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鳩胸
胸板が前方に突出し、あたかも鳩の前胸部を思わせるような胸郭の変形
鳩胸(はとむね)とは、いわゆる胸板に当たる前胸壁が前方に突出し、あたかも鳩の前胸部を思わせるような胸郭の変形。鳩胸と逆に、前胸壁が陥没し、あたかも漏斗(ろうと)のような外観を示す胸郭の変形は、漏斗胸といいます。
漏斗胸と鳩胸の比率はおよそ10対1で、漏斗胸は数百人に1人、鳩胸は数千人に1人の頻度で発生します。鳩胸の男女比は男性が女性の約5倍です。漏斗胸と鳩胸が同一家系にともに発症することが多く、何らかの遺伝的素因が考えられます。
鳩胸は誕生した時にはほとんど気付かれず、多くは3歳ころと10歳ころに気付かれます。前胸部の変形以外に、自覚症状はあまりありませんし、心臓や肺などに障害は起こりません。
前胸部の左右に12本ある肋骨(ろっこつ)と、胸の真ん中に縦に長く触れる胸骨をつなぐ肋軟骨という部分が、生まれ付き異常に前方に長くなっていて変形が起こる先天性のものと、くる病、マルファン症候群、骨形成不全症など骨の発育障害を起こす疾患に伴って現れるものとがあります。
また、前胸壁の変形の形で、3つに分けられています。
第1型は、胸部の下のほうが最も突出していて、巨人が胸骨の下端をわしづかみにして引き出したような形をしています。この形が最も一般的で、鳩胸の67パーセントを占めます。
第2型は、胸部の上のほうが突出しています。比較的まれで、鳩胸の約5パーセントにみられるにすぎません。
第3型は、非対称性の鳩胸で、片側の前胸壁が突出しています。この形は、鳩胸の約28パーセントを占めます。
生まれ付きのもので、軽度であれば、発育とともに目立たなくなります。一般に無症状のことが多いのですが、変形を矯正する手術後に体の調子がよくなって、初めて手術前の症状に気付くこともあります。高齢者になると、肺の組織が破壊されて機能低下を起こし、呼吸困難を生じる肺気腫(はいきしゅ)になりやすいともいわれています。
特別な症状がなく気にならなければ、治療の必要はありませんが、前胸部に突出した変形が気になれば、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、美容外科の医師を受診することが勧められます。
鳩胸の検査と診断と治療
小児科、小児外科、整形外科、形成外科、美容外科の医師による診断は、その特異な胸郭の変形から容易ですが、胸の変形の程度を調べるためにX線検査、CT検査などを行うことがあります。
小児科、小児外科などの医師による治療は、新生児、乳児期の鳩胸の場合、胸の変形は時に自然治癒することがあるとされているため、ほとんどは経過観察します。
前胸部に突出した変形が気になれば、3歳以降に手術を行います。手術をするかしないかは、胸の変形の程度、精神的障害の程度などを総合的に判断して、主治医、発症者本人、家族と相談の上、決定することになります。手術の時期は、骨が軟らかい小学校低学年前後が最適とされています。
手術法では、変形している肋軟骨を軟骨膜を残して切除して、軟骨膜を短縮し、胸骨の修正を行って固定します。この方法は、胸に残る傷跡も少なく、よく変形が矯正されて、正常に近い胸郭となることから多用されています。手術法は、鳩胸変形の第1型〜第3型により多少修正を要します。
手術直後の合併症は、無気肺や肺炎が考えられますが、その頻度は少ないです。鳩胸の発症は3歳ころと10歳ころの2つのピークがあり、発症後2年間は変形が進行するので、2年以上待機してから手術を行えば再発することはほとんどありません。まれに再突出が生じた場合は、程度により再手術が必要となります。
くる病が原因であれば、ビタミンDなどの薬を服用します。くる病が治れば、胸の変形もよくなります。普通、手術は行いません。
手術後数カ月は、激しい運動はできません。肋骨、肋軟骨、胸骨という胸郭を作る構造が固く安定するには、数カ月を必要とするからです。日常生活では、しばらくうつぶせで寝られないということのみで、生活をそれほど制限されることはありません。
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