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若年性高血圧

若い人にみられる高血圧の総称

若年性高血圧とは、若年者にみられる高血圧の総称。年齢は一般に45歳以下をいう場合が多いのですが、生活習慣病健診(法定健診)などでは場合により40歳未満、また35歳以下をとることもあり、まちまちです。

この若年性高血圧の4分の3は、原因となる疾患のない本態性高血圧で、近年、その数が増えています。この本態性高血圧の半数は、親から受け継いだ高血圧になりやすい遺伝的な体質で起こり、残りの半数は、ストレス、特に精神的なストレスが誘因となって起こるといわれています。

若年性高血圧の残りの4分の1は、何らかの特定される疾患があって、その症状の一つとして起こる続発性高血圧(二次性高血圧)で、腎臓(じんぞう)の疾患、ホルモンの分泌が異常になる疾患、脳・神経の疾患などが原因となっています。

中高年者の高血圧を含めた高血圧全体に占める続発性高血圧の頻度は10パーセント未満といわれていますから、若年性高血圧に占める続発性高血圧の頻度はかなり高くなっています。特に35歳以下では、腎臓の疾患が原因となっている腎性高血圧の頻度がはっきりと高くなっています。

この意味で、若年者の高血圧は原因となる疾患を見付けるために、必要な特殊検査を行わなければならないこともあります。

また、若年者の高血圧は比較的進行しやすく、悪性高血圧のような重症高血圧に進展し、高血圧合併症を起こす危険が高いという特徴があります。特に、両親、兄弟姉妹などに高血圧や脳卒中などの家族歴のある人は、高血圧の素因を遺伝的な体質として持っているので、若くして高血圧が起こる時は注意しなければなりません。

悪性高血圧の特徴は若年者に多い以外に、最低血圧が130以上になるほど血圧の上昇が大きく、尿に蛋白(たんぱく)や赤血球が含まれる、頭痛、眼底異常、腎臓障害、腎不全を起こすといったように非常に重症なものです。悪性高血圧による腎機能障害では、急激な血圧の上昇によって血管が傷付いて血栓ができることで、狭まった血管に血液の流れをよくしようと働き、さらに血圧を上昇させる悪循環が生じていくものです。

悪性高血圧が進まないうちに適切な降圧治療を行わないでいると、失明したり生命にかかわるほど悪化する場合があるので、早期発見、早期治療が必要となってきます。

若年者の軽症高血圧の中には、血圧値が変動しやすく、心拍出量が増している本態性高血圧の初期のものや、一過性の血圧上昇なども含まれるので、定期的に血圧を測定して、その経過を観察する必要があります。

一過性の血圧上昇は、10歳から20歳代半ばにかけて、性腺(せいせん)ホルモンの分泌が盛んになって、体内のホルモン系統のバランスが乱れるのが原因で血圧が高くなる症状です。20歳代後半からは、ホルモンバランスが安定してくるので、血圧が正常値に戻ることが多いといわれています。

成長に伴って血圧が正常な数値へ戻るので、あまり心配しなくてもいいといわれる一過性の血圧上昇ですが、血圧が高い状態が長く続くということは動脈硬化が進行しているわけで、普通より早く血管の老化が始まっているのを意識しておくほうが賢明です。

また、ホルモンバランスの乱れだけではなく、近年、若年性高血圧にかかる人が増えているのは、食生活や運動不足、過度のストレスなども誘因と考えられています。

ともかく、自覚症状のない若年性高血圧を早期に見付けるためには、血圧を測定するのが一番です。少なくとも20歳代なら年に1回、30歳代は年に2〜3回は血圧を測って、血圧が正常値の範囲内か確認することが大切です。特に、肥満している人や運動不足の人、アルコールを多く取る人、強いストレスを受けている人は、定期的に血圧をチェックするようにしたいものです。

若年性高血圧の検査と診断と治療

若年性高血圧を予防するためには、症状がないからといってそのままにしておかず、血圧を時々でもよいので測るということが大切です。最近は、簡便な自動血圧測定器が市販されていますから、家庭でも血圧測定が可能になっています。健康診断などで高血圧の指摘を受けたり、自己測定した血圧値がガイドラインの高血圧の範囲に入るなら、循環器専門医の診察を受け、高血圧の重症度判定、鑑別診断、治療方針決定などについて相談することです。

なお、自己測定する場合は、測定精度の面から上腕にカフを巻いて測定できる血圧計が勧められます。自己の測定値は、診察室での測定より低めになる傾向があります。広く合意された家庭血圧の基準はありませんが、135/85mmHg以上は高いと考えるべきです。

医師による若年性高血圧症の検査と診断では、正確な血圧測定のために、水銀血圧計を用いて聴診法で測定します。最低5分間、座位安静にして足を床に置き、腕を心臓の高さに保って測定します。高血圧と診断されれば、生活習慣のチェック、高脂血症や糖尿病などの他の心血管危険因子の合併確認、続発性高血圧(二次性高血圧)の精密検査、高血圧の影響を強く受ける心臓、脳、腎臓、目などの臓器の障害の程度を評価するための検査が行われます。これらの評価は、治療方針を決める上で非常に重要です。

続発性高血圧に関しては、既往歴、家族歴、現在の検査データや経過などから、これをどの程度疑わなければならないかがかなり判明します。しかも、続発性高血圧は手術などで高血圧も根治できることがある点からも、その診断は重要で、入院しての精密検査を含めて、いろいろな検査が必要なことがあります。特に腎性高血圧が疑われる時は、静脈性腎盂(じんう)撮影やCT検査が行われます。

医師による本態性高血圧の治療では、生活習慣改善と薬物療法の2本立てとなります。まず薬に頼らない生活習慣の改善が重要で、これだけで治療効果の上がらない場合に初めて降圧薬を使います。続発性高血圧の場合は、高血圧の原因となる疾患を治すことが主体になります。

生活習慣改善では、食塩摂取の制限や肥満の解消など食事療法、ストレスの軽減や適度の運動など日常生活の改善、禁煙や深酒の禁止など嗜好(しこう)品の摂取の改善などを行います。

以上の療法を1カ月以上行ってもなお血圧値が高い場合に、降圧剤が処方されます。高い血圧を下げるための降圧剤の進歩は目覚ましく、今日ではいろいろの種類のものが用いられ、血圧のコントロールは多くの場合、可能となっています。

しかし、降圧薬を内服しているからといって、生活習慣改善を軽んじることはできません。高血圧症治療はあくまでも食事療法と日常生活の改善などが中心であり、その効果を高めるために行われるのが薬物療法です。一般に降圧剤は長期に服用し続ける必要があり、発症者と高血圧症との戦いは短期決戦ではなく、長い長い戦いです。その戦いに勝つか負けるかは、発症者自身の生活態度にかかっているといっても過言ではありません。

医師による続発性高血圧の治療では、原因となる疾患の治療を進めながら、必要に応じて降圧剤の投与や高血圧の食事療法と運動療法を同時に進めていきます。そして、原因となる疾患が治療されれば、自然と続発性高血圧も改善されていきます。

ただし、高血圧が長く続くと腎臓を痛めてしまうので、原因となる疾患を治しても高血圧の状態が続いてしまう慢性高血圧になってしまうこともあります。

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