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不応性貧血(骨髄異形成症候群)

赤血球などの血球減少に加えて、血球形態の異形成がみられる疾患

不応性貧血とは、骨髄の中の造血幹細胞に異常が生じて、十分な量の血球を作ることができなくなるために血球減少を起こす疾患。難治性で予後が悪いのが特徴で、日本では難病に指定されています。

赤血球、白血球、血小板といった血球は、造血幹細胞から作られています。血球の寿命は短いため、骨髄の中では生涯に渡って大量の血球が作り続けられていますが、何らかの理由で十分に血球が作られなくなると血球減少を起こす結果、赤血球減少による貧血、白血球の一つである好中球減少、血小板減少などの症状が現れます。

異常が生じた造血幹細胞から作られた血球は、形態も異常となります。このように、造血幹細胞に内在する異常の結果、血球形態にも異常を生じることを異形成と呼びます。最近では、血球形態の異形成と血球減少を認める疾患群ということから、骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplastic syndrome)という名称が一般的に用いられています。

成人から高齢者に発症しますが、近年では男性の高齢者に多く発症しています。日本全国の患者数は9000人と推定され、特に70歳代がピークになっています。しかし、欧米に比べると日本を含むアジアでは、40〜50歳代での発症者が多いことが知られています。

この不応性貧血を起こす環境因子や遺伝背景はわかっていませんが、年齢とともに発症率が高まることと、抗がん剤や放射線治療を受けた人で発症率が高まることから、自然界を含む放射能被曝(ひばく)、化学薬物や天然の発がん物質への暴露との関連が示唆されています。老化現象や有害物質により、造血幹細胞の遺伝子損傷が起こり、修復できないまま損傷が蓄積されていった結果、異常な造血幹細胞が生まれ、不応性貧血を発症するのでないかと考えられています。

症状としては、血球減少による貧血症状、つまり、顔色不良、息切れ、動悸(どうき)、全身倦怠(けんたい)感、脱力感、易疲労感がみられます。高度の白血球減少が起これば、細菌やかびなどの病原体に対する抵抗力が低下し、肺炎、腸炎、さらには敗血症といった感染症を起こします。血小板が減少すると、ささいなことで出血しやすくなり、軽度の打撲で大きなあざを作る、抜歯後や歯磨き後の歯肉出血が止まりにくい、鼻出血を繰り返すといった症状がみられます。外傷や感染症を契機として、頭の中や胃腸などに重大な出血を起こすこともあります。

また、機能が異常な白血球が作られることで、原因のわからない熱が続いたり、関節がはれたり、広い範囲に皮疹(ひしん)が出ることもあります。約半数の発症者は5年以内に、急性骨髄性白血病になるといわれています。

症状の進行に個人差が大きいことが特徴の一つですが、一般的には症状がゆっくりと進行するために、貧血を自覚することがあまりありません。多くの場合、検診などで貧血と診断されたり、白血球減少による感染症や、血小板減少による出血症状を切っ掛けに、不応性貧血であることが判明します。

不応性貧血、骨髄異形成症候群の治療法としては、発症者の年齢が若くて、HLA(ヒト白血球抗原)が一致する骨髄提供者があれば、骨髄移植が行われます。骨髄移植は治癒の可能性が最も高い治療法の一つですが、肉体的に負担が掛かるため高齢者には実施できません。

最近では、免疫抑制療法も効果があることがわかっており、抗リンパ球グロブリン(ATG)の内服で60パーセント、シクロスポリン(CSA)の内服で80パーセントの発症者が改善するようになってきました。

ほかに行われる治療法としては、赤血球の産生を促進するエリスロポエチン、顆粒(かりゅう)球増加因子を用いるサイトカイン療法、蛋白(たんぱく)同化ホルモンによる造血刺激療法、ビタミンDやビタミンKによる分化誘導療法、化学療法などが行われています。これらの治療法に伴って、赤血球輸血や抗生物質、血小板輸血などの対症療法も多く行われています。

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