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歯性上顎洞炎
歯に感染している細菌が近接している上顎洞に入り込んで、うみがたまる疾患
歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)とは、虫歯、歯周炎(歯槽膿漏〔しそうのうろう〕)の原因となっている細菌が、鼻の両横に位置する副鼻腔(ふくびこう)の1つである上顎洞に入り込んで、炎症を起こす疾患。
元来、上顎洞は上あごの歯と近接しており、硬い物をかむことが減った現代人では、歯の根が上顎洞に突き出ている人も多くなっています。そのため、虫歯、歯周炎を長い間治療せずに放置していると、細菌が上顎洞に入り込んで炎症を起こし、歯性上顎洞炎になることがあります。
原因となる細菌は、黄色ブドウ球菌が最も多く、連鎖球菌、紡錘菌、大腸菌、肺炎菌、口腔スピロヘータなどでも起こります。上あごの歯では、第一大臼歯(きゅうし)が最も原因になりやすく、次いで第二小臼歯、第二大臼歯の順です。従って、これらの歯が虫歯の時には、歯性上顎洞炎に注意する必要があります。
急性に起こる場合と、慢性に起こる場合があります。急性の場合には、歯の痛み、歯茎のはれに続いて片側の鼻が詰まり、突然、悪臭が強く、うみを含んだ鼻汁が出ます。片側の目の下の部分の拍動性の痛み、はれや、ほおの部分の痛み、はれが現れたり、頭痛、発熱、倦怠(けんたい)感などの全身症状が現れることもあります。
慢性の場合には、歯の痛みは比較的少なく、明確な症状に欠けることも多く、片側の鼻詰まり、軽度の頭痛、頭重感などが生じることがあります。
片側だけの鼻の詰まりが続き、上あごの奥歯に痛みを感じるようであれば、歯性上顎洞炎の可能性があります。
歯科での虫歯、歯周病の治療と、耳鼻咽喉(いんこう)科での上顎洞炎の治療が必要で、歯科と耳鼻咽喉科の両方がある病院などを受診することが勧められます。
歯性上顎洞炎の検査と診断と治療
歯科、耳鼻咽喉科の医師による診断では、上あごの歯、特に第一大臼歯、第二小臼歯、第二大臼歯に虫歯があり、その歯を軽くたたくと痛みや違和感がある場合に疑います。鼻の中に、うみを含んだ鼻汁が認められ、X線(レントゲン)検査で上顎洞に陰影があれば、ほぼ確定できます。
原因となっている歯を特定し、感染源となり得る小さな病巣を見付けるためには、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。原因歯は1本でなく、2~3本あることもあります。
歯科、耳鼻咽喉科の医師による治療では、急性に炎症が起こった場合、原因歯を抜歯するとともに、鼻の入り口近くから針を刺して上顎洞を生理食塩水で洗浄して、うみを洗い流し、抗菌剤の投与を行います。抜歯した部位に穴が開き、口の中と上顎洞がつながってしまうことがあり、手術で閉鎖しなければならないこともあります。
慢性に炎症が起こった場合は、歯の根や歯周組織の治療で感染源の除去を行い、改善を図ります。改善できなければ、原因歯を抜歯するとともに、上顎洞を生理食塩水で繰り返し洗浄して、うみを洗い流し、抗菌剤の投与を行います。
抜歯で改善できなければ、内視鏡下に鼻腔と上顎洞をつないでいる自然の穴を大きく広げ、中のうみを除く手術を行い、抗菌剤の投与を行います。
炎症が上顎洞に広がり、抗生剤を投与してもうみが止まらなければ、口の中から上顎洞に向けて骨に穴を開け、骨内部の空洞内面を覆っている粘膜部分を取り除く根治手術が行われることもあります。この根治手術は5~10年後に、術後性上顎嚢胞(のうほう)という疾患が起きてしまうことがあるため、近年は以前ほど行われなくなっています。
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