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子癇

妊娠高血圧症候群の重症例で、けいれん発作の後、昏睡状態に陥る疾患

子癇(しかん)とは、妊娠中に血圧が上がり、脳出血などの危険が高まる妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の重症例で、てんかんと同じような全身のけいれん発作の後、昏睡(こんすい)状態に陥る疾患。

子癇の原因は不明ですが、脳血管の攣縮(れんしゅく)と脳浮腫(ふしゅ)が関係していると考えられています。攣縮はけいれん性の収縮のことを指し、浮腫は脳実質内に異常な水分貯留を生じ、脳容積が増大した状態を指します。

妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降、分娩後12週まで血圧の上昇、または、高血圧にたんぱく尿を伴う場合のいずれかで、これらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものではないものをいいます。約1割程度の妊婦が発症し、妊娠中期などに早めに発症したほうが悪化する傾向があります。

重症例の子癇を起こし、けいれんが何度も繰り返し起こると、妊婦、胎児ともに危険です。昏睡状態の時に、大声で妊婦の名前を呼んだり、体を揺すったりすると、再びけいれんが起こります。できるだけ静かにして、救急車を手配するようにします。

妊婦の死亡率が10~15パーセント、胎児の死亡率が25~40パーセントという統計もあり、また治癒しても、さまざまな後遺症を残すことがあります。しかし、最近では妊娠管理の向上により、母子ともに死亡率は著しく減少してきています。

けいれん発作が起こった時期によって、妊娠子癇、分娩(ぶんべん)子癇、産褥(さんじょく)子癇の3つに分けられます。子癇の発生頻度が2000~3000分娩に1例程度といわれているうち、妊娠子癇が50パーセント、分娩子癇が25パーセント、産褥子癇が25パーセント程度の発生頻度といわれています。最近では、特に妊娠子癇や分娩子癇の発生頻度は減少傾向にあります。

むくみ、たんぱく尿、高血圧などの妊娠高血圧症候群の症状があって、意識喪失とけいれんが突然、起こってきます。この子癇発作の前触れとして、目の前がチラチラしたり、視野が狭まるなどの眼症状、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、胃痛などの胃症状、頭痛、めまい、耳鳴りなどの脳神経症状などがみられることがあります。

典型的な子癇発作では、症状によって第1期から第4期に分けることができます。

第1期は、意識を失い、瞳孔(どうこう)は散大し、顔面の筋肉が細かくけいれんします。第2期は、全身が硬直し、体は弓なりに反り返り、呼吸も一時停止して顔面が紫色になります。第3期は、口から泡を吹いて全身けいれんが始まります。第4期は、けいれん発作は収まりますが、いびきをかいて深い昏睡に陥ります。この状態から次第に意識が回復する場合と、再び第2期の状態に戻り、発作を繰り返す場合があります。昏睡に陥ったまま、発作を繰り返した場合は、意識が回復することなく死に至ることもあります。

子癇の検査と診断と治療

産科、産婦人科の医師による治療では、外部からの光、音、振動などの刺激を避けるために、暗くした静かな場所に隔離します。それらの刺激によって、子癇発作が誘発されることがあるからです。

また、薬物療法として抗けいれん剤、降圧剤、利尿剤、強心剤などを使用します。けいれんの救急処置としては、体を横向きにし、バイトブロックをすぐに口の中に入れて舌をかむ危険を防ぎ、エアウェイの使用と気道分泌物の除去を行って気道を確保するようにします。そして、抗けいれん剤のジアゼパム(セルシン)を静注し、硫酸マグネシウムの点滴静注を行います。

救急処置がすんだらCT検査、MRI検査を行い、画像診断します。脳出血などを合併することがあるため必要な検査です。

妊娠子癇、分娩子癇で、症状の悪化や胎児仮死のある場合では、分娩を早くすませるために吸引分娩、鉗子(かんし)分娩などの急速遂娩(すいべん)術が行い、場合によっては帝王切開を行います。

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