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多発性筋炎
筋肉の障害のために、筋肉に力が入らなくなったり、痛みを感じたりする疾患
多発性筋炎とは、炎症や変性による筋肉の障害のために、筋肉に力が入らなくなったり、筋肉の痛みを感じたりする疾患。また、明らかで特徴的な皮疹(ひしん)がみられる場合には、皮膚筋炎と呼ばれます。
多発性筋炎は膠原(こうげん)病の1つで、筋肉だけでなく、肺、関節、心臓、消化管など、他の臓器障害を合併することもあります。好発年齢は5~14歳の小児期と35~64歳の成人期の2つのピークを示し、成人では1対2で女性に多く、日本の有病率は10万人当たり2~5人。厚生労働省の指定する特定疾患(難病)の1つです。
自己免疫異常、ウイルス感染、悪性腫瘍(しゅよう)、日光暴露、薬剤の影響、遺伝的素因などが発症に関与しているのではないかと考えられていますが、その原因はまだわかっていません。
症状としては、筋肉の障害による筋力低下が大多数の発症者にみられます。さらに、筋肉以外の症状として、皮膚や内臓などの障害が認められることもあります。
筋肉の症状としては、筋肉が障害され、疲れやすくなったり、筋力が低下して力が入らなくなったりします。そのため、腕が上がらなくなったり、階段が上りにくくなったりします。しかし、亜急性ないし慢性に発症し、ゆっくりと経過するため、初めは自覚症状に気付かない場合もあります。
一般に、躯幹(くかん)に近い部分の筋肉である頸部(けいぶ)屈筋、咽頭(いんとう)筋、喉頭(こうとう)筋、肩帯筋、腰帯筋が対称的に障害されます。また、筋肉の痛みが認められることもあります。進行すると全身の筋肉が委縮し、進行性ジストロフィーや重症筋無力症、運動ニューロン疾患と間違えることがあります。
筋肉以外の症状としては、皮膚筋炎では、ヘリオトロープ疹という眼瞼(がんけん)部のはれぼったい紫紅色の皮疹、ゴットロン徴候という手指関節背面の皮がはげた紫紅色の皮疹、肘(ひじ)や膝(ひざ)などの関節背面の少し隆起した紫紅色の皮疹などがみられます。
関節痛や関節炎などリウマチに似た症状、レイノー現象という寒冷時に手指が白くなり、ジンジンしびれたりする症状もみられます。呼吸器症状としては、肺胞と肺胞の間や血管の回りにある間質に炎症が起こる間質性肺炎、空ぜき、息切れ、呼吸困難が起こります。不整脈、心不全なども起こります。
全身症状として、発熱、全身倦怠(けんたい)感、食欲不振、体重減少などを認めることもあります。特に高齢者の皮膚筋炎では、悪性腫瘍が合併していることがあります。
多発性筋炎、皮膚筋炎は筋肉ばかりでなく、他の臓器も障害されることがあり、どの診療科が最適と簡単には決められません。一般に、膠原病、自己免疫疾患の1つとしてリウマチ(膠原病・免疫)内科、筋肉の疾患として神経内科、皮膚症状を中心に皮膚科を受診する発症者が大多数です。障害された臓器を中心に、全身を総合的に診療できる専門医に診てもらうことが重要です。
多発性筋炎の検査と診断と治療
医師による診断は、筋力低下、特徴的な皮膚症状、血清中の筋原性酵素(クレアチンキナーゼ〔CK〕、アルドラーゼ、LDH、AST〔GOT〕、ALT〔GPT〕など)の増加、特徴的な自己抗体の検出、筋電図の特徴的変化、筋肉の一部を採取し顕微鏡で調べる筋生検の特徴的組織所見などの結果を組み合わせて行われます。
全身の倦怠感が認められ、血液検査でLDH、AST、ALTなどが上昇するため、肝炎、肝機能障害と誤って診断されている場合もありますが、筋障害を反映する血清CK値の測定により区別されます。進行性ジストロフィーや重症筋無力症、運動ニューロン疾患などとの区別も大切です。
発症直後の急性期は、できるだけ安静にして筋肉に負担をかけないようにします。筋力の回復、関節の拘縮(こうしゅく)予防のためにリハビリテーションが大切で、一般的には、筋原性酵素(血清CK値)が薬物療法により正常値に低下し、順調な筋力の改善を確認してから、徐々に開始します。食事は高たんぱく、高カロリー食で消化のよいものを取るようにします。
医師による治療は、薬物療法が基本となります。副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)が主に使われ、多くの発症者で有効です。副腎皮質ホルモンは、炎症を抑える作用が強く自己免疫異常も抑えます。
大量ステロイド療法が2~4週間行われ、筋力の回復や検査所見の改善をみながら、数カ月かけて、最少必要量まで減量されます。急速な減量は再発を来すことがあり、望ましくありません。筋力の回復は、発病後の治療開始が早い場合ほどよいとされています。
しかし、副腎皮質ホルモンが無効であったり、その副作用が出てしまう場合には、メトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミドなどの免疫抑制薬が投与されることもあります。また、これらの治療でも効果が得られない時は、ガンマグロブリンの静脈内注射療法が有効なこともありますが、長期の有効性や副作用は不明です。
悪性腫瘍を併発した場合は、腫瘍摘出などの悪性腫瘍の治療により筋炎、皮膚症状が改善することも知られています。
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