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緩和ケア

緩和ケアとは、終末期において、死期をいたずらに早めたり遅らせたりするのではなく、死を見詰めながら安らかに最期を迎えられるよう援助する医療。ホスピスケアとほぼ同義です。

世界的には、カナダなどのフランス語圏では緩和ケア(Palliative Care)という言葉を使用し、イギリス、アメリカなどの英語圏はホスピスケア(Hospice Care)という言葉を使用しています。緩和ケアという場合は、症状を緩和していくという考え方が前面に出されている点で、ホスピスケアと微妙な違いがあります。

緩和ケアは、1967年イギリス、ロンドン郊外のセント・クリストファー・ホスピスに始まり、1981年に日本に導入された新しい医療です。1990年(平成2年)に厚生省(現在の厚生労働省)が診療報酬に「緩和ケア病棟入院料」を設けてから、ホスピスケアという呼び方よりも、緩和ケアという呼び方が多く用いられるようになってきました。

緩和ケアは、がんの痛みを始めとする不快な症状を取り除く治療を行うだけでなく、精神的な苦痛を軽減するなど心のケアも同時に行い、患者のQOL(生活の質)を総合的に高めることを目的としています。

そのために、医師、看護師を始めとして、ソーシャルワーカー、理学療法士、作業療法士、心理療法士、音楽療法士、栄養士、歯科衛生士、宗教家、ボランティアなど、多方面の専門家がチームとなって患者と家族を支えていきます。

緩和ケアの形態は、病院や緩和ケア病棟(床)を中心とした施設緩和ケアと、患者の自宅で緩和ケアを提供する在宅緩和ケアに大きく区分することができます。さらに、施設緩和ケアは、施設などの形態の違いによって院内病棟型、院内独立型、完全独立型、緩和ケアチームに細分化することができます。

院内病棟型は、一般病院の病棟の一部を利用して、緩和ケア病棟の承認基準を満たした施設で、日本では最も多くみられる形態です。院内独立型は、病院の敷地内に別棟として建てられているもので、敷地面積に余裕のある施設に、この形態が多くみられます。完全独立型は、緩和ケア病棟承認基準を満たす施設を独立に設立したもので、運用に必要なスタッフや機器を独自に備えている形態です。緩和ケアチームは、承認基準を満たした病棟を持たない施設などで、緩和ケアに関する専任のスタッフがチームとして緩和ケアを提供する形態です。

在宅緩和ケアは、医療機関の外来や病棟ではなく、患者の自宅を医療現場と考えて、訪問診療や訪問看護を中心に緩和ケアを提供する形態です。

施設緩和ケアと在宅緩和ケアは、相対するものではなく、相互の利点を組み合わせ、活用することによって、より効果的な緩和ケアを提供することができます。

在宅緩和ケアの長所としては、「自分のペースを守ることができる」、「家族と過ごすことができる」などの利点がある反面、「病状の急変に対し、迅速な対応をとることができない」、「家族への介護負担が過大となりやすい」などの短所があるとされています。施設緩和ケアの長所と短所は、在宅緩和ケアの逆になりますが、患者の意思、状態、さらに患者を取巻く療養環境などの変化に応じて、双方の長所を生かすよう適切なケアを選択することが重要となります

1989年(平成元年)年に開催された「がん疼痛(とうつう)治療と積極的支援ケアに関するWHO専門委員会」の報告書では、早い病期のがん患者にも緩和ケアを適用すべきであると指摘しています。

これは、ある特定の時期に治療から緩和ケアに移行するのではなく、がんと診断された当初から治療と並行して緩和ケアを行い、末期になるに従い治療よりも緩和ケアの比重を高くするべきという考え方です。日本においては、前者のイメージが強いですが、今後は治療と一体となった緩和ケアの実施が望まれています。

2008年(平成20年)4月1日現在、緩和ケア病棟整備施設181施設、3468床となっています。

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