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母趾種子骨炎

第一中足骨の骨頭下部にある種子骨の周囲に炎症が起き、足の親指の裏側に痛みが生じる疾患

母趾種子骨(ぼししゅしこつ)炎とは、足の甲にある第一中足(ちゅうそく)骨の骨頭下部にある種子骨の周囲に炎症が起き、足の親指の裏側に痛みが生じる疾患。種子骨炎とも呼ばれます。

種子骨は、足や手の関節の付近の靱帯(じんたい)や腱(けん)の中にあるアサガオの種のような形の小さい骨。隣接の骨とともに関節を構成し、滑車のような役目をして靱帯や腱の滑りを助けたり、これらが骨の面から脱臼(だっきゅう)するのを防いでいます。人体では、足の裏に2~5個、手のひらに5個の種子骨があります。

足の裏の第一中足骨の骨頭下部にある種子骨は、内側と外側に1個ずつあります。内側の骨は脛側(けいそく)種子骨、外側の骨は腓側(ひそく)種子骨に相当し、靱帯や腱の滑りを助けたり、足の裏に体重の負荷がかかる時にクッションの役割を果たしていますが、そのいずれかに圧力がかかることで炎症が生じ、痛みが生じます。

母趾種子骨炎の症状としては、軽いうちは長く歩いた時、ハイヒールなど特定の靴を履いた時に、足裏の親指の付け根の部分が痛みます。重症になると、常に痛くなります。

触ってみると、5ミリから10ミリの種子骨が皮膚の下に触れ、痛みます。時に炎症のために軽度の熱感を生じたり、内側に広がる発赤を引き起こすことがあり、はれることもあります。たこや魚の目が足裏にできることもあり、この場合、たこや魚の目を削っても一時的になくなるだけで再発します。

足の親指の付け根が外側を向き、親指の骨頭が内側に向いた状態になる外反母趾のために、母趾種子骨炎を起こすことが最も多くみられます。また、足裏に過度の負荷がかかるランナーやダンサー、サッカー選手、ハイヒールをよく履く人に多く起こっている傾向があります。靴を変えた際に今まで以上に足に負荷がかかって起こったり、直接的な外傷、骨折などで種子骨の位置が変化して起こることもあります。

 生まれ付き内側と外側の種子骨の大きさに違いがあったり、種子骨が分裂していることもあり、これらの場合には片方の種子骨に体重が集中して起こることもあります。

母趾種子骨炎の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、症状や問診で母趾種子骨炎と確定できます。足部と足の親指を背屈させた状態で中足骨骨頭部を調べ、種子骨を触診することもあります。圧痛は、種子骨、それも通常は脛側種子骨に限局化されます。

炎症によりはれを生じている場合、痛風や感染性関節炎と区別するために関節穿刺(せんし)を行うこともあります。

骨折、変形性関節症、骨折による転位が疑われる場合は、X線(レントゲン)検査を行い、種子骨の形状や位置関係、分裂の有無などを確認します。X線検査ではっきりしない場合は、MRI検査を行うこともあります。

整形外科の医師による治療では、痛みを生じる靴やスポーツシューズを単に履かないことを勧め、それで十分であることもあります。痛みが持続する場合には、厚底の靴や矯正装具を処方し、種子骨への圧迫を減らします。炎症がみられる場合は、治療には保存的な処置に加えて、コルチコステロイド(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)麻酔薬の局所注射を行うと、症状の軽減に有効です。

転位のない骨折がある場合、保存療法で十分であり、平らな硬性矯正靴を用いて関節を固定化することもあります。歩けないほど強い痛みが持続する場合、種子骨を取り除く手術が有効であることもありますが、足部の生体力学や歩行運動を侵害する可能性があるため、医師により意見の分かれるところです。一般的には、運動選手やプロ・ダンサーなどに対して、保存療法ではよくならない時だけ手術を行います。

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