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急性感染性多発性神経炎
筋肉を動かす運動神経の障害で、急に手足が脱力
急性感染性多発性神経炎とは、広範囲に渡って末梢(まっしょう)神経を侵してくる多発性神経炎の一種で、ウイルスなどの感染が関係している自己免疫疾患。ギラン・バレー症候群とも呼ばれています。
筋肉を動かす運動神経の障害のため、急に両手両足に力が入らなくなります。小児まひ(ポリオ)が発生しなくなった先進国においては、脳卒中を除けば、急に手足が動かなくなる原因として最も多い疾患であることが知られています。人口10万人当たり年間1〜2人発症し、日本では少なくとも年間2000人以上発症していることが推定されています。日本では特定疾患に認定された指定難病。
慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど多くの自己免疫疾患は女性のほうが多いのですが、急性感染性多発性神経炎では男性のほうがかかりやすいと見なされています。乳児から高齢者まで、どの年齢層でも発病し得ますが、遺伝はしません。
発症の原因は、ウイルスなどを排除して自分を守るための免疫システムが異常となり、運動神経、感覚神経など自分の末梢神経を攻撃するためと考えられています。最も症状の強いピークの時には、約3分の2の発症者の血液中に、神経に存在する糖脂質という物質に対する抗体が認められ、これが自分の神経を攻撃する自己抗体として働いている可能性があります。そのほかに、リンパ球などの細胞成分やサイトカインなどの液性成分も、関係していると考えられています。
約7割ほどの人が発症の前に、風邪を引いたり、下痢をしたりしています。軽い発熱、頭痛、咽喉(いんこう)痛、下痢が数日続いた後、1週間前後を経て、急に手足の脱力が始まってくるのが普通です。片側の手足が動かなくなる脳卒中と異なり、両手両足が動かなくなります。大部分の人は運動神経だけでなく感覚神経も傷害されて、手足の先のしびれ感もしばしば伴います。
顔面の筋肉や目を動かす筋肉に力が入らなくなって、目を閉じられなくなったり、物が二重に見えたり、ろれつが回らなくなったり、食事を飲み込みにくくなったりすることもあります。手足のまひの程度は発症してから1〜2週以内に最もひどくなり、その後は改善していきます。重症の場合には、寝たきりになったり、呼吸もできなくなります。
急性感染性多発性神経炎の検査と診断と治療
急性感染性多発性神経炎(ギラン・バレー症候群)では、発症してからなるべく早い急性期に免疫グロブリン大量静注療法、あるいは単純血漿(けっしょう)交換療法を行うと、ピークの時の症状の程度が軽くなり、早く回復することがわかっています。単純血漿交換療法では、人工透析のような体外循環の回路に血液を通して、血液を赤血球、白血球などの血球成分と、血球以外の血漿成分に分けます。自己抗体を含む血漿成分を捨てて、ウイルスが混入していない代用血漿と自分の血球を体内に戻します。
重症の場合は、まひが次第に体の上のほうに広がって、呼吸まひを起こすようになるので、呼吸管理に気を付ける必要があります。ピークの時には人工呼吸器を用いたり、血圧の管理を行ったりといった全身管理が重要であり、回復する時期にはリハビリテーションも大切となります。
症状は遅くとも1カ月以内にピークとなり、その後徐々に回復に向かい、6~12カ月で多くの発症者はほぼ完全によくなります。比較的、良性の疾患ながら、何らかの障害を残す人が約2割いて、急性期やその後の経過中に亡くなられる人が約5パーセントと報告されています。再発率は多くても、5パーセント未満と見なされています。
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