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伝染性膿痂疹
化膿菌がついて全身のどこにでも炎症が起こる皮膚病
伝染性膿痂疹(のうかしん)とは、虫刺されやけがによる傷をかき壊したところに、化膿菌がついて起きる皮膚の炎症。俗に、とびびと呼ばれます。
幼児にできやすい疾患で、全身のどこにでも、水膨れと、かさぶたのついたジクジクしたびらん面ができ、かゆみが強いためにかくと、どんどん広がっていきます。
原因菌は、黄色ブドウ球菌と溶血性連鎖球菌(溶連菌)という二つの菌が主体になります。この化膿菌は、毛包とか汗管を通らないで、直接に表皮角質の間を侵入、感染して、炎症が起こります。
黄色ブドウ球菌の時は大きな水膨れになる水疱(すいほう)性膿痂疹、溶血性連鎖球菌の時は大きな水膨れにならず、かさぶたが厚くつく結痂性膿痂疹に分類されますが、両方の菌が感染していることも多く、はっきりと区別のつけにくいこともあります。
黄色ブドウ球菌は、扁桃(へんとう)炎の原因にもなる菌で、鼻など体のどこにでもいます。この菌が健康な皮膚についても何の症状も起こしませんが、虫刺されやけがでできた傷、あせもやアトピー性皮膚炎などをかいてできた傷などにつくと、そこから感染して化膿します。
最初の症状は、粟(あわ)粒からクルミの実くらいの大きさで、膜の薄く、破れやすい水膨れが多発します。皮膚に赤みがある場合と、赤みがない場合とがあります。水膨れはすぐにつぶれて、かさぶたのついたジクジクしたびらん面になり、その周囲に新たに、小さい水膨れが拡大していきます。びらん面は1週間ほどで治りますが、次々に新しい水膨れができていきます。
かゆみが強いため、そこをかいた手でほかの部分をかくと、手についた菌がついて、全身のどこにでも広がっていきます。本人だけでなく、幼くて皮膚の抵抗力が低い兄弟姉妹など周囲の人にも感染していきます。
季節的には一年中できる可能性はありますが、やはり高温多湿の8月から9月にかけてが最も多くみられます。
まれに、黄色ブドウ球菌の持つ毒素が全身に回って、全身の皮膚が真っ赤になり、やけどのように皮膚がはがれるなどの、激しい症状が出る場合があります。これはSSS症候群(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)と呼ばれ、入院治療が必要になります。
また、生後間もない新生児が伝染性膿痂疹にかかると、敗血症や肺炎などを併発する場合があるので、注意が必要です。
伝染性膿痂疹の検査と診断と治療
伝染性膿痂疹(とびひ)の最中に、幼児の口、目の回り、わきの下、またの付け根などが赤くなり、痛がり、発熱することがあります。これはSSS症候群で、とても危険な状態ですので、すぐに皮膚科を受診します。また、腎(じん)炎を併発することもあるので、顔にむくみが出たら小児科を受診します。
軽い場合は、患部を消毒して、皮膚科で処方された抗生物質の入った軟こうを塗ります。全身に広がっていたり、ジクジクがひどい場合は、さらに抗生物質を内服したり、注射します。抗生物質での治療は、効果が十分に出て化膿菌が完全に死滅するまで時間がかかるため、医師にいわれた期間は必ず続けるけることが必要。途中でやめてしまうと、すぐに再発して、治るまでに時間がかかります。
また、入浴は最低でも1日1回、できれば何回でも、幼児にさせます。伝染性膿痂疹は感染力が強いので、湯船には入れずに、シャワー浴にしたほうが無難です。殺菌効果の高いせっけんを使って、ガーゼでかさぶたや水膨れを取るようにして、よく洗います。洗ったあとは、患部をよく乾燥させてから、消毒し軟こうを塗ります。
兄弟姉妹がいる場合は、タオルの共用は避けます。完治するまでは、プールや大衆浴場へは行かないようにします。
黄色ブドウ球菌は、鼻の中にたくさんいます。鼻水や鼻くそは、ガーゼなどできれいに掃除します。アトピー性皮膚炎を起こす子供の場合は、もともと皮膚のバリア機能が弱くて、ブドウ球菌への抵抗力が備わりにくく、伝染性膿痂疹になりやすい傾向にあります。早めのケアを心掛けます。
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