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虫刺症

虫に皮膚を刺されてできる傷

虫刺(ちゅうし)症とは、虫に皮膚を刺された時にできる傷であり、外傷の一つ。虫刺されとも呼ばれます。

傷は、ハチ、蚊、ノミ、ダニ、ブヨ、アリなどに刺されて、皮膚に注入される虫の唾液腺(だえきせん)物質に対するアレルギー反応です。主に腕や足の外側に多く、引っかき壊して水膨れを作ったり、皮膚がむけたり、出血したり、かさぶたとなります。幼児が主で、春夏に著しく、秋冬にはよくなるのが普通です。

同じ虫刺症といっても、人間を刺す虫の種類は多く、その毒性の強弱、あるいは刺された人の毒物に対する反応の差により、症状が異なります。

◆ハチ◆

一般的には、ハチに刺された場合は、その強い毒性のために、刺された部位が強い痛みとかゆみとともに、大きく赤く膨れ上がり、治るのに数日かかります。特に、ハチの毒液の成分に対し、アレルギーを持っている人は、反応が強いと、血圧低下、呼吸困難などのショック症状を起こすこともあります。反応が異常に強い時は、ショック死することもあります。

しかし、ショックを起こすのはハチだけではなく、蚊でも、その毒液の成分にアレルギーのある人は、ショックを起こすことがありますので、注意が必要です。

◆蚊◆

蚊による虫刺症は、一番ポピュラーなもの。普通は刺されたところが、銅貨大くらいまでに赤くはれ、強いかゆみがありますが、数時間以内に治まります。ただ反応の強い人では、水膨れになったり、数カ月間に渡って硬いしこりが残って、かゆみの非常に強い固定じんましんといわれる皮膚病になることがあります。

国内ではあまりないものの、海外では蚊に刺されてマラリア病やフィラリア症に感染することがありますので、海外旅行をする時は注意が必要です。

◆ノミ◆

ノミもまた、刺す虫の代表的なもの。最近は衛生設備の整備により、人ノミはあまり都会ではみられなくなり、現在よくみられるのは、犬、猫につく犬ノミ、猫ノミの虫刺症です。

このノミは元来、人につくことはないのですが、たまたま地面や畳などに落ちていると、人の足について刺したりします。かゆみの強い、赤いボツボツと水膨れができます。

◆ダニ◆

ダニは非常に種類の多い昆虫ですが、虫刺症と一番関係が深いのは家ダニです。家ダニはネズミに寄生していて、ネズミがいなくなると人を刺します。

最近は家屋が密閉されたために、昔ほどネズミはみられなくなり、家ダニの被害も減っているものの、食品を扱っている店などでは、ネズミも多く、そのネズミの移動によって被害に遭うことがあります。

野鳥に寄生しているトリサシダニ類は、鳥が巣を捨てると人を刺します。畳やカーペットの下に巣くうコナダニ類では、ツメダニが人を刺すことがあります。

これらの非常に小さくて、肉眼ではなかなか見付けにくいダニ類は、皮膚の軟らかいところを好んで刺しますので、軟らかい部分に赤いボツボツがあれば、ダニの虫刺症も考えられます。

山や草原を歩いている時に、体長1~2センチのマダニに刺されることがあります。激しい痛みと赤いはれを起こします。しかも、虫体が皮膚の中に深く食い込んでいて、一度刺されるとなかなか引き離すことができません。手術的に周囲の皮膚と一緒に虫を切り取るか、1~2週間放置して、虫が満腹になり、自然に離れるのを待つしか手はないようです。

日本海側の河川領域のネズミに寄生するダニ類のアカツツガムシ、全国の山林にいるネズミに寄生するフトゲツツガムシ、タテツツガムシによる虫刺症により、ツツガムシ病を起こすこともあります。発病すると、高熱とリンパ腺のはれと同時に、全身に淡紅色から淡紫紅色の大小の紅斑(こうはん)が生じます。刺された部位の中央に、かさぶたのついた大豆(だいず)より大きな潰瘍(かいよう)を持つしこりができるのが、ツツガムシ病の特徴です。

◆南京虫◆

南京虫(トコジラミ)は、家屋の透き間や、織物、紙の間などに潜んでいて、夜間に活動して人を刺します。刺されると、強いかゆみと痛みがあり、やや大きな赤いしこりがたくさんできます。

都会では、南京虫による虫刺症はあまりみることがなくなっているものの、織物や紙を扱う職業の人は刺されることが多いようです。また、家具について移動するため、新築の家でも油断することはできません。

虫刺症の検査と診断と治療

虫刺症(虫刺され)の治療には、抗ヒスタミン剤含有軟こうを塗布します。炎症症状の強い時は、短期間のステロイド外用剤の塗布が有効です。特に、テープ状のものを発疹(はっしん)の大きさに切って張り付けるのが、効果的です。

しかし、慢性の硬い結節ではなかなか治りません。これにはステロイドの注射薬を少量ずつ、一つ一つの結節に直接注射する方法もあります。引っかくのが疾患を悪化させ、長引かせるもとですから、かゆみ止めの飲み薬も必要な場合があります。

ハチの場合は、刺された直後には、毒を中和する意味でアンモニア水の塗布が有効です。刺されて時間がたち、赤く膨れ上がっている時には、ステロイド外用剤の塗布、あるいは短期間のステロイド剤の内服を行います。

虫刺症の予防法は、虫に刺されないように注意すればすむことです。蚊に刺されそうな場所に出掛ける時には、市販されている虫よけの外用剤を使います。

家庭における予防法としては、生活環境からのノミ、ダニなどの駆虫が第一で、まず家の大掃除をして、畳、カーペットは直接日に干し、さらに駆虫剤を散布します。部屋は風通しをよくして、湿気を払います。飼っている犬、猫の虫退治、家の中や周囲にいるネズミの退治、鳥の巣の取り除きも行います。

かいてあまり傷にならないように、週2回はつめを切る、寝る時に手袋をするなどの工夫も必要です。

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