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乳房切除術

乳房切除術とは、乳がんの治療法として乳房を切除する手術の総称。乳がんの治療法はその進み具合によって、いろいろな方法が選ばれますが、一般的には、まず手術により、乳がんの病変部をできるだけ取り除く治療を行います。

従来は、乳房と胸の筋肉とわきの下のリンパ節をひと塊として、完全に取ってしまうハルステッド法(胸筋合併乳房切除術)という手術が、定型的な乳房切除術として長い間、行われていました。この手術によって、乳がんの治療成績は飛躍的に向上しました。しかし、手術後に腕がむくんで動かしにくくなるなどの障害と、肋骨(ろっこつ)が浮き出て見えたりする美容的な問題が難点でした。

ところが、乳がんも早期発見が多くなったため、このように大きな手術をすることは少なくなりました。現在では、がんが胸の筋肉に深く食い込んでいる場合などごく一部を除いて、ハルステッド法はほとんど行われなくなっています。

代わりに、胸の筋肉は残して、乳房全部とわきの下のリンパ節を取る胸筋温存乳房切除術という手術が行われるようになり、非定型的な乳房切除術とも呼ばれています。

乳房のすぐ下には大胸筋、その下には小胸筋という筋肉がありますが、この胸筋温存乳房切除術にも、大胸筋だけを残す大胸筋温存乳房切除術(ペイティー法)と、両方の筋肉を残して乳房を切除する大小胸筋温存乳房切除術(オーチンクロス法)があります。

リンパ節転移が多い場合などは、リンパ節を確実に切除するために、小胸筋を切除することがありますが、最近は両方の筋肉を残して乳房を切除するケースが多くなっています。腕を動かす時に主に使われる大胸筋を残すだけでも、ハルステッド法に比べればかなり障害は少なくなります 。

肋骨が浮き出て見えたりすることもありませんが、わきの下のリンパ節を切除した場合は、腕のむくみを生じることがあります。腕や肩の運動障害を回復させるために、手術後の十分なリハビリテーションが必要となります。

最近では、早期に発見された乳がんに対しては、乳房の一部とわきの下のリンパ節を切除して、残した乳腺(にゅうせん)に放射線を照射する乳房温存療法も行われています。日本では2003年に、乳房温存療法が乳房切除術を数の上で上回るようになり、標準的な手術法となっています。

乳がんはしこりが小さくても、すでにわきの下のリンパ節に転移していたり、血液の中に入って遠くの臓器に広がっていることもあります。転移の疑いがある場合、術後の再発予防のために抗がん薬やホルモン薬による治療を加えると、再発の危険性が30〜50パーセント減ることがわかってきました。抗がん薬やホルモン薬においても、副作用が少なく、よく効く薬が開発されてきて、再発後の治療にも効果を上げています。

乳がんの治療法に関する考え方は大きく変わり、手術主体の治療法から、化学療法やホルモン療法、放射線照射を組み合わせて、可能な限り手術を縮小する方向で検討されるようになっています。

ただし、手術する範囲を縮小できるかどうかは、病気の程度によって異なります。手術の方法については、担当医から十分に説明を受け、納得された後に決められるのがよいでしょう。

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