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膝蓋骨脱臼

膝の皿に相当する膝蓋骨が、膝蓋大腿関節から外れる障害

膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)とは、膝(ひざ)の皿に相当する膝蓋骨が、膝蓋骨と大腿(だいたい)骨からなる膝蓋大腿関節から外れる障害。

膝蓋骨の脱臼方向により、側方脱臼(外側脱臼と内側脱臼)、垂直脱臼、水平脱臼、回転脱臼に分類され、膝蓋骨周囲の形態や構造の関係から、側方脱臼のうちの外側脱臼が多くみられます。また、障害の程度により、完全脱臼と不完全脱臼(亜脱臼)に分類されます。

通常、膝蓋大腿関節を構成する膝蓋骨と大腿骨の関節面はうまくかみ合うようにできていますが、膝蓋骨が本来あるべき部位からずれ、骨同士の関節面が正しい位置関係を失う脱臼が起こると、骨の骨折、軟骨の変形、靱帯(じんたい)などの軟部組織の損傷を伴うケースがあります。

交通事故などによる膝前面の打撲時に、過度の外力が直接膝蓋骨に働いて膝蓋骨の脱臼が起こるほか、スポーツ外傷としてもしばしば膝蓋骨の脱臼がみられ、サッカー、バスケットボール、バレーボール、ラグビー、体操、スキー、ランニングなどで好発します。

サッカーやバスケットボール、ラグビーで方向転換をしようとしたり、膝の外側に対戦相手の体が当たったりした場合に、膝蓋骨が外側へ外れることがあります。バスケットボールのシュートや、バレーボールのアタック、体操の跳び箱、スーキーのジャンプの着地時に、膝蓋骨が外れることもあります。スキーの滑降で転んだ際に、膝蓋骨に強い衝撃を受けて外れることもあります。長距離ランニングや、スキーの長距離滑走などで膝を酷使した時に、膝蓋骨が外れることもあります。

膝蓋骨や大腿骨の形に異常がみられたり、太ももの筋肉である大腿四頭筋の作用する方向と膝蓋靭帯の方向が異なっているなど、生まれ付きの素因を持っている場合は、膝蓋骨を脱臼しやすくなります。ほかに、全身の関節弛緩(しかん)性、X脚、扁平足(へんぺいそく)、膝蓋骨高位、小さい膝蓋骨なども、膝蓋骨脱臼の誘引となります。

とりわけ、思春期の女性では、女性ホルモンの関係で軟部組織が弛緩する傾向にあるために、関節が緩くなり、膝蓋骨を脱臼しやすくなります。また、思春期に膝蓋骨脱臼を起こした女性は、その後も繰り返し脱臼を来す反復性脱臼を起こすことが多い傾向にあります。

膝蓋骨の脱臼を起こすと、膝の周囲、特に外側を中心に痛みを感じ、膝の皿の違和感、はれ、こわばりが現れます。軽症の場合は、自然に脱臼が整復されることも少なくありません。

強い外力によって脱臼を起こした場合は、歩行障害、膝の可動制限が現れます。

脱臼を繰り返す反復性脱臼を起こすようになると、痛みやはれなどは少なくなり、膝が大きく動くよう不安定感を覚えます。この反復性脱臼から、習慣性脱臼や、膝蓋軟骨軟化症、変形性膝関節症に移行することもあります。

膝蓋骨脱臼の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、問診、視診、触診で、膝蓋骨周囲の痛み、膝蓋骨を指で押した時の圧痛、膝蓋骨の動きの違和感、膝蓋骨の位置のずれなどがみられるかどうか確認します。

より詳細な確認が必要な場合は、X線(レントゲン)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、あるいは関節鏡検査などを行い、撮影画像などから障害の程度、骨折や骨の変形の有無を確認して確定します。

完全脱臼では、膝蓋骨が大腿関節面の外側などにずれている撮影画像が見られ、亜脱臼では、ずれが完全でなく大腿骨外側などに引っ掛かったり変位している撮影画像が見られます。

強い外力によって脱臼を起こし、骨軟骨骨折があった場合は、骨片の存在が認められます。また、関節内血腫(けっしゅ)の存在、膝蓋大腿関節面の適合性不良も、撮影画像から確認できます。

整形外科の医師による治療では、徒手整復や関節内血腫の除去を行った後、ギプスやサポーターで膝を固定する装具療法、消炎鎮痛剤の塗布・投与やヒアルロン酸の注射などで炎症や痛みを抑える薬物療法、筋力トレーニングやストレッチによって膝の筋肉の緊張をほぐし強化も図る運動療法などを、症状に応じて組み合わせて行います。

装具による固定は、約3週間は行います。スポーツ復帰は、膝の痛み、はれ、可動制限が消失し、筋力も回復してからで、通常は2カ月以上かかります。早期のスポーツ復帰は、慢性的な関節の緩みを引き起こし、再発を招きやすいので、避けるべきす。

反復性脱臼と強い痛みの症状が保存療法で改善しない場合は、手術を行います。手術は、内側の関節包を縫縮し外側の関節包を切開する外側解離術、内側広筋前進術・内側縫縮術、脛骨(けいこつ)粗面内側移行術、内側膝蓋大腿靱帯再建術などを関節鏡下で行います。

手術を行った場合は、手術の方法にもよりますが、スポーツ復帰は3~6カ月はかかります。

予防としては、太ももの筋肉である大腿四頭筋を始めとした膝周囲の筋力トレーニングが有効で、治療にも有効です。特に、内側広筋という太ももの内側の筋肉の強化が有効で、内側広筋は膝蓋骨が外側に引っ張られないように抑え、内側へ引き戻す役目を持つためです。

X脚、扁平足など、膝蓋骨脱臼を誘発する要因を持っている場合は、その矯正が有効です。

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