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減酸症
胃で分泌される胃液中の胃酸が少ない状態
減酸症とは、食べ物を消化するために胃で分泌される胃液中の塩酸、すなわち胃酸が少ない状態。胃酸減少症、低酸症とも呼ばれます。
胃液の中に、胃酸がほとんどないか、全くない状態は、無酸症(胃酸欠如症)といいます。
胃液は、強酸性で、pHは通常1〜1・5程度。塩酸、すなわち胃酸、および酸性条件下で活性化する蛋白(たんぱく)分解酵素のペプシンが含まれており、これによって蛋白質を分解して、小腸での吸収を助けています。同じく酵素のリパーゼは、主に脂肪を分解しています。
胃液はまた、感染症の原因になる細菌やウイルスを殺菌したり、一部の有害物質を分解したりすることで、生体防御システムとしての役割も担っています。例えば、コレラ菌は胃酸によってほとんどが死滅してしまうため、大量の菌を摂取しない限り感染は起こりませんが、胃酸の分泌量が少ない減酸症の人、胃酸の分泌がほとんどないか、全くない無酸症の人などでは少量のコレラ菌でも発症します。
減酸症は、胃液総酸度が30以下、塩酸含量0・1パーセント以下、pH1・59以上が相当します。
この減酸症を示す疾患の代表的なものは、慢性胃炎の中の委縮性胃炎。これは多くの日本人にみられますが、高齢になるに従い胃粘膜に委縮性変化が生じ、胃酸を分泌する壁細胞という細胞の数が減ってくるために、まず減酸症の状態となり、これが高度になると無酸症になると考えられています。
そのほかに、ビタミンB12や葉酸の欠乏によって生じる悪性貧血や、進行した胃がんなどで、胃粘膜に委縮性変化が生じた場合に、減酸症がみられます。手術によって胃を切除した時にも、減酸症が当然起こります。
胃酸が少ないために、食べ物の消化作用に支障が起き、食後の胃のもたれ、膨満感、胸焼け、食欲不振、軽い下痢など、さまざまな症状が現れます。
胃のもたれ、胸焼けなどの減酸症で現れる症状は、慢性胃炎、十二指腸潰瘍(かいよう)、食道がん、胃がんなどでもみられる症状であるため、異変に気付いたら内科、胃腸科、消化器科を受診して検査を受け、原因を確かめることが先決です。
減酸症の検査と診断と治療
内科、胃腸科、消化器科の医師による診断では、ガストリン、またはヒスタミンを注射し、チューブから胃液を採取する胃液検査で、胃酸分泌能を測ります。また、血中ペプシノーゲン値、特にペプシノーゲンのⅠ/Ⅱ比は、胃粘膜の委縮度と相関しているので、これを測ることによって胃酸分泌能を推測できます。
慢性胃炎や胃がんの診断には、X線検査や内視鏡が必要となります。
内科、胃腸科、消化器科の医師による治療では、検査によって他の疾患が除外され、単に減酸症で塩酸、すなわち胃酸の分泌量が少ないために、食べ物の消化作用に支障が起きている場合は、塩酸リモナーデなどの消化剤を服用します。
慢性胃炎による胃の粘膜の委縮も、胃腺(いせん)の委縮も、元に戻すことはできません。安静を心掛ける、ストレスを避ける、消化のよい食事を取る、コーヒーや香辛料などの刺激物の摂取を避けるなど、日常生活の中で注意をしていきます。
悪性貧血の治療は、基本的に鉄欠乏性貧血と同じで、不足しているビタミンB12か葉酸を補給すれば治ります。
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