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伝音難聴

音を伝える外耳、中耳、鼓膜の障害による難聴

伝音(でんおん)難聴とは、音を聴神経へ伝える外耳、中耳、鼓膜に障害が生じたために起こる難聴。伝音性難聴とも呼ばれます。

聴力が低下した状態である難聴は、この伝音難聴、感音(かんおん)難聴(感音性難聴)、混合難聴(混合性難聴)の3つに大きく分けられます。

感音難聴は、音を感じる内耳から聴覚中枢路にかけて障害が生じたために起こる難聴。突発性難聴や騒音性難聴の場合も、感音難聴に含まれます。混合難聴は、伝音難聴と感音難聴の両方の特徴を併せ持った難聴。多くの老人性難聴は混合難聴ですが、どちらの度合が強いかは個人差が大きいといえます。

また、難聴の度合は一般的に、平均聴力レベルが20デシベルまでを、ささやき声もよく聞こえる正常聴力として、40デシベルまでを、小声が聞きにくい軽度難聴、70デシベルまでを、普通の声が聞きにくい中度難聴、70デシベル以上を、大きな声でも聞きにくい高度難聴、90デシベル以上を、耳元での大きな声でも聞こえない重度難聴、100デシベル以上を、通常の音は聞こえない聾(ろう)に分けます。

伝音性難聴は、空気の振動として耳に入ってくる音が外耳の一部である外耳道や、外耳と中耳の境目にある鼓膜、中耳内にある耳小骨を震わせて振動を伝えていく部分に、障害が生じたために起こります。音が十分に伝わっていかないため、音が鳴っていること自体を把握することが難しい性質を持っています。

通常、伝音性難聴による聴力の低下は70デシベルを超えることはなく、これだけで高度難聴になることはありません。例えば、耳栓をしても大きな音は聞こえてしまいますし、どんなに耳に蓋(ふた)をしても全く外部の音が聞こえなくなることはありません。

これは通常の外耳から内耳を通じる経路ではなく、大きな音が直接頭蓋骨(ずがいこつ)を振動させることによって、内耳のリンパ液が振動して有毛細胞という感覚細胞が興奮し、音を知覚することになるからです。

中耳炎などを患った場合に、伝音難聴になりやすいことが知られています。原因となる疾患には、急性中耳炎や慢性中耳炎を始めとする各種の中耳炎や、耳垢栓塞(じこうせんそく)、外耳道閉鎖症、耳管狭窄(きょうさく)症、鼓膜裂傷、耳硬化症、耳の腫瘍(しゅよう)などがあります。

伝音難聴は、音を感じる内耳から聴覚中枢路には異常がなく、聞こえのゆがみなどは起こらないため、原因となる疾患に応じた医学的な治療を受けることにより、聴力を回復させることができます。もし回復しない場合でも、耳に入る音を大きくできれば聞こえがよくなるため、補聴器の効果が期待できるタイプの難聴です。

伝音難聴の検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、一般的に鼓膜の観察や聴力検査を行ったり、耳管の通り具合を調べます。例えば、急性中耳炎では、鼓膜を検査し、その色、はれ具合から簡単に診断がつきます。外耳道炎を併発し、外耳道がはれて見えにくい時は、診断がやや難しいことがあります。慢性中耳炎では、鼓膜の穿孔、耳垂れの有無を調べるため、耳垂れの細菌検査、CTを含む耳のX線検査、聴力検査を行います。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、伝音難聴を起こす原因となる疾患に応じた治療を行います。

例えば、急性中耳炎では、全例にアモキシシリンなどの抗生物質による治療を行います。自然に治癒するか、悪化するかどうかを予測するのが、難しいためです。アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬は、痛みを和らげます。フェニレフリンが入ったうっ血除去薬も、効果があります。抗ヒスタミン薬は、アレルギーによる中耳炎の場合は有効ですが、風邪による中耳炎には効果はありません。

痛みや熱が激しかったり、長引く場合、また鼓膜のはれがみられる場合には、鼓膜切開を行って、耳垂れを中耳腔(こう)から排出します。鼓膜を切開しても聴力に影響はなく、切開した穴も普通は自然にふさがります。中耳炎を繰り返し起こす場合は、鼓膜を切開して、耳だれを排出する鼓膜チューブを設置する必要があります。

慢性中耳炎では、抗生物質で炎症を抑え、耳垂れを止めます。しかし、鼓膜の穿孔や破壊された中耳はそのまま残ることが多く、また、真珠腫性中耳炎では普通の治療では治りにくいので、手術が必要です。

 鼓膜の穿孔をふさぎ、疾患で破壊された、音を鼓膜から内耳に伝える働きをする耳小骨をつなぎ直せば、聴力は改善できます。これを鼓室形成術といい、細かい手術のため手術用の顕微鏡を使って行います。

伝音難聴の中でも、特に症状がひどく、補聴器を用いてもほとんど聞こえないような慢性穿孔性中耳炎の場合には、人口中耳と呼ばれる高感度の補聴器を中耳に植え込む手術も開発されています。

伝音難聴は感音難聴に比べると治療による効果が出やすく、補聴器を使用することによって聞き取りやすくなる傾向も持っています。補聴器で音を大きくすることで、かなり聞こえるようにもなるので、補聴器を使用すれば生活しやすくなります。

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