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慢性副睾丸炎

睾丸に付着している副睾丸に、慢性的な炎症が生じている疾患

慢性副睾丸(こうがん)炎とは、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている睾丸の上面、および後面に付着している副睾丸に、慢性的な炎症が生じている疾患。慢性精巣上体炎とも呼ばれます。

副睾丸、すなわち精巣上体は、精巣から出た精子を運ぶ精管が睾丸、すなわち精巣のすぐ近くで膨れている部分に相当します。精管はこの副睾丸から、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺につながり、そこで分泌された精液と一緒になって尿道に出ていくのが、射精です。

慢性副睾丸炎は、副睾丸に急性の炎症が起こった急性副睾丸炎の局所症状が完全に消えないで慢性症に移る場合が多いのですが、初めから慢性あるいは潜行性に起こることもあります。また、外傷が誘因となって起こることもあります。さらに、結核菌による炎症など特殊な菌による感染で、炎症が長引く場合もあります。

尿道炎や前立腺炎を起こした時に、大腸菌などの一般細菌や、クラミジア、淋菌(りんきん)などの性感染症菌が尿道や前立腺から副睾丸に逆流し、炎症を起こすのが急性精巣上体炎であり、この治療が不十分であると、細菌が副睾丸の中にこもってしまい、慢性副睾丸炎を生じると考えられます。

結核性の場合は、肺結核から尿に結核菌の感染が移行して引き起こされます。尿路性器結核の部分現象として発症するので、睾丸を除く前性器が侵されていることが多く、尿路結核を合併することがしばしばあります。20〜30歳代に多い疾患です。

慢性副睾丸炎では、全身症状は乏しく、陰嚢内の違和感や不快感、鈍い痛みが長期に渡って続きます。陰嚢に触ると、副睾丸に硬いしこりを感じます。発熱、急激なはれ、激しい痛みなどは伴いません。結核性の場合も、副睾丸が数珠状に硬くはれ、鈍い痛みが続きます。

慢性副睾丸炎の検査と診断と治療

激しい症状がないので放置してしまう場合もみられますすが、徐々に悪化してしまったり、他の疾患が見付かったりすることもありますので、泌尿器科の専門医を受診します。

医師の側はまず、尿中の白血球や細菌の検査をします。しかし、慢性副睾丸炎では細菌を検出することが難しい場合も多く、原因菌の特定ができないことがあります。細菌が検出されない場合は、結核性を疑って特殊な検査で尿中の結核菌の有無を調べますが、結核菌が検出されずに、手術で副睾丸を摘出した結果、結核感染が証明されることもあります。

また、慢性前立腺炎などの慢性尿路感染や、前立腺肥大症などの他の疾患を合併している場合もあるので、腎臓(じんぞう)、膀胱(ぼうこう)、前立腺など他の尿路に異常がないかどうか検査します。

治療においては、抗生剤の投与では効果が得られない場合が多いため、消炎鎮痛剤などの痛みと炎症を抑える薬を長期間投与します。不快な痛みが続く場合は、副睾丸を摘出することもあります。

結核性の場合は、他の尿路にも結核菌の感染を起こしている可能性があり、結核菌が臓器の奥深くに潜んでいることも多いので、半年以上の長期間、抗結核剤を投与します。イソニアジド(イスコチン)とリファンピシン(リファジン)に、ストレプトマイシンまたはエサンブトールを組み合わせた治療が標準的です。

それでも改善しなければ、副睾丸だけを摘出する手術、あるいは睾丸を含めて精管、精嚢(せいのう)、前立腺まで摘出する根治手術を行うこともあります。

後遺症として、副睾丸部の精子通過障害をもたらすことがあります。睾丸にも炎症が波及し、両側性であれば男性不妊につながることもあります。

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