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出血性貧血
出血により血液が失われ、血色素や赤血球の産生が追い付かない場合に生じる貧血
出血性貧血とは、急性あるいは慢性の出血により血液が失われ、これに対して骨髄での血色素、あるいは赤血球の産生が追い付かない場合に生じる貧血のこと。失血性貧血とも呼ばれます。
貧血とは、血液の単位容積当たりの血色素量、あるいは赤血球数のいずれかが正常以下に低下した状態と定義されています。どのくらいの値で貧血か否かの線を引くかは、医師によって意見が違いますが、血色素量なら血液100ミリリットル当たり12グラム以下、赤血球数で1マイクロリットル当たり350以下ならば、貧血と呼んで間違いないでしょう。
貧血の場合、血液の酸素を運搬する能力が低下するため、いろいろな臓器で酸素が足りず、心臓が余分に働かなければならなくなり、心拍数が増加し、呼吸数も増加します。
貧血の中では鉄欠乏症貧血が最も多く、それに次いで出血性貧血が多くみられます。
急性の出血性貧血は、大けがや出産、手術などによって、あるいは疾患による消化器や呼吸器からの喀血(かっけつ)、吐血、下血によって、大量に出血した時に起こります。出血後しばらくの間は、血液の単位容積当たりの血色素量や赤血球数は減少しませんが、出血によって全身を駆け巡っている循環血液の総量が減少します。それが高度になると、血管内の血液が少ないために循環不全を生じ、体温の下降、急激な脈拍増加、不正な虚脱状態が起こります。そのうちに、単位容積当たりの血色素量や赤血球も減少します。
急速な出血の場合には、循環血液量の3分の1を失うと脳などの重要器官に酸素が供給されず、生命に危険があるとされています。例えば体重50キログラムの成人の場合、循環血液量は約4リットルであり、500ミリリットルから1リットルの出血でめまいや手足など末端部分が冷たくなります。さらに、1リットルから1・5リットルの出血で顔面が蒼白(そうはく)状態になって血圧が急激に低下し、1・5リットル以上の出血では意識がもうろうとします。
一方、慢性の出血性貧血は、出血が持続したり、繰り返し出血したりして起こります。例えば、胃潰瘍(かいよう)や十二指腸潰瘍、胃がん、大腸がん、潰瘍性大腸炎、痔(じ)などで、少量ながら継続的な出血があると起こります。女性では、子宮筋腫(きんしゅ)、子宮内膜症、月経多血症のほか、毎月の月経や出産時の出血でも起こります。
貧血が起こると、血液の酸素運搬能力の低下を代償するために、動悸(どうき)や息切れ、さらに全身倦怠(けんたい)感や食欲不振の症状が出ます。進行すると、爪(つめ)が反り返るスプーンネイルになったり、物を飲み込めなくなる嚥下(えんか)障害が出ることもあります。
急性出血性貧血の治療法としては、まず止血処置を行い、一方で輸血を行います。理想的なのは輸血ですが、すぐに輸血用の血液が間に合わない時には循環血液量の少ないのを補うために、血液製剤や血液代用剤が用いられます。
このような緊急処置で危機を脱した後に輸血を中止し、鉄剤を点滴したり服用すると貧血は回復しますが、回復後もなお当分は鉄剤を投与して貯蔵鉄の回復を図ります。貧血の症状に対する治療とともに、出血個所そのものに対する治療も行います。
慢性出血性貧血の場合は、胃潰瘍や月経多血症などの疾患部の治療を行いながら、同時に鉄剤を投与して治療してゆきます。
食事療法で貧血の改善を図るのも、有効な手段です。食事療法は基本的に鉄欠乏性貧血と同じく、肉や魚などの動物性食品に含まれているヘム鉄と、野菜や海藻などの植物性食品に含まれている非ヘム鉄をほかのビタミンやミネラル、蛋白(たんぱく)質とともに摂取して、よりよく鉄分を吸収するのがポイントです。しかし、胃潰瘍など消化器疾患による慢性出血性貧血の場合には、胃や腸に負担を掛けない食事にすることが大切です。
なお、血友病や白血病、血小板減少症などといった血が止まりにくい疾患を患っている人の場合、普通の人がかすり傷程度で終わってしまう外傷でも大出血を起こし、急性出血性貧血になる可能性もありますので、できるだけけがをしないように日ごろから気を付けることも大切です。
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