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ビタミンD

腸からのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素

ビタミンDとは、抗くる病因子として鱈(たら)の肝油中から発見された脂溶性ビタミン。カルシウムやリンが腸から吸収されるのを助け、骨や歯の発育を促す働きがあります。

ビタミンDを細かく分けると、D2~D7まで6種類あります。そのうち、D4~D7は食品に含まれる量はほとんどなく、ビタミンとしての働きも低いため、通常ビタミンDというと、D2とD3のことを指します。ちなみに、ビタミンD1はビタミンD2を主成分とする混合物に対して誤って与えられた名称であるため、現在は使われていません。

ビタミンD2はキノコなどに含まれ、物質名はエルゴカルシフェロール。ビタミンD3は動物性食品に含まれ、物質名はコレカルシフェロール。どちらも、体内では同様の作用を持ちます。

ビタミンDは腸で吸収されると、まず肝臓に集められ、その後、腎臓(じんぞう)に運ばれます。肝臓と腎臓では、それぞれ酵素の働きを受けて、活性型ビタミンDと呼ばれるビタミンになります。この活性型ビタミンDに変わって初めて、ビタミンDが働きをするようになります。もし肝臓や腎臓に障害がある場合は、たとえビタミンDを適量を摂取しても、結果的にはビタミンD不足と同じことになります。

その活性型ビタミンDには、カルシウムやリン、ナトリウム、カリウムなどのミネラルの吸収を助け、血液中のカルシウム濃度を一定に維持する働きがあります。

体内にあるカルシウムの約99パーセントは骨に蓄えられていますが、残りの1パーセントは血液中や細胞に一定の濃度で存在しています。カルシウムは筋肉を収縮したり、神経伝達など非常に大切な働きをしていて、この働きを支えるためには、血液中のカルシウム濃度を一定にしておく必要があります。もし、カルシウムの濃度が極端に変わってしまうと、人間が生きていく上での基本的な機能が失われます。

このため、血液中のカルシウム濃度が高くなると、ビタミンDとホルモンが共同で、余分なカルシウムを骨に蓄えたり体外に排出します。逆に、カルシウム濃度が低くなると、骨からカルシウムを血液中に送り出し、濃度を一定にするように働きます。

また、食事から摂取されるカルシウムが少ない場合は、尿に含まれるカルシウムを再吸収することも行われますが、このカルシウムの再吸収を促す働きもビタミンDにあります。

カルシウムは骨や歯の材料となるミネラルであり、ビタミンDが十分に摂取されても、カルシウムが不足すれば健康な骨や歯が作られないことになります。つまり、ビタミンDとカルシウムは、ワンセットで骨や歯を丈夫で健康的な状態に保っています。

ビタミンDは食品から取るほかに、日光浴によって体内で作られることが知られています。日光浴で皮膚に紫外線を浴びることで、皮膚にあるプロビタミンD2(エルゴステロール)とプロビタミンD3(7ーデヒドロコレステロール)という物質が、体内でビタミンD2とビタミンD3に変わって肝臓に蓄えられます。

当然ながら、あまり真っ黒に日焼けすると、ビタミンDの合成が悪くなり、肌の老化や皮膚がんになることもあるので、適度な日光浴がよいでしょう。また、日光浴は毎日続けることができませんし、体内で合成される量も限られるので、バランスのよい食事でビタミンDの摂取を心掛ける必要があります。

ビタミンDが不足して起こる欠乏症には、くる病、骨軟化症、骨粗鬆(こつそしょう)症などがあります。くる病は乳幼児がかかる病気で、足の骨、胸骨、肋(ろっ)骨、頭蓋(ずがい)骨など、あらゆる骨が曲がり、エナメル質が失われた歯はぼろぼろになります。症状が重くなると、筋肉の張りがなくなり、思うように手足を動かすことができなくなります。

骨軟化症は大人のくる病ともいわれ、骨が軟らかくなって変形し、やがては脊髄(せきずい)も曲がります。骨粗鬆症は高齢者、閉経後の女性に多い病気で、骨の密度が非常に低くなるため、骨が衝撃に非常に弱く、つまずいて軽く転んだだけで、骨折することも珍しくありません。

逆に、ビタミンDを長期間に渡って過剰摂取すると、血液中のカルシウム濃度が上昇して、血管の内壁や心臓、肺、胃、腎臓などの内臓にカルシウムが沈着しやすくなります。特に問題になるのが腎臓にカルシウムが大量に沈着した場合で、尿毒症を起こして体調が悪化し、ひどい時は命にかかわる状態になります。尿毒症以外にも、便秘、下痢、食欲不振、嘔吐(おうと)などの症状が、出てくることもあります。

ビタミンDが多く含まれる食品は、魚肉、レバー、バター、卵黄、干ししいたけ、生しいたけ、きくらげ、まいたけなどで、肉類や野菜には多く含まれていません。ビタミンDはカルシウムとともに骨や歯を形成するので、カルシウムを含む食品と一緒に取ると効果的。

厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準2010年版」では、ビタミンDの目安量は1日当たり成人男女ともに5・5μg(マイクログラム)で、上限量は50μgとしています。保健機能食品制度では、ビタミンDを1日摂取量当たり1・5~5μg含む食品には、その機能を表示することができます。

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