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百日ぜき
百日ぜきとは、急性の呼吸器系の感染症で、百日ぜき菌の感染によって起こります。乳幼児の病気というイメージがありますが、最近の日本では、乳幼児の感染が年々減っているのに、大人の感染は増加傾向にあり、全体の4割近くを占めています。大人の感染者には、20〜40代の人が多くみられます。
その病名が示すように、独特のせき発作が長期にわたって持続するのが、百日ぜきの特徴です。通常、感染後7〜16日間の潜伏期間を経て、せきや鼻水などの普通の風邪症状で始まります。やがて、せきの回数が増えて程度も激しくなります。典型的なせき発作では、5〜15回かそれ以上の回数の連続したせきが出て、その後に長くて高い音のする深い吸気があります。発作の後は、呼吸は正常に戻りますが、その後すぐに新たなせき発作が始まります。
多くの場合、熱はないのですが、途切れなく続く、短い連続的なせき込みによる嘔吐(おうと)やチアノーゼ、顔面の浮腫(ふしゅ)、結膜充血などが見られます。せき発作は夜間のほうが起こりやすいため、不眠の原因になることもあります。
この百日ぜきには予防接種(ワクチン)があり、近年では、百日ぜき、破傷風、ジフテリアの3種が一緒になった三種混合ワクチンとして接種されます。しかし、ワクチンの効果は一生続くわけではなく、次第に低下していくので、子供のころにワクチン接種を受けたのに、大人になってかかる人が出てくるわけです。
もっとも大人では、せきは長期間続くものの、典型的なせき発作は見られず、やがて回復します。しかし、せきだけなので、百日ぜきと分からないままにしていると、ワクチン未接種の乳幼児に移す可能性があり注意が必要です。
2歳未満の乳幼児の場合、最も症状が重くなります。病気は約6週間続き、軽いかぜのような症状の時期、重いせきの発作が起こる時期、そして徐々に回復する時期の3段階で進行します。
乳児では、息苦しさと呼吸の一時的な停止が起こり、皮膚が青くなることがあります。約4分の1は肺炎を発症し、呼吸困難に陥ります。百日ぜきの結果として、中耳炎もしばしば発症します。まれに、乳児の脳に影響を与えることもあります。脳の出血、腫(は)れ、炎症などにより、けいれん、錯乱、脳の損傷、精神遅滞などが生じます。
百日ぜきに対する治療では、エリスロマイシン、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬が使われます。これらは、特に早期のうちに使うと有効です。周囲の人への感染を防ぎ、せきを早く治すためにも、しつこいせきがなかなか取れないようなら、早めの受診が勧められます。
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