が起こると、胸骨後方の激痛、発熱、嚥下(えんげ)困難、寒け、せき、呼吸困難、頸部(けいぶ)痛などが急性に現れます。重症になると、細菌が血液の中に入り、敗血症を発症する場合もあります。
慢性型の縦隔炎では、縦隔組織にひきつれができ、それが徐々に進行します。疾患の初期には無自覚、無症状であることもしばしばですが、そのうち血管が圧迫されて、顔や首の前側がはれます。これは腰をかがめたり、横になった場合に、より顕著になります。時には、胸部の圧迫感や喘鳴(ぜんめい)が聞こえることもあります。
間違って異物を飲み込んだり、内視鏡検査を受けて帰宅後に胸骨後方の激痛を感じた場合、食道がんの既往がある人が同様の症状を感じた場合には、すぐに内視鏡検査をした医師などに連絡をとります。
医師は速やかに、胸部X線を撮影します。胸部X線像では、異物が認められたり、縦隔陰影の拡大や縦隔気腫(きしゅ)がみられます。血液検査では、白血球数の増加やCRP(C反応性蛋白)が高値を示します。
急性型の縦隔炎の治療には、大量の抗生物質を使用します。化膿(かのう)している部位があれば、外科手術で取り除くことが必要となります。食道がふさがるまでは、絶飲絶食として点滴で栄養を補給します。原因が食道がんの場合、予後は極めて不良ですが、ほかの原因の場合ではおおむね治ります。
慢性型の縦隔炎の治療では、原因となっている疾患の治療と同時に、炎症に対する治療を行います。外科手術などで、縦隔に加えられた圧力を取り除くこともあります。
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