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末端肥大症
骨の発育が止まった後に、脳下垂体から成長ホルモンが過剰分泌されて起こる疾患
末端肥大症とは、脳下垂体から成長ホルモンが過剰に分泌されるために起こる疾患。先端巨大症とも呼ばれます。
この末端肥大症は、骨の末端部分の骨端線が閉鎖して骨の発育が止まった後、すなわち思春期が終了した後に起こります。一方、骨端線が閉鎖する前の発育期に、脳下垂体から成長ホルモンが過剰に分泌されると、巨人症が起こります。末端肥大症、巨人症とも大部分は、脳下垂体に腫瘍(しゅよう)ができ、そこから成長ホルモンが過剰に分泌された場合に起こります。
脳下垂体に成長ホルモンを作る腫瘍が生じる原因ははっきりわかってはいませんが、もともと成長ホルモンを作っている細胞が腫瘍化して、成長ホルモンを過剰に産生、分泌するようになるとの考えがあります。膵臓(すいぞう)や肺に、まれに発生する特定の腫瘍でもホルモンが産生され、脳下垂体を刺激して過剰な成長ホルモンが作られこともあります。
末端肥大症は多くの場合、骨の発育が止まって長い年月が経過した30〜50歳で発症します。発症すると、手足が大きくなり、特有な顔や体形を示します。普通、少しずつ変化が生じるために、自分や周囲の人が気付くころにはかなり進んでいることも多いようです。
手足が大きくなるために、より大きいサイズの指輪、手袋、靴、帽子が必要になります。あごの骨の成長過剰で、あごが突き出ます。声帯の軟骨が厚くなるため声は太く、かすれます。肋骨(ろっこつ)が肥厚すると、樽(たる)のように胸板が厚くなります。関節の痛みがあり、長年経過してから体が不自由になる変形性関節炎になることがあります。
舌は肥大して、溝ができます。体毛は硬く濃くなり、皮膚の肥厚で増加します。皮膚の皮脂腺(せん)と汗腺は肥大し、大量の発汗と不快な体臭を発します。心臓が肥大し、機能が著しく損なわれると心不全を起こすことがあります。時には、肥大した組織が神経を圧迫し、腕や脚に不快な感触や脱力感を覚えます。目から脳へ情報を伝える神経も圧迫されることがあり、視覚、特に視野の外側が損なわれます。脳が圧迫されると、ひどい頭痛が生じることがあります。
そのほか、性機能の低下、女性の場合は無月経などの症状を生じることもあります。また、糖尿病や高血圧症で治療中の人の中に発見されることもあります。
末端肥大症では腸のポリープ、悪性腫瘍、糖尿病、心血管系の合併症が多くみられ、そのまま放置しておくことは危険なので、早期に治療が必要です。 内科ないし内分泌科の専門医の診察を受けて下さい。
末端肥大症の検査と診断と治療
医師による診断は、症状、血中ホルモンの測定、および画像検査により行われます。検査では、まず血中の成長ホルモンを測ります。ブドウ糖液を飲んで、血中の成長ホルモンを測定する検査も行われます。血中の成長ホルモンは正常者ではブドウ糖により低下しますが、末端肥大症では低下が認められません。また、血中の成長ホルモンは分泌が不規則なために、最近は、成長ホルモンにより作られるインスリン様成長因子(IGF―I)というホルモンの信頼性が高いといわれており、診断のために測定されています。
画像検査として、X線写真で骨や軟部組織の肥厚の評価をし、MRIやCTで脳下垂体の腫瘍を見付けることも重要です。
医師による治療は、第一に手術が考慮されます。鼻腔(びくう)から脳下垂体と接している骨を削り、脳下垂体の腫瘍を摘出する方法が一般的に行われています。腫瘍が小さいと完治させることも可能ですが、大きい場合や周囲に広がっている場合は、完全に取り除くことは難しくなります。
その場合は、放射線や薬による追加治療が行われます。コバルトやリニアックを照射する放射線治療では、効果が出るまでに数年かかり、ほかの脳下垂体ホルモンの分泌が低下することがあります。
薬による治療でも、時にはブロモクリプチンなどのドーパミン作用薬が有効で、錠剤を服用することで成長ホルモンの量を減らせます。最も有効なのは、成長ホルモンの産生と分泌を正常に遮断するソマトスタチン系のホルモンの皮下注射です。注射薬にはオクトレオチドや、持続型インスリンアナログもあり、1カ月に1回程度の投与ですみます。これらの薬で治癒するわけではありませんが、使用し続けている限り、多くの人で末端肥大症を制御する効果があります。
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