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膣がん

膣の入り口の内側に発生する、まれながん

膣(ちつ)がんとは、膣の入り口の内側に発生するがん。膣の入り口の外側に発生すれば、外陰がんとなります。

腟は子宮頸部(けいぶ)と外陰をつなぐ筒状の組織で、長さ10~15 センチ、出産時には産道となります。腟の入り口周囲には腟前庭、その外側には小陰唇、陰核、大陰唇、会陰があり、総称して外陰と呼ばれています。

女性性器がんの中で、膣がんが占める割合は1〜2パーセントと、比較的少ないがんといえます。若い女性には少なく、一般に50〜60歳の女性にみられます。

膣の表面は粘膜で覆われており、この粘膜からがんが発生し、球状または長楕円(だえん)形の潰瘍(かいよう)状の硬い腫瘤(しゅりゅう)を形成します。多くは単独性で、扁平(へんぺい)上皮がんがほとんどです。腺(せん)がんはまれです。

がんが発生しやすいのは後ろ側の膣壁で、上3分の1の、いわゆる下り物がよくたまる部位。進行すると表面を広がったり、粘膜の下の筋肉に広がり、さらには周囲の臓器にまで広がることもあります。

直接、発がんと結び付く原因はまだわかっていませんが、高リスク因子としてヒトパピローマウイルスの感染が挙げられています。ヒトパピローマウイルスは、いぼを作るウイルスの一種で、男性性器の分泌物などに含まれています。このウイルスを持った男性との性交渉によって、膣、外陰、子宮頸部などの細胞に感染します。

最も多い症状は、生理以外や閉経後の不正出血、性交中や性交後の不正出血、血性の下り物です。進行すると、大きくなったがんが膀胱(ぼうこう)や直腸を圧迫するようになって、排尿障害や便秘などが起こり、腰痛や下腹部痛を伴うようにもなります。

膣がんの検査と診断と治療

他のがんと同様に、膣がんも早期発見、早期治療が第一です。自覚症状がある場合は、婦人科の専門医を受診します。比較的少ないがんといえるだけに、産婦人科医でも膣がんの経験がない医師もおり、発見や治療が遅れることがあるとされています。

医師による診断では、まず視診、触診、細胞診を行います。細胞診で異常な細胞が見付かった場合は、組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検で、がん細胞があるか、どのような種類のがん細胞であるかを詳しく調べます。

さらに、がんのできた場所と広がり程度を調べるために、膣の中だけでなく骨盤内の他の臓器についても、診察やCT、MRIなどの検査を行います。肺に転移していないかどうかを調べる胸部レントゲン検査などの検査も行います。

膣がんの治療には、外科療法、放射線療法、化学療法の3つの方法があり、がんの広がり程度である病期、扁平上皮がんないし腺がんの組織型、年齢、全身状態などによって選択します。ごく早期の膣がんに対しては、がんの部位を焼いて蒸散させるレーザー治療を行うこともあります。

外科療法は、がん病巣が膣の表層に限局している場合や、膣の上部3分の1にある場合に限って行われ、手術によってがんを切除します。 膣は、前方には膀胱、後方には直腸、肛門(こうもん)が近接し、側方は足に栄養を送る血管や神経が存在するため、手術が広範囲に及ぶ場合、どの機能をどの程度温存するかが問題となります。

子宮頸部や腟の周囲にがんが広がっている場合には、広汎(こうはん)性子宮全摘出術に加え、腟がんを含めて腟壁の切除を行います。

放射線療法は、高エネルギーX線によってがん細胞を消滅させ、腫瘤を縮小させるもので、単独で行ったり、手術の後の追加治療として行います。照射方法には2種類あり、放射線発生装置を用いて体外から放射線を照射する外照射と、放射線が発生する物質をがんのある部位にプラスチックの筒を通して挿入する膣内照射があります。

放射線療法では、子宮や腟が残せる半面、直腸に穴が開いて、腟から便が漏れる直腸腟ろうなどの障害が残り、人工肛門になることがあります。

化学療法は、経口剤や静脈注射によって抗がん剤を体内に投与するものです。抗がん剤は血流に乗って全身を巡り、膣壁などにあるがん細胞を消滅させるので、全身療法とも呼ばれています。一般的に、シスプラチン、カルボプラチン、タキソール、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ペプレオマイシン、フルオロウラシルなどの抗がん剤を組み合わせて使用します。

化学療法だけでは、完治することは難しいため、外科療法や放射線療法と併用して行われます。

膣がんの予後は一般的に不良で、5年生存率は40~50パーセントという報告が多いのが現状です。近接している直腸や膀胱などの臓器に、がんが広がる傾向が強いためと考えられています。

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