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耳性帯状疱疹
耳を中心に起こった帯状疱疹で、耳介や外耳道に痛み、水膨れが出現
耳性帯状疱疹(じせいたいじょうほうしん)とは、耳を中心に起こった帯状疱疹。耳(みみ)ヘルペスとも呼ばれます。
ヘルペスウイルス属の1つである水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスに乳幼児期に初感染すると、水ぼうそう(水痘)になります。全身に次々と小さな水膨れが現れ、かゆみ、発熱を伴います。水膨れは胸の辺りや顔に多くみられるほか、頭髪部や外陰部、口の中の粘膜など、全身の至る所にみられます。水膨れの数が少なく軽症な場合には、熱も38~39℃くらいで3~4日で解熱します。重症の場合には、39℃前後の熱が1週間ほど続くこともあります。
また、かゆみを伴うために引っかいてしまうと、細菌の二次感染を起こす危険性があります。水膨れが乾燥し、かさぶたになってから、2週間くらいでかさぶたはとれます。少し跡が残ることがあります。
乳幼児期に一度かかると免疫ができるため、この水ぼうそうに再びかかることはほとんどありません。しかし、水ぼうそうの原因である水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうが治った後も体のいろいろな神経節に潜伏しています。そして、数十年後に、疲れがたまったり、体の抵抗力が落ちたりするなど、何らかの切っ掛けにより、潜んでいたウイルスが再び暴れ出すと症状が現れます。
この場合、水ぼうそうのように全身に水膨れが現れることはなく、神経に沿って帯状に水膨れが現れる帯状疱疹として発症します。体のどこにでも帯状疱疹の症状は現れますが、胸から背中にかけてが一番多く、顔や手足、腹や尻(しり)の下などに現れることもあり、耳を中心に起こった帯状疱疹が耳性帯状疱疹に相当します。
耳性帯状疱疹を発症すると、発熱、寒けなどとともに、外に張り出している片側の耳介や、耳の穴から鼓膜まで続く外耳道に激しい痛みが現れ、数日の内に小さな水膨れができます。軟口蓋(なんこうがい)や舌など、口の中にも発生することがあります。また、顔面神経まひを伴うこともあります。
顔面神経まひのほかに、感音難聴、耳鳴り、めまいなどの内耳障害を伴うものをラムゼー・ハント症候群(ハント症候群)といいます。これは、顔面神経の膝(しつ)神経節という場所に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化し、顔面神経やその周辺の聴神経に感染して起こるものです。
片側の耳に痛みや水膨れができ、片側の顔の動きが悪いことに気付いた時には、早期に耳鼻咽喉(いんこう)科の医師の診察を受けることが勧められます。
耳性帯状疱疹の検査と診断と治療
耳鼻咽喉科の医師による診断では、耳や口の中などの視診により帯状疱疹の有無を調べます。水膨れ中か唾液(だえき)中の水痘・帯状疱疹ウイルスのDNAを検出するのが最も確実な診断法で、中の抗水痘帯状疱疹ウイルスIgM抗体価の上昇を確認するのも、診断の助けになります。
顔面神経まひがあれば、筋電図検査、神経興奮性検査を行って、まひの程度、顔面神経の障害部位を診断します。難聴、めまいがあれば、聴力検査、平衡機能検査、脳神経検査など通常の耳科的検査も実施し、他の脳神経に異常がないかどうかを調べます。
耳鼻咽喉科の医師による治療では、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因であることがはっきりすれば、アシクロビル製剤、バラシクロビル製剤などの抗ウイルス薬を注射します。発症から約3~4日以内に投与すれば回復が早いとされています。
これに加え、神経周辺の炎症を抑制する副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の注射か内服、ビタミンB12剤、代謝を活性化するATP剤、鎮痛薬の内服、病変部への軟こうの塗布(とふ)などを行うこともあります。
顔面神経まひには、顔面マッサージが行われます。これらの治療を行っても、顔面神経まひが治らず、発症者が希望した場合は、顔面神経減荷術という手術が行われ、まひが回復することもあります。
後遺症として、耳介や外耳道の水膨れが治った後も長期間にわたって、痛みが続く帯状疱疹後神経痛が起こることは、胸部に起こる帯状疱疹に比べて少ないといえます。
なお、水痘・帯状疱疹ヘルペスウイルスは体内の神経節に潜み、体力や抵抗力が低下した時に増殖し、発症する特徴があるので、再発を防ぐ上でも疲労、ストレス、睡眠不足を避け、免疫力を維持しておくことも大切です。
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