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ゾリンジャー・エリソン症候群

膵臓に発生した細胞の腫瘍が大量のホルモンを分泌し、胃酸過多を引き起こす疾患

ゾリンジャー・エリソン症候群とは、膵臓(すいぞう)に発生した細胞の腫瘍(しゅよう)であるガストリノーマが大量のガストリンというホルモンを分泌し、胃酸過多を引き起こす疾患。

1955年にアメリカの外科医ゾリンジャーとエリソンが初めて症例を報告ことに、疾患名は由来しています。

膵臓は、胃の後ろに位置する消化腺(せん)で、十二指腸とくっついていて、横に細長くなって脾臓(ひぞう)に接する臓器で、直径15センチ、重さ100グラムほどとサイズこそ小さいものの、外分泌と内分泌という2つのホルモン分泌を行う機能があります。

外分泌機能は、消化液である膵液を分泌して十二指腸へ送り込み、食物の消化、吸収を助けるもの。膵液には、炭水化物を分解するアミラーゼ、蛋白(たんぱく)質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼといった消化酵素が含まれています。一方、インシュリン(インスリン)やグルカゴンなどのホルモンを分泌して、血糖値を調節するのが内分泌機能です。インシュリンは血糖値を下げ、グルカゴンは血糖値を高くします。

ゾリンジャー・エリソン症候群では、非ベータ細胞と呼ばれる細胞が膵臓にガストリノーマを発生させるほか、胃、十二指腸、胆管にもガストリノーマを発生させ、ガストリンを分泌します。ガストリンは、胃に働き掛けて胃酸を大量に産生させるホルモンです。

症状としては、胃酸の産生過剰による胃酸過多のほか、高ガストリン血症、難治性の胃潰瘍(かいよう)および十二指腸潰瘍がみられるのが特徴です。潰瘍はしばしば、普通はみられない十二指腸球部や小腸上部に発生し、また穿孔(せんこう)を起こす頻度が高くなります。

そのために腹痛、腰痛、下痢、吐き気、嘔吐(おうと)、吐血、下血などの症状を生じます。水溶性あるいは脂溶性の下痢は、消化酵素活性が阻害されることに起因するといわれており、 これは下部腸管へ多量の胃液が流れ込むことに由来します。

悪性例、多発例が多く、腫瘍であるガストリノーマは悪性腫瘍(がん)に変化し、医師の診断時にすでに肝・リンパ節転移を認めることがほとんどです。 多発性内分泌腫瘍症1型(MENー1)という遺伝性症候群を合併することもあります。

ゾリンジャー・エリソン症候群は40歳代に多く、やや男性に多い傾向がみられます。

ゾリンジャー・エリソン症候群の検査と診断と治療

消化器科、内科の医師による診断では、血液中のガストリン値が高いこと、多くは500pgml以上であることが指標となります。血液検査は、セクレチンというホルモンを投与して行います。セクレチンを静脈に投与すると、血液中のガストリン値が大きく上昇します。血液検査によって、胃酸の産生過剰もわかります。

腫瘍であるガストリノーマの位置を確認するためには、CT検査、超音波内視鏡検査、放射線核種を用いた画像検査などの検査を行います。

医師による治療は、腫瘍の外科的切除が第一選択になります。手術による腫瘍の切除により、完全に治癒することもあります。治癒しない場合でも、切除で腫瘍を小さくできるので胃酸の産生量が低下し、小腸の閉塞(へいそく)など局所の合併症を予防することができます。

ケースによっては、胃全体を摘出することもあります。ガストリンは胃粘膜を増殖させる働きを持つため、胃の一部を切除しても残った胃の細胞で壁細胞数を増やし、これによって再度過剰な胃酸の産生が促進され、潰瘍の再発を招くためです。

悪性で他に転移を認める、腫瘍の局在診断ができないなど腫瘍の切除が不能なケースでは、過剰な胃酸分泌を薬物によって抑えます。内科的には、胃粘膜からの胃酸分泌を強力に抑えるH2受容体拮抗(きっこう)剤、プロトンポンプ阻害剤(PPI)などの胃酸分泌抑制剤が使用されます。化学療法では、悪性腫瘍でかつ肝臓に転移している場合に、抗がん剤のストレプトゾトシンの投与が適用されます。

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