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翼状片
結膜が伸びて、角膜に侵入してくる眼疾
翼状(よくじょう)片とは、白目の表面を覆う結膜が伸びて、黒目の表面を覆う角膜に侵入してくる疾患。しばしば両目に起こります。
普通、鼻側の白目の表面を覆う結膜から、まれに耳側の白目の表面を覆う結膜から、黒目の表面を覆う角膜に向かって、少し赤みのある三角形の膜状の翼状片ができ、三角形の頂点を角膜の中央に向け、徐々に進んでいきます。角膜は翼状片が進んでくる方向へ引っ張られ、角膜の乱視が出現します。
この翼状片は、結膜の下にある線維芽細胞が必要以上に増えて、角膜へ入り込んできたために生じたもので、結膜は巻き込まれて角膜へ入ってきます。血管が豊富な結膜が、本来血管のない部位の角膜に入るため、黒目の部分が充血したように赤く見えます。
まれに耳側と鼻側の両側の結膜から、角膜に翼状片が侵入してくる場合もあり、角膜の中央に侵入が及ぶと、視力を著しく損ないます。ひどい場合は、両側から侵入した翼状片が橋のようにつながることもあります。
自覚症状としては、充血や異物感などがあります。痛みはありません。徐々に侵入していく翼状片は、鏡を見ると自分でわかります。
原因は不明ですが、中年以後の野外労働者や高齢者に多くみられ、緯度の低い地方、日本なら沖縄県に多い傾向があるため、発生には紫外線が関係しているといわれています。
目の外傷、熱傷、角膜潰瘍(かいよう)、酸やアルカリが目に入った場合などの回復過程でも、翼状片に似た症状が出現することがあります。これを偽翼状片と呼びます。
翼状片の検査と診断と治療
翼状片は徐々にしか進行しませんが、症状に気付いたら眼科の専門医の診察を受けます。
医師は、細隙(さいげき)灯顕微鏡による検査で容易に診断できます。
翼状片自体は悪性の組織ではなく、症状がなければ放置しても問題はありませんが、充血や異物感が強い場合は、点眼薬などによる治療を行います。点眼薬治療で翼状片が退縮することはなく、進行すれば手術をして切除する以外に治療法はありません。
異物感やごろつくといった自覚症状がある場合、数カ月間点眼薬治療で様子をみても充血が減少しない場合、翼状片の角膜中央への進行によって角膜の乱視が生じた場合が、手術の対象となります。
黒目の表面を覆う角膜の周囲から中央までの中間点に、翼状片の先端が近付いた時期が、手術には適しています。翼状片の先端が角膜の中央の瞳孔(どうこう)付近にまで及ぶと、手術してもよい視力が得られないことがあるためです。
手術では、局所麻酔をして、角膜に侵入した翼状片組織とその根元の結膜自体を切除します。この時、角膜自体も表層が混濁しているため、薄く切除する必要があります。手術時間はおよそ20分程度で、入院の必要はありません。
問題は、手術後再発するケースが少なからずあること。翼状片は結膜の下の線維芽細胞が増えすぎたために起こる疾患ですから、翼状片組織を手術で切除しただけでは、時間がたつと線維芽細胞が再び増殖する可能性が高くなります。翼状片組織をを単純に切除しただけでは、再発率は3割から5割までに及び、多くは手術後3カ月以内に再発します。
そのため、翼状片組織を切除だけでなく、再発を予防する方法が必要となってきます。再発を少なくするため、マイトマイシンという一種の抗がん剤を用いることもあります。手術中に3分間、マイトマイシンを点眼し、後はきれいに洗い流します。再発率は確実に減少するものの、角膜や、目の外側を覆っている白色の膜である強膜に対する毒性に気を付けなければなりません。
再発を少なくするため、放射線を用いることもあります。がんの治療に用いられている放射線を手術に応用し、翼状片組織の切除後に線維芽細胞が増えすぎないように、放射線を照射します。
現在のところ、マイトマイシンを用いても、放射線を用いても再発率をゼロにすることはできません。特に、年齢が50歳以下のケースでは、再発率が高いため、注意が必要です。
また、手術方法自体もいろいろ工夫されています。主として結膜を切除した欠損部に、ほかの場所の健常な結膜を移植する結膜弁移植、自己結膜移植などといわれる方法ですが、こちらも再発率はゼロには至っていません。
手術翌日、眼科で手術した部位をチェックしますので、外来を受診します。手術後は、感染、炎症を抑えるために点眼剤、眼軟こう、内服剤を使います。手術後に痛みが出る場合には、鎮痛剤を内服します。手術に用いる糸は自然に溶けていくものが用いられていますが、必要に応じてある程度の時期で抜糸します。
偽翼状片の治療は、翼状片に準じて行われます。
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