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∥四百四病の事典∥


強迫性障害

■強迫症状に特徴がある不安障害

 強迫性障害とは、強迫症状と呼ばれる症状に特徴付けられる不安障害の一つ。従来、強迫神経症と呼ばれていたものです。

 強迫症状は、強迫観念と強迫行為からなります。両方が存在しない場合、強迫性障害とは見なされません。強迫観念は、本人の意思と無関係に、不安感や不快感を生じさせる考えが繰り返し浮かんできて、抑えようとしても抑えられない症状。強迫行為は、不安で不快な強迫観念を打ち消したり、振り払おうとして、無意味な行為を繰り返す症状。

 自分でも、そのような考えや行為は不合理である、つまらない、ばかげているとわかっているのですが、やめようとすると不安が募ってくるので、やめられません。例えば、道を歩くのにも電柱を一本一本数えないと歩いて行けない、階段を上り下りするのにも左足からでないと気がすまない、外出の際に家の鍵(かぎ)やガスの元栓を閉めたかが気になって何度も戻ってきて確認する、というような具合です。

 強迫性障害は、人種や国籍、性別に関係なく発症する傾向にあります。調査による推測では、日本の全人口の2パーセント前後が相当します。日本では、対人関係、人間関係に関連した強迫症状が多いのが特徴で、他人と違うことを嫌う社会であるため、幼少期から人間関係に気を使うのが大きな原因とみられます。

 20歳前後の青年期に発症する場合が多いとされますが、幼少期、壮年期に発症する場合もあるため、青年期特有の疾患とはいい切れません。経過は一般に慢性で、よくなったり悪くなったりしながら、長期間に渡って続くのが普通です。ストレスにより、強迫症状が悪化する傾向にあります。また、うつ病が半数以上に合併してくることも特徴で、より苦痛が大きなものとなり、自殺などへの注意が必要になってきます。

 特別なきっかけなしに徐々に発症してくる場合が多く、完全な原因はわかっていません。大脳基底核、辺縁系など脳内の特定部位の障害や、セロトニンやドーパミンを神経伝達物質とする神経系の機能異常、心理的な要因、体質など複数の要因が関係して、発症するのではないかと推定されています。双生児研究から、遺伝的な要因を指摘する説もあります。

 発症者の共通点として、もともと几帳面(きちょうめん)であったり、融通が効かずに生真面目(きまじめ)であったりする性格傾向が挙げられています。

■一般的な強迫症状と、附随する状態

 強迫症状の内容には、個人差があり、人間のありとあらゆる心配事が要因となり得ます。しかし、比較的よく見られる症状があるため、これを下記に記します。

 それぞれの症状についても、発症者自身の対処、すなわち強迫行為の内容は異なり、一人の発症者が複数の強迫症状を持つことも、一般的にみられます。

 不潔強迫(洗浄強迫)

便、尿、ばい菌などで汚染されたのではないかと気になり、人を近付けない、物に触れないなどの回避行動をとります。物に触った後や、帰宅後には、手を何度も洗わないと気がすまなかったり、シャワーや風呂に何度も入らないと気がすみません。

 確認強迫

外出や就寝の際に、家の鍵やガスの元栓、窓を閉めたかが気になり、何度も戻ってきては執拗(しつよう)に確認します。電化製品のスイッチを切ったか、度を越して気にもします。

 加害恐怖

自分の不注意などによって、他人に危害を加える事態を異常に恐れます。例えば、車の運転をしていて、気が付かないうちに人をひいてしまったのではないかと不安にさいなまれて、確認に戻るなどです。

 被害恐怖

自分自身に危害を加えること、あるいは、自分以外のものによって自分に危害が及ぶことを異常に恐れます。例えば、自分で自分の目を傷付けてしまうのではないかと不安にさいなまれ、鋭利なものを異常に遠ざけるなどです。

 計算強迫

物の数や回数が気になって、数えないと気がすみません。

 縁起強迫(縁起恐怖)

自分が宗教的、社会的に不道徳な行いをしてしまうのではないか、あるいは、してしまったのではないかと恐れるもの。例えば、信仰の対象に対して冒とく的なことを考えたり、発言てしまうのではないか、赤ん坊の首を絞めるのではないかなどと恐れ、恥や罪悪の意識を持ちます。ある特定の行為を行わないと、病気や不幸などの悪い事柄が起きるという強迫観念にさいなまれる場合もあり、靴を履く時は右足からなど、ジンクスのような行動が極端になっているものもみられます。

 不完全強迫(不完全恐怖)

物を順序よく並べたり、対称性を保ったり、きちんとした位置に収めないと気がすまないもの。例えば、机の上にある物や家具が自分の定めた特定の形になっていないと不安になり、常に確認したり直そうとするなど。物事を進めるに当たって、特定の順序を守らないと不安になったりするものもあります。

 数唱強迫

不吉な数や、こだわりの数があり、その数を避けたり、その回数を繰り返したりします。例えば、数字の4は死を連想するため、日常生活で4に関連する事柄を避けるなどの行為。

 個人差によって、以下のような状態が強迫症状に付随することもあります。

 回避

強迫観念や強迫行為は発症者を疲れさせるため、強迫症状を引き起こすような状況を避けようとして、生活の幅を狭めることを回避と呼びます。重症になると、家に引きこもったり、ごく狭い範囲でしか生活しなくなることがあります。回避は強迫行為と同様に、社会生活を阻害し、仕事や学業を続けることを困難にしてしまいます。強迫症状を緩和するために、アルコールを飲み続けてアルコール依存症になる例もあります。

 巻き込み(巻き込み型)

強迫行為が自分自身の行為だけで収まらず、自分で処理しきれない不安を振り払うために、家族や友人に手などを洗ったり、誤りがないか確認するなどの行為を懇願したり、強要したりする場合があります。これを巻き込み、または巻き込み型といいます。巻き込みにより、本人のみならず周囲の人も、強迫症状の対応に疲れ切ってしまうことがあります。

■強迫性障害の診断と治療 

 病気に気付いたら、精神科を受診してください。うつ病や統合失調症など他の精神疾患や、脳器質性疾患の可能性もあるので、それらとの区別のための専門的な診断や検査も必要です。

 脳炎、脳血管障害、てんかんなど脳器質性疾患でも強迫症状がみられますので、区別のための血液検査、髄液検査、頭部CTやMRIといった画像検査、脳波検査などが必要になります。

 治療法には、薬物療法と精神療法があります。薬物療法としては、三環系抗うつ薬であるクロミプラミンが有効であることが確認され、神経伝達物質が病因の一つであることが考えられるようになりました。次いで、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が登場し、第1選択薬の地位を占めることになりました。ベンゾジアゼピン系の抗うつ薬も用いられ、また、不安レベルを下げるという意味で抗不安薬が併用される場合もあります。有効率は50パーセント前後と見なされています。

 精神療法では、暴露反応妨害法と呼ばれる認知行動療法の有効性が、確かめられています。認知行動療法とは、認知や行動の問題を合理的に解決するために構造化された治療法で、認知のゆがみの修正、不適応行動を修正して適応行動を再学習するというもの。暴露反応妨害法では、強迫症状が出やすい状況に発症者をあえて直面させ、強迫行為を行わないように指示し、不安感や不快感が自然に消失するまでそこにとどまらせるという方法です。これらを発症者の不安や不快の段階に応じて、実施します。

 認知行動療法は単独でも用いることができますが、強迫観念が強い場合、薬物療法導入後に行うほうが成功体験が得られやすくなります。適応する発症者が限られており、専門家が少ないのが難点です。

 

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