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赤血球尿
腎臓や尿路などからの出血のために、尿中に赤血球が混入している状態
赤血球尿とは、腎臓(じんぞう)や尿路などからの出血のために、尿中に赤血球が混入している状態。血尿とも呼ばれます。
赤血球尿の中には、目で見て明らかに赤い尿が出る肉眼的赤血球尿と、目で見てもわからないけれども顕微鏡で見ると尿の中に赤血球が存在する顕微鏡的赤血球尿との2つがあります。正常の人では尿中に赤血球が混入することはなく、尿を遠心分離器にかけた際に、尿中に含まれる固形物が沈殿して底にたまる尿沈渣(ちんさ)を顕微鏡で調べ、一視野に4個以上の赤血球を認めた場合が、顕微鏡的赤血球尿に相当します。
女性生殖器からの出血のために、尿中に血液が混入しているものは、赤血球尿とは呼びません。
尿は腎臓で作られ、尿管を通って膀胱(ぼうこう)に至り、一度貯留された後、尿道から排出されます。従って、この経路のどこかに腫瘍(しゅよう)、結石、炎症などが存在し出血していると、赤血球尿を生じます。男性の場合は、生殖器である前立腺(ぜんりつせん)や精巣(睾丸〔こうがん〕)と泌尿器がつながっているため、前立腺からの出血でも赤血球尿を生じることがあります。
高齢者で赤血球尿をみた時に、最も注意しなければいけない疾患は、悪性腫瘍、すなわちがんです。赤血球尿を来すがんは、腎臓がん、腎盂(じんう)がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がんなどです。そのほか、尿路系臓器の周囲の臓器からのがんが浸潤し、赤血球尿を生ずることもあります。例えば、大腸がん、子宮がんの転移が、それに当たります。
がんによる赤血球尿は通常、肉眼的赤血球尿なので、気付いたらすぐに検査を受ける必要があります。顕微鏡的赤血球尿でも、まれにがんによって起こされることがあります。腎臓がんでは背部痛を生じることもありますが、無症状のことも多く、肉眼的赤血球尿があった時には他の症状がなくても検査を受ける必要があります。
赤血球尿を生ずる疾患としては、結石もあります。腎臓で作られた尿の最初の通路である腎盂の中で形成された結石が、尿管の細い部分に詰まると、痛みと赤血球尿を生じます。尿管には、腎盂と尿管の移行部、総腸骨動脈圧迫部、尿管と膀胱の移行部という3つの狭窄(きょうさく)部があり、そこに結石が詰まりやすくなっています。狭窄部に詰まっていない状態では、痛みもなく赤血球尿もほとんど認めません。
尿管、膀胱でも結石ができることがあり、特に感染、異物の存在などが結石の核となるとされています。
膀胱炎もしばしば赤血球尿の原因となり、急性膀胱炎の場合は通常、排尿時痛、頻尿、白血球が混入した膿尿(のうにょう)を伴います。慢性膀胱炎の場合には、赤血球尿と膿尿だけで、痛みや頻尿の症状は比較的軽く、ほとんど自覚しないこともあります。
尿路系臓器の炎症では、細菌がついて起こる前立腺炎、腎盂腎炎、尿道炎も、赤血球尿の原因となります。高齢者になってから発症することは少ない疾患で赤血球尿を生じるものに、慢性糸球体腎炎(特にIgA腎症)、急性糸球体腎炎、多発性嚢胞(のうほう)腎、腎結核などが挙げられます。青年期からの無症候性赤血球尿としては、遊走腎、薬剤性赤血球尿などがあります。
赤血球尿の発症者の約10人に1人は原因を特定できないことがあり、特発性赤血球尿といいます。また、健常者でも激しい運動後、一時的に赤血球尿を認めることがあります。いずれにおいても赤血球尿が認められた時は、泌尿器科、ないし腎臓内科の医師の診断を受け、定期的に経過観察することが必要です。
赤血球尿の検査と診断と治療
泌尿器科、腎臓内科の医師による診断では、症状および各種検査を総合し、赤血球尿の原因を確定します。
赤血球尿に排尿時痛を伴う時は、膀胱炎、膀胱結石を疑います。赤血球尿に腹痛、背部痛を伴う時は、腎結石、尿路結石を疑います。赤血球尿に浮腫(ふしゅ)、高血圧などを伴う時は、腎糸球体病変を疑います。
肉眼的赤血球尿の場合、ある期間持続すると貧血が進行する恐れがあり、早急に精密検査を行います。尿の通過経路である腎臓、尿管、膀胱などに赤血球尿の原因となり得る腫瘍、結石などの病変はないかを調べます。腹部超音波、腎盂尿管膀胱撮影、静脈性尿路造影などを行い、異常所見を検索します。特に中高年の場合は悪性疾患を疑い、尿中に混入している異常細胞を調べる尿細胞診を繰り返し行うことがあります。
無症候性の顕微鏡的赤血球尿を各種の健康診断で指摘されている場合、尿沈渣を行い、赤血球円柱、赤血球の変形などがあれば、腎糸球体疾患を疑います。IgA腎症、急性糸球体腎炎などが考えられ、診断のため血液検査を行います。尿沈渣に異常がみられない場合、尿管、膀胱などの下部尿路系の病変を考え、肉眼的赤血球尿の時と同様に腹部超音波、腎盂尿管膀胱撮影、静脈性尿路造影などを行います。
そのほかの尿所見で、白血球の混入が認められれば膀胱炎、腎盂腎炎などの感染症、異型細胞が認められればがんを疑います。
泌尿器科、腎臓内科の医師による治療では、赤血球尿そのものより、赤血球尿の原因となる疾患の治療、経過観察を重視します。
がんの治療では、三大治療と呼ばれる外科療法、放射線療法、化学療法の3つを駆使し、状況に合わせて組み合わせた集学的治療を行います。腎臓がん、膀胱がんの早期には手術を行いますが、転移がひどい場合や年齢的に手術不可能の場合は、インターフェロン療法などの化学療法を行います。
尿路結石では、痛みや繰り返す膀胱炎、腎盂腎炎などの症状がなければ、尿とともに自然に出てくるまで経過観察で様子をみることもあります。症状がある場合や大きな結石の場合は、結石に超音波などの物理的エネルギーを加え、そのエネルギーで結石を粉砕し、体外に出す破砕療法や、手術によって除去します。
膀胱炎、腎盂腎炎などの感染症では、感染している細菌に有効な抗生物質、抗菌剤を投与します。効果は比較的早い段階で現れます。どこで炎症を起こしているかにもよりますが、水分の摂取を多くして尿量を増やし、細菌を洗い流すほか、尿の刺激性を低下させて症状を和らげます。症状の強い際は、十分な休息、睡眠を確保するようにします。
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