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変形性肘関節症

肘の関節内の軟骨が擦り減ったり、骨の変形が生じたりして、痛みが起こる疾患

変形性肘(ちゅう)関節症とは、長年の使用や肘(ひじ)に繰り返される過度の負担によって、肘の関節内の軟骨が擦り減ったり、骨の変形が生じたりする疾患。

肘の関節は上腕骨と橈(とう)骨と尺(しゃく)骨という3骨の間に生じた複関節であり、その周りは靭帯(じんたい)や腱(けん)などによって支えられています。関節を形成している骨の先端は、関節軟骨に覆われており、骨にかかる衝撃を和らげるクッションのような役割を果たしています。

変形性肘関節症を発症すると、肘の関節の軟骨部分が擦り減って、肘に変形や痛みなどが起こってきます。

中には、骨折、脱臼(だっきゅう)などの外傷後や血友病、先天異常などに伴って起こるものもありますが、ほとんどは、肘の長年にわたる使いすぎが原因で起こります。そのため、変形性肘関節症は中高年に多く、しかもその大半が大工などの仕事や、野球などの激しいスポーツで、肘を酷使し続けてきた人たちに起こります。

左右両方の肘の関節に起こることもありますが、一般には利き腕側の肘に発症することが多いようです。

肘の酷使によって、骨の軟骨部分が擦り減ると、硬い骨同士が直接接触することになり、関節の安定性が悪くなります。さらに、骨と骨とが擦れ合うため、骨の端には骨棘(こっきょく)という骨のとげができてきます。また、骨の一部がはがれ、その欠けらが関節遊離体(関節ねずみ)となって、関節内を移動する場合もあります。こうした骨棘や関節遊離体が、肘の関節の障害を引き起こす原因になります。

変形性肘関節症を発症すると、関節の変形に伴って、肘の痛みが、徐々に現れてきます。しかし、肘の関節には体重があまりかからないため、肘を使わなければ痛むことはあまりなく、主に仕事やスポーツなどで肘を使った後に痛みが起こります。

放置していると、肘の関節の変形が進み、肘を十分に曲げ伸ばしすることが難しくなってきます。そのため、洗顔や食事、衣服の着脱などの日常生活に支障を来すようになります。

また、肘の変形や骨棘、関節遊離体などによって、肘の内側の皮膚表面近くを通る尺骨神経が障害される肘部管(ちゅうぶかん)症候群が引き起こされる場合もあります。

肘部管症候群を併発すると、小指と小指側の薬指半分がしびれたり、触った感じが鈍くなったりし、それに引き続いて、手の筋肉の委縮や握力の低下などが起こってきます。こうした指のしびれや手の筋肉の委縮によって、異常に気が付く場合もあります。

肘の関節に痛みがあり、反対側の肘と比べて動きが悪く日常生活に支障がある場合や、手にしびれがある場合には、変形性肘関節症の可能性もあるため、整形外科を受診することが勧められます。

変形性肘関節症の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、肘の動きや痛みの部位の診察と、X線(レントゲン)検査を行います。X線検査では、ひじを前後方向と側方向から撮影し、関節軟骨の擦り減り、骨棘、関節内遊離体がないかなどを調べます。骨棘、関節内遊離体の位置、大きさなどを把握するには、CT(コンピューター断層撮影)検査が有用です。

また、手や指を筆や針で刺激して感覚障害の有無を調べ、肘部管症候群を鑑別します。握力測定を行って握力が低下していれば、肘部管症候群を起こしている可能性が高くなります。

整形外科の医師による治療では、まずは痛みに対して安静、ホットパックや電気治療などの理学療法、湿布や痛み止めの内服薬を用いた保存的治療を行います。

関節の動きが悪く、肘を曲げて口に手が届かない、トイレの始末ができないなど日常生活での支障がある場合には、直視下での切開または関節鏡を用いて、関節の動きをじゃましている関節内の骨棘、関節内遊離体の切除を行う関節形成術を行います。

変形と痛みが強い場合には、人工関節で関節を置き換える手術も行います。 神経の症状がある場合には、尺骨神経への圧迫を取り除く手術を行います。

手術後は、無理をすると再び変形性肘関節症が進行し出す場合もあるので、肘を酷使しないようにすることが大切です。また、肘の関節にかかる負担を軽くするために、事前に医師と相談の上、腕の筋力アップを図ったり、肘の動きをよくするための運動を積極的に行うことも大切です。

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