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肺動脈狭窄症
右心室から肺動脈への通路が狭い先天性心臓病
肺動脈狭窄(きょうさく)症とは、右心室から肺動脈へと通じる通路が狭い状態の疾患。比較的多く、先天性心臓病の約10パーセント近くを占めています。
この疾患には、弁性狭窄と漏斗(円錐〔えんすい〕)部狭窄の2種類があります。弁性狭窄は、正常では3つに分かれている肺動脈弁が互いに癒着して、メガホン状に狭くなり十分に開かないもの。漏斗部狭窄は、肺動脈弁の下部の心筋が分厚くなり、右心室の流出路が狭くなっているもの。時には、この2つが合併することもあります。
いずれの場合も、右心室の出口が狭いために、正常よりも高い血圧で血液を送り出さなければならぬ右心室に負担がかかり、右心室は肥大し、肺へと流れる血液量が減少します。軽症の場合には心雑音がある程度でほかの症状がみられませんが、疾患が進行すると右心房圧や静脈圧も上昇し、運動時の息切れ、動悸(どうき)や、むくみが出現します。
乳児の場合には、息切れがして、呼吸数と心拍数が減り、授乳力が低下します。呼吸のたびに首を前後に動かす動作をし、呼吸困難のため泣き声も弱く途切れがちになります。顔色は青白く、よく汗をかき、おなかの上部が膨れて見えることもあります。
狭窄が中等度から高度の場合には、ある年齢になると急に症状が進み、右心室不全を起こしてきます。心房中隔欠損を合併していると、右心房から左心房へ向けて静脈血が流れ込み、チアノーゼが現れます。心臓病で起こるチアノーゼは、血液の酸素不足によるもので、唇や手足の指先、全身の皮膚が紫色になります。重症の場合には、すぐに手術をしないと生命が危険になるため、特に注意が必要です。
肺動脈狭窄症の検査と診断と治療
肺動脈狭窄症の検査としては、心音、心電図、胸部X線、心エコー(心臓超音波)などの検査を行い、診断します。必要があれば、心臓カテーテル検査を行い、内腔(ないくう)の圧測定、心血管造影などで重症度を調べます。
軽度の場合は、治療を必要とせず、経過観察のみでよいこともあります。狭窄が中等度から重度の場合には、狭窄を広げる治療が必要となります。まず、バルーン(風船)つき心臓カテーテルによる弁拡張術が選択されます。右心房、右心室から肺動脈へカテーテルを通して、肺動脈弁の狭い部分でバルーンを広げ、狭い部分を広げるという治療です。
これで十分に弁機能が改善しない時、あるいは狭窄の場所や形態によっては、手術でしか治療できない場合もあります。手術の方法は肺動脈の狭い部分によって異なりますが、人工心肺を使って、肺動脈弁の狭窄部を取り除いて流出路を広くする手術、肺動脈弁の下部の心筋を切除して流出路を広くする手術、人工弁置換術などが行われます。
カテーテルによる治療の場合も、手術による治療の場合も、狭窄が少し残ることがあります。狭窄を完全に解除しようとすると肺動脈弁の逆流が起こってしまうこともあるため、狭窄の軽減と肺動脈弁の逆流の2つを天秤(てんびん)にかけて、治療が行われるためです。
年齢が進むにつれて右心室の負担が増加し、右心室の肥大が強くなって手術の危険性も高くなるので、手術は早い時期に行うことが必要です。生後3カ月未満での手術では生命の危険を伴うことがありますが、生後3カ月を過ぎれば比較的安全です。
肺動脈狭窄症の手術後の予後は、一般的に良好です。多くの場合、ほかの子供たちと同様に生活、活動していけると考えられています。ただし、残存する肺動脈の狭窄の程度によっては、多少の運動制限が必要となる場合もあります。また、乳児期に手術をしても再発することがあるので、小学校入学前に再検査を受ける必要があります。理想は1~2年置きの外来通院を行い、変化がないかどうかを外来で経過観察すること。
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