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色素性母斑
皮膚のすべての部位にできる黒色の色素斑
色素性母斑(ぼはん)とは、皮膚のすべての部位にできる褐色から青黒色、あるいは黒色の色素斑。母斑細胞性母斑とも呼ばれます。
母斑というのは、皮膚の部分的な奇形のことです。その皮膚の奇形というのは、皮膚の成分の一部が遺伝的素因により、異常に発育、増殖した状態をいいます。この場合、生まれた時からあるものもあるし、生後数年、あるいは数十年後に初めて出てくることもあります。
母斑の代表的なものが、この色素性母斑です。色素性母斑の大きさは大小いろいろで、皮膚と同じ高さのものから、半球状に隆起したものまであります。
色素性母斑の一番小さい型が、いわゆるほくろ(黒子)です。つまり、点状の小さく黒い色素斑や、小豆大の半球状に隆起した黒い小さな結節。顔や全身にあり、小さい時から次第に数は増加し、古くなると色が自然に消えることもありますが、大きさは次第に増大します。
比較的大きな色素性母斑は、いわゆる黒あざです。生れ付きあることが多く、その多くは皮膚と同じ高さで、表面に黒い毛が生えていることもあります。
時には、広い範囲に生じて、先天性巨大色素性母斑と呼ばれます。まれには、全身に大小の黒褐色色素斑が多発し、その上に剛毛が密生し、その外見から獣皮様母斑と呼ばれる場合もあります。この型の母斑は、脳を始め全身の神経組織の色素異常を伴うこともあり、神経皮膚黒色症と呼ばれ、悪性黒色腫(しゅ)ができやすい型です。
時には、まぶたの上、下に母斑が分かれている場合もあり、分離母斑と呼ばれます。胎生期のまぶたが分離する前から母斑があった場合に、分離母斑はみられます。
色素性母斑の本態は、メラノサイトとなるべき細胞が表皮や真皮の境界部で、異常に増加したものです。この増殖した細胞を母斑細胞と呼びます。一般的には、母斑細胞の活性は出生後はなくなっていますが、時には残っていることがあります。この活性が非常に高進してくると、ほくろのがんといわれる悪性黒色腫に移る危険性があります。特に、足の裏の黒あざで拡大、潰瘍(かいよう)化が出現した場合は、医師による精密検査が必要になります。
色素性母斑の検査と診断と治療
色素性母斑は、それ自体は全く良性であり、心配することはありません。一般的には、治療の対象にならず、放置しておいてもかまわないものです。
しかし、特に成人以降に足の裏や手のひらに急にできて、色や大きさの変化が激しい場合、色の濃淡が強い場合、母斑の境界がはっきりしない場合などは、たとえ小さくても悪性黒色腫の可能性もあるので、早めに受診します。生まれ付きの大きい黒あざも、生後早めに医師と相談します。
医師による診断は、特徴的な色素斑なので、ほとんどは見ただけで診断はつきます。ただし、色素性母斑自体は良性ですが、皮膚の悪性腫瘍の中でも悪性度が高い悪性黒色腫と見分けがつきにくいものも時々あります。悪性黒色腫の確定診断は、切除したほくろを病理組織検査することでつきます。
放置しておいてもかまわない色素性母斑であっても、顔などに大きなものがあり、本人が非常に気にしたり、他人に悪印象を与える時などは、皮膚科、形成外科での手術で除去することになります。非常に小さなほくろであっても、本人が悪性化や、その他の面で気にする時にも、手術を行うこともあります。
手術では、病変部の皮膚をメスで全部切り取った後、皮膚の欠損部を縫い合わせるか、植皮術を行います。最近では、顔の小さいほくろの場合に、メスの代わりに炭酸ガスレーザーで切除した後、縫い合わせないで自然に治るのを待つ、くり抜き療法も行われています。
いずれにして、多少の傷跡は残ります。特に、植皮術で植皮した皮膚は、周囲の皮膚とは細かい性状が異なり、完全にはなじみません。従って、手術の跡と、ほくろやあざとどちらが目立つかを考えてから、手術をする必要があります。手術をしなくても、カバー・マークを利用して、色を隠せばよいからです。
なお、炭酸ガスレーザーを用いる、くり抜き療法は顔面ではあまり傷跡が目立たないことが多いようですが、他の部位ではくり抜いたところの傷跡が目立つ場合もあります。また、レーザー治療では多くの場合、病変部を焼き飛ばすため、病理組織検査を行えません。悪性黒色腫と見分けがつきにくい場合もあるので、レーザー治療を選択する場合には、担当する医師の十分な診断力が必要とされます。
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