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脳ヘルニア
頭蓋内の浮腫や出血により、脳が押し出された状態
脳ヘルニアとは、外傷など何らかの原因によって頭蓋(とうがい)骨の中に浮腫(ふしゅ)や出血などが起き、その部分に圧迫された脳が押し出された状態。ヘルニアとは、体内の臓器などの組織が本来あるべき部位から押し出されることをいいます。
脳は基本的に硬い頭蓋骨にガードされていますから、簡単には押し出されません。この頭蓋骨にガードされているというのが脳ヘルニアの場合とても厄介な問題で、押し込まれても逃げ場がないので、そのまま脳自体に圧力がかかり続けます。これを頭蓋内圧高進といいます。
脳ヘルニアは頭蓋内圧高進の最終段階ともいえるもので、脳の位置がずれるスペースがないのに、圧力が限界まで高まってしまい、いよいよ他の組織を押し込んでずれた状態です。いうまでもなく脳は生命活動をつかさどる部分なので、こうした圧迫はそのまま生命の危険につながります。
脳の圧力が高まる原因としては、頭の強打による外的損傷と疾患による内的損傷が挙げられます。自動車事故、転倒、暴行、スポーツ活動中の事故などで頭を強打した外的損傷の場合、頭蓋骨の中で脳にもダメージがくることがあり、脳がはれたり、脳回りの血管が出血したりすると、次第に脳の圧力は高まり、そのまま放置すると脳ヘルニアを起こします。
疾患によって脳がはれたり、脳内出血などを起こしたりした内的損傷の場合も、外的損傷と同様、脳の圧力が高まっていくことになります。脳内出血そのものがすでに危険であり、ここから頭蓋内圧高進を経て、脳ヘルニアにまで達すると事態は一刻を争うことになります。
脳はすべての感覚を握っているだけに、出血の位置や大きさ、方向などといった要因によって、実にさまざまな症状をみせます。まず脳がずれる前の脳圧が高まっている状態だけでも、激しい痛み、意識障害、判断力の喪失、めまい、吐き気、嘔吐(おうと)、けいれん、まひ、瞳孔(どうこう)が光を追えなくなるなどの症状が現れます。
さらに悪化して、脳がずれる脳ヘルニアになると、大部分は脊髄(せきずい)部分の大孔といわれる部分にずれることになります。大孔だけは脊髄とつながっているので穴があり、押し出された脳は深部にある生命維持中枢である脳幹を圧迫し、自発呼吸困難や脈拍異常などを起こします。さらに悪化すれば、呼吸困難から呼吸停止にまで至り、次いで脈が乱れ、血圧が下がって死に至ります。
脳ヘルニアの検査と診断と治療
頭をぶつけた場合、小さくても出血が起こり、何時間もかけてゆっくり脳ヘルニアにまで進行していく可能性もありますから、多少ぶつけたくらいと安心せず、脳神経外科の専門医を受診して検査を受けます。また、自覚症状である脳の締め付けられるような痛み、吐き気、めまいなどを感じた場合も、やはり受診します。
医師の側は、意識や瞳孔の臨床症状から診断します。原因の診断のために頭部CTは必須で、脳ヘルニアを示すCTの所見として、正常では左右対称の脳の構造が圧迫のためゆがんで見えたり、頭蓋内圧高進のため脳脊髄液が満たされている脳の透き間である脳室や脳槽が圧迫されたり、あるいは消えてなくなったりしています。
脳ヘルニアは、ほかのヘルニアである鼠径ヘルニア(脱腸)、椎間板(ついかんばん)ヘルニアなどと違って、ほかの症状、疾患の最終段階として起きてくるものなので、瞳孔異常の初期症状がみられたら、緊急に適切な治療と手術が必要となります。ほかのヘルニアと違って保存療法はまずありません。手術では、開頭して圧迫の原因となる浮腫、出血などを除くことになります。 脳ヘルニアが進行し、脳幹の機能が失われて呼吸停止に至っている場合などは、手術の危険が高く、開頭手術を行えないこともあります。
浮腫、出血がないか少ない場合は、手術の効果が低いため、薬物療法が選択されることが多くなります。頭蓋内圧高進に対して、グリセオールやマンニトールなどの脳圧降下剤の点滴注射が行われます。特殊な治療法として、バルビツレート療法や低体温療法があるものの、副作用も大きいため適応は慎重に判断されます。頭蓋骨を外す外減圧術が行われることもあります。
予後は原因によりますが、一般的には症状の進行程度と、症状出現からの時間経過に比例して悪くなります。
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