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ビタミンA

夜間の視力の維持、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素

ビタミンAとは、視力低下や夜盲症を予防することで知られるビタミン。物質名はレチノールです。

ビタミンAは大きく分けて、緑黄色野菜などに含まれるβ(ベータ)カロテンと、動物のレバーなどに含まれるレチノールの2種類があります。

また、ビタミンAにはA1とA2がありますが、必要な栄養素として取り上げられるビタミンAといえば一般的にA1のことを指し、βカロテンもレチノールもビタミンA1の仲間です。ビタミンA2のほうは、アユやフナなどの淡水魚の肝臓に含まれています。

βカロテンは、緑黄色野菜に多く含まれる栄養素のため、別名、植物性ビタミンAとも呼ばれています。栄養素としてはビタミンAなのに、βカロテンという名前が付いているのは、野菜に含まれている時はビタミンAの構造になっておらず、腸で消化吸収される時にビタミンAに変わるためです。具体的には、βカロテンが吸収される時に2つに分かれ、ビタミンAの分子になります。これによって、体に吸収されやすくなります。

野菜をたくさん食べるとビタミンやミネラルが摂取できて体にいいというイメージがあるものの、野菜に含まれているβカロテンには吸収率が悪いというデメリットがあります。レバーなどに含まれるビタミンAであるレチノールの吸収率が80~90パーセントほどであるのに対して、βカロテンの吸収率は通常10~30パーセントしかありません。βカロテンは、肉野菜炒(いた)めやほうれん草のバター炒めなどで油と一緒に取ると、吸収率がアップすることが知られています。

なお、カロテンには、βカロテンの他にもα(アルファ)やγ(ガンマ)などのカロテンもあるものの、食品に含まれている大部分がβカロテンです。栄養素の成分表で、βカロテンの数値だけが掲載されているのは、このためです。

レチノールは、主に動物のレバーやうなぎの蒲(かば)焼きなどに多く含まれるビタミンAです。非常に吸収されやすいという特徴があり、手っ取り早くビタミンAを取りたい際は、動物性の食品がお勧めです。その反面、多く取りすぎると吐き気やめまい、頭痛を始め、食欲不振、倦怠(けんたい)感、肌荒れ、睡眠障害、脱毛などの過剰摂取の症状が出てきますので、気を付けたいもの。このレチノールは、小腸から吸収されると直接肝臓まで運ばれて、そこで蓄えられ仕組みになっています。

ビタミンAの機能としては、目の機能を保つ働きがよく知られています。人間が物を見る時は、目から入った光を網膜で感じ、その刺激を脳に伝えることによって、何を見ているのかがわかります。ビタミンAは、網膜で光を感じる物質であるロドプシンを作る時に必要になります。もしビタミンAが欠乏してロドプシンが不足してくると、夕方から夜の暗がりでは物がよく見えない夜盲症になる恐れがあります。

ビタミンAの機能としては、体の粘膜や皮膚を健康的に保つ働きもよく知られています。特に、粘膜や皮膚の上皮細胞の代謝を活発にして、病原菌などが侵入するのを防ぐ免疫機能の作用をしています。上皮細胞とは、皮膚を始めとして口、のど、鼻、胃、腸などの粘膜の表面にある細胞のことで、体の外と直接触れている部分です。

ビタミンAを食事やサプリメントから、十分に取っている場合は、肌のハリやツヤもよく、ウイルスや細菌を跳ね返す抵抗力があります。もしビタミンAが欠乏してくると、肌の荒れやかさつきが気になるだけでなく、風邪を引きやすくなったり、口内炎などを起こす可能性が高くなります。

ビタミンAの機能として、最近では、がんを予防する作用も注目されています。ある調査では、ビタミンAが欠乏している人は十分に取っている人に比べ、5~7倍の確率で肺がんになっているという報告が出ています。植物性ビタミンAであるβカロテンは、レチノールと違って大量に摂取しても過剰症がほとんどないので、がんの抑制によく利用されています。

また、がんの抑制だけでなく、高い抗酸化作用があり、活性酸素による細胞へのダメージの抑制や、老化防止の作用も、確かめられています。

ビタミンAが不足して起こる欠乏症には、夜盲症などの目の障害、皮膚の異常、成長期の子供での成長障害、知能障害などがあります。体の抵抗力が奪われ、感染症にかかりやすくなったりもします。

βカロテンが多い食品としては、にんじんを筆頭に、モロヘイヤ、西洋かぼちゃ、春菊、ほうれん草、小松菜、チンゲンサイ、ニラ、アシタバ、シソ、サツマイモなどが挙げられます。レチノールが多い食品としては、鶏レバー、豚レバー、あんこうの肝、うなぎの蒲焼きなどが挙げられます。

厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準2010年版」では、ビタミンAの推奨量は1日当たり成人男性は800~850μgRE(レチノール当量)、成人女性は650~700μgRE、上限量は成人男女とも3000μgREとしています。

また、保健機能食品制度では、ビタミンAを1日摂取量当たり135~600μgRE含む食品には、その機能を表示することができます。

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