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恥骨疲労骨折

スポーツ活動などで、小さい負荷が繰り返し骨盤に加わった場合に、骨盤の一部である左右2つの恥骨に生じる骨折

恥骨疲労骨折とは、正常な骨に通常は骨折を起こさない程度の負荷が、スポーツ活動などで繰り返し骨盤に加わった場合に、骨盤の一部である左右2つの恥骨に生じる骨折。

骨折は、骨が壊れることを意味し、ヒビも骨折ですし、骨の一部分が欠けたり、へこんだ場合も骨折です。正常な骨では、かなり大きな負荷がかからないと骨折しませんが、正常な骨に小さい負荷がかかる場合でも、同じ部位に繰り返し長期間かかり続けて、骨にヒビが入る微細な骨折を生じたり、ヒビが進んで完全な骨折に至る状態が疲労骨折です。

疲労骨折のほとんどは、スポーツ活動で激しいトレーニングをしている運動部の学生や社会人に生じます。陸上、サッカー、野球、バスケットボールなどあらゆるスポーツ活動で発生する可能性があり、それぞれのスポーツ活動ごとに疲労骨折を生じやすい部位があります。

恥骨に疲労骨折を生じる恥骨疲労骨折の場合は、長時間のランニングを要するマラソン、ジョギング、あるいはダッシュして急に止まりボールを拾うボーラー動作を要するバスケットボール、テニス、ホッケー、ホッケーに似たラクロスなどによって、前面の左右2つの恥骨、左右の腸骨、後面の仙骨で構成されている骨盤に、繰り返しの負荷がかかることにより生じます。

特に女性のマラソンランナーに、恥骨疲労骨折が発生しやすいことが知られています。発生部位は、恥骨の上枝と下枝に大別され、下枝のほうに多くみられます。

長時間のランニングによって、恥骨の上枝には、体幹の支持に必要な腹直筋の収縮によって引っ張り上げる牽引(けんいん)張力が働き、また恥骨下枝には、内ももの筋肉である内転筋の収縮によって太ももを内側に寄せる牽引張力が働き、これらの筋肉による負荷が反復されてかかることにより、恥骨疲労骨折が引き起こされます。

また、女性のマラソンランナーに多い理由として、女性の骨盤が横に幅広く、中心から離れた股(こ)関節に着地刺激を受けやすいためと考えられています。

さらに、恥骨疲労骨折は、骨粗髭(こつそしょう)症などにより骨密度が急激に減少して骨がもろくなった場合や、肥満により過度の体重負荷がかかった場合に、生じやすくなるともいわれています。骨粗鬆症の高齢者などの場合、平地で転んだだけでも生じることがあります。

恥骨疲労骨折を生じると、脚の付け根の鼠径(そけい)部の痛みを主として、太もも前面、殿(でん)部、腰部などに痛みが生じます。スポーツ活動時には股関節内側から内転筋に痛みが生じ、運動を継続していくと歩行困難を来すこともあります。

高齢者の場合、横になっても、座っても、股間にかなりの痛みを感じます。さらに、歩こうとすると痛みの症状は増すのが普通です。

明らかな外傷がなく、恥骨付近に著しい痛みを感じる場合は、恥骨疲労骨折が疑われますので、検査設備の整った整形外科などを受診することが勧められます。

恥骨疲労骨折の検査と診断と治療

整形外科、あるいは形成外科の医師による診断では、骨の痛みがある部位と症状、スポーツ活動の種類などから判断します。

骨折の初期の段階では、X線(レントゲン)検査を行ってもほとんど異常を示さず判断が難しいこともありますが、骨折後2~3週程度で骨膜反応という骨折の修復により異常がわかります。骨シンチグラフィー検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、骨折の初期の段階の病変でも判断することが可能です。

整形外科の医師による治療では、骨折部に負担のかかるスポーツ活動を休止し、必要に応じて固定を行います。一般には、4〜8週間の固定が必要となることが多く、激しい負荷のかかる競技者の場合には、12〜16週間の固定による安静が必要となることもあります。

固定による安静期間の後に、徐々にリハビリを開始します。まずは、日常生活だけのリハビリを行い、続いて、痛みが生じない範囲に制限してスポーツ活動を再開します。疲労骨折の場合、同じ部位が再骨折する可能性が高いため、慎重に運動を再開する必要があります。

再発予防としては、恥骨疲労骨折が発生した要因を検討し、正しいフォームを習得したり、通常のトレーニングが過度にならないようにしたり、運動前後にストレッチを行ったりして、普段からコンディションの調整をすることも大切です。

特に女性では、閉経後には骨密度が急激に減少しますので、骨盤に負担がかかるような運動をする場合には、骨密度も同時に鍛える必要があります。

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