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下肢長不等

さまざまな原因により、左右の下肢の長さに差がある状態

下肢長不等とは、左右の下肢の長さに差がある状態。脚長不等、下肢長差、脚長差とも呼ばれます。

もともと、人間の体は完全な左右対照ではなく、左右の上肢、すなわち腕などは通常よく使うほうが若干長くなっているのが普通で、左右の下肢、すなわち脚の長さも正確にいえば、個々人の状態で若干の差はあります。また、足の裏のアーチの低下などによって生じる見掛けの下肢長不等もあり、左右の下肢の骨自体の長さが違う真の下肢長不等もあります。

下肢長不等にはさまざまな原因があり、短いほうの下肢に問題がある場合も、長いほうの下肢に問題がある場合もあります。新生児の時にすでに下肢長不等がはっきりしている場合もあれば、成長過程で目立ってくる場合もあります。

原因となる疾患としては、先天性脛骨(けいこつ)欠損、先天性腓骨(ひこつ)欠損、先天性大腿骨(だいたいこつ)短縮、先天性股関節脱臼(こかんせつだっきゅう)、片側肥大症、片側委縮症、半肢症、プロテウス症候群、神経繊維腫症(レックリングハウゼン病)、骨髄炎による成長軟骨障害、ペルテス病、成長軟骨損傷、股関節炎、ポリオ、脳性片まひ、二分脊椎(せきつい)、さまざまな良性骨腫瘍(しゅよう)、血管腫、リンパ管腫、変形性関節症、関節リウマチ、大腿骨骨折の後遺症、人工関節や自骨の手術後の後遺症、足部の変形、放射線障害などがあります。

下肢長不等が3センチ以下では、歩行中に骨盤、体幹、下肢全体の代償運動により、外見的な異常歩行が認められないこともあります。短いほうの下肢が地面に接地している立脚時(立脚相)では、立脚側の骨盤が下降傾斜して外見上の下肢長不等を補い、その骨盤の下降傾斜を脊椎の側屈により代償しているためです。

下肢長不等が3センチ以上では、歩行中に伴う代償運動で補いきれずに、外見的な異常歩行が認められます。長いほうの下肢が地面から離れている遊脚期 (遊脚相)では、股関節と膝(しつ)関節で過度の屈曲、足関節で過度の背屈が生じ、肩が短いほうの下肢側に下がり、短いほうの足がつま先立ちとなります。歩行速度を早くすると、肩が左右に揺れる異常歩行が明らかになります。

また、長いほうの下肢には、短いほうの下肢よりも荷重が大きくかかるため、股関節、膝関節、筋肉の痛みを生じることがあります。骨盤が左右に傾くため、脊椎が変形して腰痛を生じることもあります。

下肢長不等の検査と診断と治療

整形外科、あるいは形成外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、左右の下肢の骨長や変形の程度を計測します。X線検査では肢位やX線照射角による誤差が生じるため、CT(コンピュータ断層撮影)検査による計測を行うこともあります。

整形外科、あるいは形成外科の医師による治療では、一般的に1センチ未満の下肢長不等は放置します。1〜3センチの下肢長不等に対しては、靴の中に入れる中敷き(足挿板)で高さの補正を行う補高、あるいは靴の底で高さの補正を行う補高などを行います。3センチを超える下肢長不等に対しては、手術による下肢長補正を行います。

もちろん原因となっている疾患、発症者の希望により、対応はケースバイケースです。

中敷きや靴による補高では、左右の下肢の差分を単純に補高すればよいというものではなく、調整には工夫を必要とします。補高した状態で左右の骨盤の高さが同じになるのが望ましい状態ですが、 下肢長不等がありすぎる場合にいきなり同じ高さにするとバランスを崩しやすくなるため、徐々に高さを合わせるようにします。

また、4~5センチの下肢長不等を靴によって補高する場合は、その高くなったぶん不安定になり捻挫(ねんざ)や転倒の原因になりやすいため、踵(かかと)部分をフレアースカートのように着地面に向かって広げていくフレアーヒール加工を用いるなど、安定性を考慮した構造の靴加工を行います。ふだんの靴のほかに、スポーツシューズ、サンダル、下駄(げた)なども補高できます。

手術による下肢長補正には、主に長いほうの下肢に問題がある場合に行う骨短縮術、あるいは成長軟骨抑制術(成長軟骨固定術)と、主に短いほうの下肢に問題がある場合に行う骨延長術(脚延長術)があります。

骨短縮術は、骨をそのまま切除する方法です。成長軟骨抑制術(成長軟骨固定術)は、成長期の子供の骨に存在する成長軟骨をステープルという金属で一時的に抑制したり、完全に停止したりする方法です。将来の下肢長不等を計算して予測し、どのタイミングで手術を行うかがポイントとなります。

骨延長術(脚延長術)は、リング型(イリザロフ)、あるいは単支柱型(オルソフィクス)の創外固定器を用いて、骨を延長する方法です。原理としては、手術的に骨を切り、その部位にできた仮骨と呼ばれる軟らかい骨を創外固定器により、徐々に引っ張っていきます。

下肢短縮を伴う先天奇形などの疾患に対し有効であり、変形を伴う場合でもこれを矯正しながら、骨を延長を行うことも可能です。欠点としては、延長に時間がかかること、創外固定器のワイヤーが皮膚の外に出ているために感染を起こしやすいことなどが挙げられます。

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