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葉酸欠乏症

ビタミンB群の一つである葉酸の欠乏が原因となって、主に貧血を起こす疾患

葉酸欠乏症とは、ビタミンB群の一つである葉酸の欠乏が原因となって、主に悪性貧血を起こす疾患。同様の疾患に、ビタミンB12の欠乏が原因となって起こる悪性貧血があります。

悪性貧血は巨赤芽球性貧血とも呼ばれ、赤血球を作る際に必要な葉酸やビタミンB12が欠乏するために、赤血球に成熟する前段階の赤芽球が増殖障害によって巨大化した巨赤芽球が骨髄中に認められます。

悪性貧血の初期症状は、疲労感です。肌が青白い、神経過敏、息切れ、めまい、呼吸困難など貧血の一般的な症状に加えて、舌の赤いただれ、味覚の低下、下痢、体重の減少、下痢などが起こります。

葉酸はビタミンB12とともに、正常な赤血球の形成を始め、細胞の遺伝情報をつかさどる核酸(DNA)の合成に必要不可欠ですが、体はごく少量の葉酸しか蓄えていないため、葉酸が少ない食事を続けていると、数カ月で葉酸欠乏症になります。十分な量の生野菜や柑橘(かんきつ)類を食べない人が多いため、葉酸欠乏症はよくみられます。

アルコール依存症による栄養不良もよくある原因で、大量の飲酒も葉酸の吸収と代謝を妨げます。また、妊娠中や授乳中の女性と、腎(じん)不全に陥って人工透析を受けている人は、葉酸の必要量が増しているため、葉酸欠乏症になりやすい傾向があります。

妊娠中の女性が葉酸欠乏症になると、胎児に先天性の脊椎(せきつい)奇形が生じることがあります。葉酸には先天障害の発症リスクを低下させる効果があるため、特に妊娠中の女性は積極的な摂取が必要とされ、厚生労働省は2000年、妊娠を希望している女性に対して1日当たり0・4ミリグラム以上の摂取を推奨しました。

なお、葉酸は水溶性のため、過剰に摂取された分はすべて排出されるので、体の組織や器官内にたまることはないとされています。しかし、まれに皮膚にアレルギー反応が出た例があるようです。

医師による悪性貧血の診断では、まず葉酸欠乏かビタミンB12欠乏かを血液検査で調べ、続いて骨髄を調べて巨赤芽球が認められれば確定されます。

治療では、葉酸を多く含む食品を積極的に摂取したり、葉酸サプリメントを摂取したりします。妊娠中の女性または妊娠を希望している女性の場合は、葉酸サプリメントを多めに摂取して、胎児に先天異常が生じる危険性を減らします。

また、葉酸の代謝や吸収を阻害する薬を服用している場合は、予防のために葉酸サプリメントを摂取すべきです。例えば、がんや関節リウマチの治療に使うメトトレキサートや抗生物質のトリメトプリム‐スルファメトキサゾール(ST合剤)は、葉酸の代謝を妨げます。 フェニトインやフェノバルビタールなどの抗けいれん薬や、スルファサラジンなどの潰瘍(かいよう)性大腸炎の治療に使う薬は、葉酸の吸収を低下させます。

葉酸を多く含む食品には、ホウレン草などの緑黄色野菜、果物、レバー、卵黄、胚芽(はいが)、牛乳などが挙げられます。ただし、調理や長期間の保存による酸化によって、葉酸は壊れてしまうため、新鮮な生野菜や果物がよい供給源となります。

葉酸は赤血球を作って悪性貧血を予防するほか、口内粘膜を強化して口内炎などを予防する作用もあり、血液中に蓄積する有害なアミノ酸物質ホモシステインの濃度を下げ、心臓病や脳卒中のリスクを軽減させるという報告もあります。がん予防に役立つともいわれています。

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