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フグ中毒
フグの臓器に含まれる毒素によって起こる食中毒
フグ中毒とは、海産魚のフグの臓器、ことに卵巣、肝臓に含まれる毒によって引き起こされる食中毒。他の食中毒に比べて、患者数のうちの死者数の割合を示す致死率が極めて高いのが特徴です。
日本ではここ10年間の統計上、年間33〜61人のフグ中毒患者と1〜6人の死亡者がみられます。その多くが、フグ調理の資格を持たない一般人がフグを調理した結果起きています。しかし、フグ中毒に対する知識が高まったため、発生件数は減少傾向を示しています。
地域的には、近畿、中国、九州などの西日本、特に兵庫、大阪、広島、山口、岡山、愛媛など瀬戸内海沿岸の府県で多発しているのが特徴で、神奈川県でやや多い程度で他の東日本ではまれです。季節的には、冷凍フグの流通のために年間を通して食べられるようになっているものの、フグは鍋(なべ)を中心とする冬の季節料理であるために、冬期に多発しています。
フグ毒はテトロドトキシンと呼ばれ、神経刺激の伝導を遮断する作用を持っており、熱に強く、アルカリに弱いという性質があります。テトロドトキシンは、フグの卵巣、肝臓、腸管などに多く含まれていますが、毒フグの種類によって含有量の多少があります。
日本で最もよく食用にされるフグはトラフグで、そのほかマフグ、ヒガンフグ、ショウサイフグなどもありますが、ショウサイフグ以外はいずれも有毒なフグ。
フグ中毒は、食後20〜30分、遅くても4時間くらいで発症します。吐き気、嘔吐(おうと)に続いて、唇、舌のしびれ感が起こり、上肢、下肢の知覚まひ、さらに運動まひ、発声困難、呼吸困難を起こします。血圧が低下し、意識が混濁し、重症例では4時間くらいで呼吸停止を起こし死亡します。
なお、フグを食べた時に口の中がピリピリとしびれたりしたら、フグ毒の作用と考えられので口中を洗うなどの応急処置をすることが大切です。
フグ中毒の検査と診断と治療
フグの毒に対して、解毒剤や血清など特異療法は開発されておらず、神経毒であるテトロドトキシンによる呼吸困難が収まるまで人工呼吸器をつなげることが唯一の治療法となります。テトロドトキシンの解毒、排泄(はいせつ)に要する時間は8〜9時間とされており、その間呼吸を保てば、大部分は救命できます。
とりあえずの救急処置としては、テトロドトキシンがアルカリに弱いことを利用して、アルカリ製剤である炭酸水素ナトリウム(重曹)で胃洗浄を行ったり、活性炭末などの吸着剤の投与や、下剤、利尿剤の投与をしたりします。輸液も行われますが、心臓への負担に注意しなければなりません。
治療で最も重要なことは呼吸の管理なので、高濃度の酸素を用いた気管内チューブによる人工呼吸や、呼吸中枢刺激剤も積極的に使用されます。そのほか、血圧を上げる昇圧剤や強心剤なども対症的に投与されます。
フグ中毒の予防法は、死亡事故のほとんが素人料理によって発生しているため、釣ったフグを自分で調理して食べるのをやめることに尽きます。 フグには種類鑑別の難しさや毒カの季節による変動、個体差などがあり、食用にするためには専門的な知識と技術が必要です。一般に、テトロドトキシンの毒力は猛毒の青酸カリの約1000倍で、100℃30分以上の加熱でもほとんど分解しないので、煮たり焼いたりの調理ではなくなりません。
特に、卵巣、肝臓などの内臓は、フグの種類にかかわらず決して食べてはいけません。一般消費者に販売されているフグでは、保健所に届出をした施設で卵巣や肝臓などの有毒部位を除去する処理が行われています。フグを取り扱う営業をするには、フグ処理者の資格を持ち、営業施設ごとに保健所長への届出が必要となっています。
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